22:決意した
22:決意した
ふらふらのルードと違い、ウィルはどんどん進んでいく。
待ってほしいと声を出そうにも、まだ気持ちの悪さが残っているせいか、声が出ない。
「やはりお前も雷虎のとこおいていくべきだったな」
もどるか?
振り返ったウィルにそういわれても仕方ないほどだ。
ルードも、それなりに修羅場をくぐってきた。何度も死にそうにも殺されそうにもなり、それでも今日まで生きているのだ。
なのに、たった数年、学園に通っただけで、平和なところに身を置いただけで、ここまで心が弱くなっているなどとは思いもよらなかった。
「だ・・・だいじょうぶだ・・・」
何とか出した声も弱弱しい。
ここでおいていかれたら、戻る道もわからないので困るというのもある。
魔獣がいる森なのだ。
雷虎ほど強いものはいなくても、戦える余力が今残っているとは思えない。
「無理はするなよ。お前はまだ冒険者になったばかりなんだしな」
戦えることはわかっているが、無茶はさせられない。
「大丈夫。もう、大丈夫」
そうだ。
これからまだ、どんなことがあるかわからない。
戻る場所なんてないのだから、どんなことにも耐えて生きていこうと決めているではないか。
「そうか。・・・まあ、そこでちょっと待ってろ」
いうや否や、ウィルの姿が消えた、と思ったら、目の前にウサギが飛んできた。
とびかかってきたのではない。
文字通り、飛んできたのだ。
切り裂かれたのであろうか所から、真っ赤な液体を振りまきながら。
「は?」
「ルード、それ、もっておけ」
それ、といわれたのは、この、ひとの子供くらいの大きさもあるウサギだろう。
しかも、数匹。
「は?」
「今日の飯」
少し遠くから、ウィルの声が聞こえた。
ルードは思考が停止したままだ。
「お、きちんと見張ってたみたいだな」
「え?」
持ってはいないが、そのまま転がっているウサギの前で、ルードはウィルが来たことで、やっと覚醒した。
「さて、戻るか」
ウィルは何事もないように袋にそれを入れ、歩いていく。
血の跡から、魔獣がよって来るかもしれないが、そんなことも気にしていないようだ。
小屋につくと、血のにおいがまだ鼻についたが、ウサギの血の匂いで紛れてわからなくなった。
周りに転がっていたはずの遺体も目に入らない。
雷虎の口元が赤いのは、きっと気のせいだと思いたい。
子供の雷虎は、親に甘えている。
ほのぼのとした光景だ。
「飯とってきたぞ」
外でウサギを出す。
どうやら、ルードに投げてよこしたウサギ以外にも、結構狩っていたようだ。
ウィルは、一兎だけさばくと、あとはすべて雷虎親子に渡している。
うれしそうに雷虎親子はそれを食べ始め、ウィルも火を起こして、肉を焼き始めた。
ルードはようやく戻った思考と現実で、また少し吐きそうになったが、それを飲み込んだ。
これからもこういうことは続くだろう。
それなのに、いちいち驚いていられない。
もっと強くなろう。
塩だけの味付けのウサギを食べながら、決意した。




