我慢はからだに毒
俺の名前は大島 大河。
今年25歳になる派遣社員だ。
今の仕事に嫌気が差して、サボりがちだったんで有給消化がてら新しい職探しの真っ最中だった。
でも現在、俺は布っ切れ一枚に身を包み、女の人から身体検査を受けてます。
「…はぁ、あっちょっとそこは困るんですけど」
大河が検査を拒むように少し身じろぎすると、女性の検査官は鋭い眼光で睨み付けてくる。
その表情からは『黙ってろ』と無言の圧力をかけていることがわかる。
しかしそこまで検査するなら同性が良かったと思うが、今の状況でそんなことを言える勇気はない。
精密検査だったのか、半日かけてようやく解放された時には、既に日は落ちかけていた。
支給された衣類に着替えると、今度は別の人間がでてきた。
今度もまた女性だが、さっきの検査官より少し年上だろうか。
その検査官を先頭に大河の周囲を警備員と思われる男性4人が取り囲み、別の部屋へと誘導された。
(さっきの青髪の女のときは警備員なんていなかったのに…何で今回はついてくるんかね)
心の中でそう思いながら連れてこられた先は、コンクリート剥き出しの部屋だった。
よく見ると壁がうっすらと青く光っているようにも見える。
警備員1人が女性の隣に立ち、残り3人は大河の両隣と真後ろに立っていた。
「…私はグラナート王国 外交特務機構のテュア・ウォレイズと申します」
「はぁ…どうも」
「さっそくで申し訳ないですが、あなたがこの国に来られた…いえ現れた理由を聞かせて頂けますか?できればここに来るまでの経緯をお教え頂けると有り難いのですが」
(あー尋問か)
少し疲れた表情でテュアと名乗った女性が話す。
「…あの、大丈夫ですか?まだ混乱されてます?…ここで暴れるようなことは控えて下さいね、私は彼女と違ってごく一般人なので…」
ぼーっとしている大河を気にしてか、気遣ってか少しずつテュアは話し続けていた。
その時隣に立っていた若い警備員が気付かれないように小突く。
「…あっすみません。名前は大島 大河と言います。歳は今年25になります…派遣でコールセンターの仕事についてます、はい」
「その辺りは既に聞いておりますので、ここに来た経緯を教えて頂けますか?」
優しい微笑みで話してくるが、その表情からは緊張しているのがわかる。
余裕がないのだろうか。
「ここに来た経緯ですか…あの大丈夫ですか?」
先ほどかけられた言葉と同じ言葉で問い返す。
どうも様子がおかしい。
落ち着きがないと言えばそうだが、何かを我慢してるような感じだ。
チラッと隣の男を見たが何となく察したようだ。
「あの…トイレなら行った方がいいと思いますよ…自分待ってますから」
大河のその言葉に顔を赤らめたあと、必要な書類を持ってきます、と一言添えて彼女は出ていった。




