20:寄り道しなくてはいけない
20:寄り道しなくてはいけない
盗賊は先に我に返った冒険者に、一瞬にしてとらわれたが、ボスだったのだろうか、テイマーがやられたことに動揺していて、なんの抵抗もなかった。
「いまの、なんだったんだ?」
「あれも魔法の一種だ。剣に魔力まとわせて、こいつを貫いたってだけだ」
「魔力だけで?」
「勢いをつける魔法だから、剣が貫いたってのは確かだな」
テイマーはもうこと切れていた。
魔獣はやはり動かない。
「おいおい・・・、なんでこんなザコが、雷虎を?」
ウィルは、剣を引き抜いて血を払い、テイマーを見る。そして改めて魔獣を見てつぶやいた。
「ライコって?」
「雷呼んで雨降らすことのできる高位魔獣だよ。・・・ああ、やっぱりか」
魔獣が動かないのを見て、首周りを探る。
「隷属紋か」
「レイゾクモン?」
「相手を隷属させるための紋だよ。奴隷とかはつけられているが、こんな高位魔獣が簡単に付けられるはずないだろう。・・・なにがあった?」
ウィルは魔獣の目を覗き込む。
紋で縛られている雷虎はいまだにおとなしいが、目の奥に怒りが浮かんでいる。
雷虎は、出産のときのほぼ無防備な時をこのテイマーに狙われ、赤子を産み落とした瞬間に紋を入れられてしまったのだ。
仔とともにとらわれ、離されている。
「・・・なるほどな」
ため息をつき、捕縛された盗賊のほうに向きなおる。
「お前たち、仔をどこやった」
「・・・な・・・なんのことか・・・」
「今すぐ言わないといいたくなるような事態に陥らせるが、どうする?」
小さいナイフで、盗賊の腕を刺す。
「ぎゃあっ」
痛さで叫んでも、刺さったナイフはそのままだ。
「いうか?」
「・・し…知らない」
「そうか」
ぐりっと、ナイフをひねる。盗賊はさらに叫んだが、ウィルは無表情だ。
「はなしたくなったか?」
「わ・・・わかった・・・」
「そうか。ああ、早く話してくれないと、もう一本ナイフが出したくて仕方なくなるかもな」
無表情のままのウィルの言葉に、盗賊は真っ青になる。
周りの冒険者も手を出せないのだ。
生態系調査の仕事は、魔獣の保護も入る。不当なテイムは、処罰対象だからだ。
「別の隠れ家に仲間がいて、そこにいます・・・」
痛みにこらえながらも答える。
盗賊行為に失敗したら子供は始末すると、この雷虎には聞かせてあるそうだ。
何人かが、分け前をもってその別の隠れ家に戻れば、仔トラは生かされる。
「つまりこのテイマーはボスじゃない?」
「ボスはそこの隠れ家にいる…」
「わかった。その場所を教えろ」
ぐりぐりとナイフをさらにひねっていく。
「ちなみに嘘は通じないぞ」
口の端だけ挙げて、告げる。盗賊たちは隠れ家を告げた。
「というわけで、この雷虎連れて、そこに行く。お前たちはこの盗賊たちを街に運べよ。俺とルードはここで下車するから、荷物とりに戻るぞ」
「・・・はっ。ありがとうございました」
「まあまたそのうち」
ウィルはルードのほうを見る。
「悪いな。寄り道しなきゃならん」
「・・・ああ、うん・・・」
まだ少々混乱しているが、仕方ないことだ。
馬車に荷物を取りに行って戻ると、ウィルが雷虎に、何か言い聞かせ、解呪しているのが見える。
雷虎はおとなしくウィルのそばに立った。
冒険者たちと別れ、二人と一頭はその場を去っていく。
「ウィル、あとでよく教えてくれよ?」
「ん?ああ、わかった」
盗賊の隠れ家を目指し進んでいく。




