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追放王子と生態系調査人  作者: 水野青色
6/23

6:いまだになにもわからない

お読みいただきありがとうございます。今回は、王子回。

不定期連載のため、急に更新されます。もうしわけありません。


     6:いまだに何もわからない。


 ルードヴィヒがが目を覚ました時は、夕方も遅くだった。

 やはり誰もおらず、小屋の中は暗い。

 きいているはずの回復薬は、それでも動けるほどではないようで、体が痛さで悲鳴を上げている。

 

 のどの渇きを覚え、かろうじて動く手をさまよわせる。

 寝台の横のサイドテーブルに、水差しがあったのは救いだろう。寝ながらでしか飲むことができないので、口を開け、こぼすように傾ける。

 口いっぱいに入った水にすぐにむせたが、それでものどを潤すことはできた。

 

 なぜ自分がこんな場所にいるのかはわからない。ここに置いたのが、だれなのかも、どうして今いないのかもわからない。

 だが、回復薬でも完全に回復していないのも、それほど重症だったのだろうということだけはわかった。

 

 自分は何を間違えたのだろう。


 それだけが、ずっと思考にこびりついている。

 母亡きあとは、乳母だけが面倒を見てくれたが、辺境に行くにあたり乳母も連れていけなかった。

 辺境では、幼い自分に誰も優しさなどなく、どうにか生きていかなければならなかった。いっそ魔獣に食い殺されたほうが楽なのじゃないかと、何度も思ってしまったほどだ。

 だが、生存本能が勝ったのだろう。

 けがを負いながら魔獣を倒し、その魔獣を食しながらも、今まで生き延びた。

 学園に入って知ったのは、自分が過ごしてきた世界とは全く違う、きらびやかで穏やかな日々だった。

 家庭教師が付いたこともない、読み書きがかろうじてできるレベルの自分でも、何とか日々を過ごし、急に与えられた政務や、学園での生徒会活動も、体力だけはあったので、寝ずにやったこともある。

 下手な字で書いた手紙や、学園のカフェだけでなく、誘わないといけない茶会なども、婚約者のために催したが、それはただの無駄だったようだ。

 それでも、魔獣の脅威におびえることなく、朝晩の食事もとれる日々は大切だった。

 

 いつ婚約者は、異母弟と仲良くなったのだろう。

 

 いつか、何かの拍子に王都に戻れた時、誰かに聞いてみたい。だがその疑問に答えられるものはいないのだろう。異母弟にも、婚約者がいたはずだが、そちらはどうしたというのだろうか。

 その疑問も答えるものはいないだろう。

 友と呼べるものもいなかったように思う。

 異母弟は周りにいつも誰かを連れていたから、きっと人当たりがよかったのだ。見た目でも傷だらけの自分では、だれも近寄ってこなかったのだろう。


 動けないまま、ここで朽ちるのだろうか。


 思考はグルグル回るだけで、何も解決はしない。

 再び重くなってきた瞼のまま、ルードヴィッヒは眠りについた。


 

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