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追放王子と生態系調査人  作者: 水野青色
19/23

19:よくあることだ



     19:よくあること


 

 馬車が走り出してしばらくたつと、雲行きが怪しくなってきた。

 この辺りで、この時期にしては雨が降るなんて珍しいのだが、ウィルはものすごく嫌な表情をしている。


「どうしたんだよ?」

「ああ…、よくあることだけどな」


 ウィル自身はため息をつきながら、冒険者のほうを見ると、そちらも警戒態勢だ。

停まるように合図している。

 

「天候を操るやつがついているのが一番厄介なんだよなあ」

「だからなんだよ?」

「盗賊・・・だな。魔獣操っている奴がいる。使役したやつに転向左右させるんだよ」

「そんないい魔獣持っているのに、盗賊なんて!」

「ほんとだよな」


 ほかの乗客には聞こえないようにこそこそと話す。

 天候を操れるとなると、相当な魔力量を誇る魔獣のはずだ。それをテイムできるのだから、熟練のもののはずなのに、なぜ盗賊なんかに。

 ルードヴィヒにはわからない。

 そんな技術があるなら、身を落とさずともいいところで働けるし、それこそ自分から何でもできるだろう。

 なぜ犯罪者になど…


「人には人の事情があるんだろうさ。俺たちはそれを捕まえるだけだ」

「そうだよな」


 自分も事情持ちなのだし、人の事情に文句を言える立場ではない。

 わかっていても、割り切れない。


 馬車がゆっくりと停まって、冒険者が先行して外に出る。


「ウィルはいかないのか?」

「あちらの仕事だ。俺が出ちゃいけないしな。ピンチそうなら手助けはするさ」


 揺れる馬車のための腰ベルトは外す。

 目を閉じ腕と足を組む。

 外の様子を感じているのだろう。


「お前も行くなよ、ルード」

「わかってるよ」


 そわそわとしている自分の気を感じたのだろうか。釘を刺され、おとなしくしていることにした。


 どれほど経過しただろうか。

 外は雨が降り出してきた。

 冒険者の一人が馬車の中に入ってくる。


「ウィルさん!」

「わかった。・・・ルードも来い」


 武器を盛ってすぐに立ち上がるウィルに、あわててルードヴィヒもついていく。

 雨脚は強くなっている。


「ルード、よく見とけ」


 ウィルが立ち止まる。

 

「あの一番後ろのやつが魔獣を操るやつだ」

「あれがテイマー?」

「魔獣の後ろにいるから、完全にがら空きだな」


 ウィルの目が鋭くにらみつける。

 剣をやりのように構えると、何かを唱えている。

 勢いよく放たれた剣が、油断していただろうテイマーをまっすぐ貫いた。


「ぎぃややああああああああああ!」


 叫び声が、その場で戦っていた盗賊と冒険者の動きを止める。使役されているはずの魔獣も、動きも魔力もとめていた。


 雨が止む。

 魔獣の魔力で出ていたようだ。


「いくぞ」


 ウィルの言葉にうなずきながらついいそいでついていった。

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