19:よくあることだ
19:よくあること
馬車が走り出してしばらくたつと、雲行きが怪しくなってきた。
この辺りで、この時期にしては雨が降るなんて珍しいのだが、ウィルはものすごく嫌な表情をしている。
「どうしたんだよ?」
「ああ…、よくあることだけどな」
ウィル自身はため息をつきながら、冒険者のほうを見ると、そちらも警戒態勢だ。
停まるように合図している。
「天候を操るやつがついているのが一番厄介なんだよなあ」
「だからなんだよ?」
「盗賊・・・だな。魔獣操っている奴がいる。使役したやつに転向左右させるんだよ」
「そんないい魔獣持っているのに、盗賊なんて!」
「ほんとだよな」
ほかの乗客には聞こえないようにこそこそと話す。
天候を操れるとなると、相当な魔力量を誇る魔獣のはずだ。それをテイムできるのだから、熟練のもののはずなのに、なぜ盗賊なんかに。
ルードヴィヒにはわからない。
そんな技術があるなら、身を落とさずともいいところで働けるし、それこそ自分から何でもできるだろう。
なぜ犯罪者になど…
「人には人の事情があるんだろうさ。俺たちはそれを捕まえるだけだ」
「そうだよな」
自分も事情持ちなのだし、人の事情に文句を言える立場ではない。
わかっていても、割り切れない。
馬車がゆっくりと停まって、冒険者が先行して外に出る。
「ウィルはいかないのか?」
「あちらの仕事だ。俺が出ちゃいけないしな。ピンチそうなら手助けはするさ」
揺れる馬車のための腰ベルトは外す。
目を閉じ腕と足を組む。
外の様子を感じているのだろう。
「お前も行くなよ、ルード」
「わかってるよ」
そわそわとしている自分の気を感じたのだろうか。釘を刺され、おとなしくしていることにした。
どれほど経過しただろうか。
外は雨が降り出してきた。
冒険者の一人が馬車の中に入ってくる。
「ウィルさん!」
「わかった。・・・ルードも来い」
武器を盛ってすぐに立ち上がるウィルに、あわててルードヴィヒもついていく。
雨脚は強くなっている。
「ルード、よく見とけ」
ウィルが立ち止まる。
「あの一番後ろのやつが魔獣を操るやつだ」
「あれがテイマー?」
「魔獣の後ろにいるから、完全にがら空きだな」
ウィルの目が鋭くにらみつける。
剣をやりのように構えると、何かを唱えている。
勢いよく放たれた剣が、油断していただろうテイマーをまっすぐ貫いた。
「ぎぃややああああああああああ!」
叫び声が、その場で戦っていた盗賊と冒険者の動きを止める。使役されているはずの魔獣も、動きも魔力もとめていた。
雨が止む。
魔獣の魔力で出ていたようだ。
「いくぞ」
ウィルの言葉にうなずきながらついいそいでついていった。




