8:ほんとすごいな
お読みいただきありがとうございます。
評価、誤字脱字報告ありがとうございます。
不定期更新です。
今回はウィル回です。キャリーさんから、情報いただいています。
8:ほんとすごいな
王都に行くまでに、まだ時間がある。
キャリーからの報告も、武器の整備も、夕方だ。
ここは近場の森の中とはいえ、魔獣がいるのだから、肉も豊富だということだ。
魔物の肉は、好んで食べられる。解体は、ギルドにやってもらい、素材など買い取ってもらえるが、一番おいしい肉などは、自分で受け取ってもいいのだ。
冒険者の特権といえよう。
ちなみに肉は、肉屋などに適正価格で卸される。
ちょっと見回ると、森の中では、クマにイノシシにウサギと、狩りやすい魔獣が出てくる。ここは、初心者向けだから強い敵はいないのだ。
整備してもらっているいつもの武器ではないが、ダガーナイフくらいなら持ち歩いているので、それで戦う。
だてに高ランクではないのだ。
素手でもウサギならばたおせるだろう。
マジックバッグに獲物を入れる。
あとは、身体強化を使って、王都までまっしぐらだ。
肉は鮮度が命。
こういう時は、時間経過なしのマジックバッグが欲しくなる。
買えないほどの貧乏ではないが、将来のことを考えると蓄えは少しでもあるほうがいい。
昼も過ぎたころに、王都に入った。
まだ肉は大丈夫なようで、すぐにギルドに持っていく。
キャリーがいた。
「あら、ウィル」
「今日は、ウサギとイノシシとクマ持ってきたから、解体頼む」
「解体受付はあちらよ」
受付に行くと、すぐに倉庫に通された。
倉庫で受け渡して、食べられそうな肉の一部を戻してもらうことにする。
素材は向こうの買取で、その中の一部が、解体費用だ。
一時間くらいで解体も終わるというので、そのままギルド内の待合所で待つことにした。
冒険者ギルドの職員がまばらになったころ、解体が終わったといわれ、受けとる。
解体職員は、保存魔法をかけてくれるのでありがたい。
二日くらいなら生のまま常温で持つのだ。
そのあとは腐敗が進むので、魔物肉は食べられたものじゃないのだが。
「ウィル、お昼おごってよ」
昼休憩なのだろう。キャリーが来た。
外に促すということは、もしかしたら情報が入ったのかもしれない。
昨日と同じ店に行くと、やはりもうまばらだった。
テラス席に座り、注文する。
ほとんどがキャリーの注文したもので、テーブルが埋まっていく。
「ほんとよく食うな」
「ふふん。実は三人目がいるんだ」
「ほんとか。めでたいな。・・・いや、それでも食いすぎだろ」
妊娠して、食欲旺盛なのはいいことだが、それにしてはおおすぎだろうと思う。
「いいのよ。おいしいものは食べためとかないとね」
「そうか」
めでたいことだからこそ、それ以上は言えない。
「そうそう。今回も噂…というか、まあ、聞いた話なんだけど」
キャリーは語りだす。
第二王子が、王位継承権をはく奪されて、学園から去ったらしい。
第三王子が第二王子の婚約者と仲睦まじくしていて、第三王子の婚約者も、学園にしばらく前から来なくなっているので、婚約破棄されたのではないか。第二王子の婚約者と第三王子が婚約を結びなおすのではないか。
という噂が、貴族学園にひそかに流れているのだそう。
「どこから聞いたんだ、それ」
「まあ、だれとは言えないけど、情報源はあるのよ」
「だが、学園の中のことだろう?」
「人の口に扉はつけられないの。冒険者にもいろいろあるのよ」
それだけでウィルは理解した。
王国の貴族だって、ピンキリだ。貧乏貴族の次男三男などは、冒険者になって、学園に通うための授業料や生活費を稼ぐ者もいる。
特に学園は、貴族子女が必ず通わないといけないという場所なので、そのための費用の捻出に、初級冒険者として、登録するものが一部いるのだ。
ウィルも何度か、それらの指導教官を担当したことがある。
貴族だからと威張るものもいれば、必死になっているものもいた。
「怖い世界だな」
「ほんとね」
来たものを平らげて、さらにお代わりを頼むキャリーを見ながら、ウィルはため息をついた。
「なあ、第三王子の婚約者って、どこのなんて方だ?」
「ん?ええと、たしか、クロスベリー侯爵家のご長女で、ターニャ様よね」
王都にすんでいるものなら、一応耳にしている。
貴族には、施しの義務があり、孤児院の訪問や、治療院への寄付などを行わないといけないのだ。
そして、ターニャ・クロスベリー侯爵令嬢は、ほぼ毎週のように、孤児院の慰問をしていた。
ところがある日突然、それが無くなったという。
学園に来なくなった時期とあうらしい。
「そうか・・・」
「それと、その第二王子の婚約者のジェニファー・ベラドンナ侯爵令嬢様、あまりいい噂きかないのよね」
「うわさ?」
「学園内でその第三王子に乗り換えているのではないかというのと、そのベラドンナ侯爵家自体がね、あまり福祉に積極的じゃないってことかな。人がいないから言えるんだけどね」
聞かれたら不敬だから、とはいえ、キャリーだけじゃなく、王都内の平民たちは、ベラドンナ侯爵家にいい印象がないという。
平民を見下すように、馬車からは絶対に降りないで、慰問先でもすぐ帰るのだとか。
「こちらは何も言えないけどね。あんな態度だとほんといやね」
キャリーは肩をすくめる。
特に獣人は見下される対象なので、キャリーはしかめっ面だ。
「なるほどな」
「で、ね、豪華なのに紋章のない馬車よね、それを借りていた人は第三王子。夕方近くに王城の外にとまっていたということと、その馬車が王都の外に出て、帰ってきたということだけは調べたわ」
ここまでよ、とキャリーは言う。
だがそれだけで十分だ。
「ありがとうな。・・・ああ、持ち帰りの分、頼んでもいいぞ。家族と同僚の分もだろ」
「え、いいの!」
うれしそうだ。
「俺も持ち帰りするからな。それにお前、妊婦なんだろう、たくさん食えよ」
「うん、ありがとう」
「やっぱりお前すごいな。昨日の今日でこんな情報」
「色々あるからね」
「そうだな」
店主を呼びながら、息をつく。
キャリーの耳はすごいものだ。
持ち帰り分は分けてもらわないと、狩人小屋で待っているだろうルードの分を持ち帰らないといけない。
回復薬を二瓶飲んだのだから、確実に治っているだろう。
店主に頼んで、持ち帰り分を包んでもらい、キャリーと別れる。
ほんとに厄介ごとだったな、と思いながら、武器屋へと足を向けた。
夕方だ。
武器を受け取り、王都を出る。
狩人小屋のある場所まで帰るとき、今後はどうするのか、考えても思いつかなかった。