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追放王子と生態系調査人  作者: 水野青色
7/23

7:まだ寝てろ

お読みいただきありがとうございます。

不定期更新です。

今回はウィル回。


7:まだ寝てろ


 ウィルは、身体強化を使って森までかける。本当は、馬車でも借りて、拾った青年を連れてこようかと思ったのだが、魔獣がいる森の中に捨てられていたのだ。何か理由があるはずで、連れ帰るわけにはいかないだろう。

 身体強化を使ってはいるが、一日に往復は結構疲れる。

 夕方も遅く、何とか森の狩人小屋についた時には、少々息が切れていた。

 これくらいのことはいつものことだ、とは思うが、また翌日も王都まで行かなければならないのだ。

 今は少しでも休みたい。


 小屋の窓からも明かりは漏れていなかった。

 真っ暗なようだ。

 

「まさか、いなくなったんじゃないだろうな」


 いくらツノウサギとは言え、あの大きさに踏みつけられたら、一般人は骨折では済まないほどだ。

だが、拾った彼は、全身打撲はあるし、ところどころ骨折はしているが、それほどでもなかった。

 回復薬を飲んだら、完全回復していてもおかしくない。


 小屋の扉に手をかけ、開ける。

 入り口すぐのところにあるランプに手を伸ばし、つけた。

 薄明るくなった小屋の中。

 寝台からまだ寝ているのか、寝息が聞こえた。


「ねてたのか・・・」


 水差しなどが床を転がっている。寝台のシーツはぬれているので、起き上がれず、水を飲んだのだろう。

 きっとまだ回復できていないのだろう。

 水差しに水を補充し、サイドテーブルに置く。生活魔法のクリーンで、シーツを乾かし、床の汚れも落とす。


「俺も寝るか」


 毛布にくるまり、いすを並べて寝転ぶ。

 外とは違って、屋根があるところで寝られるだけでもいいのだ。

 しかも、この狩人小屋は、魔獣にあらされないように、結界魔法の魔道具が設置されている。

月に一度、誰かが魔力を魔道具に補充に来るだけで、安全な空間なのだ。

 昔、勇者パーティーが、魔王と戦うために旅した時の拠点の一つだという話がある。ただし、どこの森の小屋にもその話があるので、眉唾物だとウィルは思っている。


 本来なら、深く眠って、短時間睡眠をとる。

 冒険者はたいていそんな感じだ。

 仲間がいれば、外では交代で見張りもするが、一人の時はいつもこんな感じだ。

 目を覚ました時は、まだ夜が明けきらない時だった。

 やはり屋根のある場所で寝られるというのが、安心感を生んだのだろう。思ったよりも寝ていたようだ。

 それに、身体強化でつかれていたというのもある。

 固まった体を伸ばすと、寝台の青年が首をこちらに向けているのが見えた。


「起きたのか」

「あの・・・ありがとう。ここは・・・」

「ここは、あんたが捨てられていた森にある、狩人小屋だよ。あんた、喧嘩でもしておいていかれたのか?」

「いや・・・」

「答えたくなければいいよ。だがまだ寝てろ。治ってないんだろ」


 回復薬を持っていく。

 青年が嫌そうな顔をしたが、無理やり飲ませた。

 ものすごい表情で飲み切る青年を前に、ウィルは少し笑ってしまった。


「まずいのは我慢してもらうしかないからな。それよりあんた、名前は?」

「わ・・・オレ・・・はルード・・・」


 どうやら言いたくないようだ。

 ウィルはため息をつく。


「あー、じゃあ、ルード?今日も寝てろよ。俺は、用事があるからな。そうそう。俺はウィル。冒険者だ」

「・・・ありがとう」


 まだ動けそうにないルードを見ると、荷物から食料を取り出す。


「もし食べられそうになったら食っとけよ。体力大事だからな。あとこれな」


 買ってきた初心者用の防具。

 起きられれば着ることもできるだろう。自分が出かけている間にいなくなっているかもしれないが、それは仕方ないと思うことにし、ルードを置いて外に出る。

 目指すは再び王都。

 夕方にはできるはずの武器の整備と、キャリーの情報だ。

 

 何もわからなくても仕方ないけどな。


 ウィルは独り言ちて、走り出した。


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