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追放王子と生態系調査人  作者: 水野青色
13/23

13:試験

お読みいただきありがとうございます。

不定期連載です。

ルードヴィヒの、試験の話です


       13:試験



 ルードヴィヒが冒険者ギルドについたのは、試験が始まるぎりぎりだった。

 新人冒険者試験を受けるのだろう見た目の人たちは、10人ほどだろう。

 毎日試験はあるが、多いのか少ないのかはわからない。


 試験官は、ギルド職員の獣人だ。

 ところどころに傷があるのが、猛者だったのだろうということをうかがわせる。


「私は試験官のグードだ。見てわかるとおり、ギルドの外回りを担当している。今日も君たちの担当で試験場所まではついていく。では、試験内容を伝える。傷回復用ポーションの材料であるいやし草、各自5本だ。根っこは残して持ってくること。これから移動する森で採取だ。時間は夕刻の鐘が鳴るまでだ。質問はあるか?」

「は・・・はい。あの・・・いやし草ってどういう形ですか」

「自分で確かめろ」


 試験を受ける一人が、手をあげて質問する。

 だがグードは詳しい説明はしない。

 冒険者にまだなってもいない彼らには、傷回復用ポーションのいやし草が、どんな形状なのかも説明されていない。

 ただ、時間はあったはずなのだ。

 試験は採取です。

 受付嬢はきちんと伝えている。

 そこから、新人試験で採取に適しているだろう場所を調べ、そこで何が取れるか、それがどんな形状なのか、調べるだけの時間が。

 もうそこから試験が始まっていたといっても過言ではない。


「うう・・・」


 この時点で、試験を受けるものたちの士気が下がっている。

 ルードヴィヒは、その点だけは、安心していた。

 辺境にいたときに、あれこれと食べられる植物を調べたからだ。

 自分が生きるためだけに。


「それでは出発だ」


 グードの声で、皆のろのろと動き出した。


 門を出て、徒歩で一時間のところに森がある。

 もちろん門外では魔物も出るし、森の中にもいる。その対策も自分でやらなければいけない。

 冒険者になるというのはそういうことだ。


 試験官であるグードは、ちらりと本日の受験者を見る。

 最低限の装備をしているものは、数人。

 採取すればいいだけと思っているのだろう。

 これでは突破できるだろうか。

 大けがするものも出てくるだろう。

 だがそれでも冒険者になりたいというものには、試験を受けさせないといけないのだ。何度か受けているものは、さすがに最低装備と、今までの経験から調べてきているのだろうが、新しい顔もいるのだ。

 あまりひどいけがをする前には、出てくるだろう魔物を倒し、保護するつもりではある。

 試験が昼頃から始まるのは、毎日間引いているからだ。

 心が折れなければいいが。


 黙々と歩き続ける受験者を見ながら、目的地に着いた。


「はじめ」


 グードの言葉に、ルードは早速、森の中に入っていく。


 いやし草は、森や林の木に巻き付いた弦がある場所が目印だ。

 栄養がよい土にしか生えないので、植物が多く生えて居るところや、草が多いところにあったりする。

 あと、水気がなくてはいけない。

 なので、耳を澄ませ、水の音がしそうな場所を探す。

 深そうな森ではないのが幸いなのだろう。

 すぐに水辺が見つかった。

 小さな川が流れていたのだ。


 周りを観察する。

 弦の付いている木だけじゃない。

 魔物の気配も感じた。


 ゴクリ、と唾をのむ。

 自らを落ち着かせ、剣を抜く。

 がさがさとした音のほうに向くと、四つ足の魔獣が迫ってきていた。

 コボルトだ。

 犬の魔獣。

 辺境ではザコ魔獣として、新人いじめの一つで、コボルトの集団に置き去りというのがあった。

 ルードも何度もやられた。

 その中でも死ななかったのは、死にかけそうなときに助け出されることと、何度もされたことで、倒せるようになったからだろう。回復魔法の効果もあったかもしれない。

 冷静に対処すれば、ほぼ一太刀で倒せる。肉は食べられるので、辺境では普通に食卓に出ていたし、皮も使い道があるので、剥ぎ取りも覚えさせられた。

 

 迫ってくるコボルトに向かっていく。

 買ってもらった剣が、どのくらいの強さなのかわからないからこそ、慎重に事を進めないといけない。

 辺境で使っていたものよりよさそうだ、とは思っている。


 グゥオオオオオオオ


 コボルトが襲ってきた。

 素早くよけ、剣をふるう。

 手ごたえはあったが、足を切りつけただけだった。


「にぶったか」


 学園に通っていた時には、武器など持たなかったな、と思い出す。

 

 足を切りつけられたコボルトの怒りの形相が見える。

 だが、ルードもここでやられるわけにはいかない。

 もう一度剣を構えなおし、対峙する。


 グゥオオオオオオオオオ


 先ほどよりも大きな方向を受け、迫ってくるコボルトに、正面から切りかかる。

 剣はうまく頭蓋を割り、コボルトがそのまま勢いを失い倒れた。


「やったか」


 皮は少し傷がついてしまったが、素早く血ぬきと剥ぎ取りを開始する。

 剥ぎ取り用のナイフを持っていないことが残念だったが、ショートソードで何とかなった。

 肉も持って帰りたいが・・・と思い立ったところで、自分が試験中だということを思い出した。

 剥ぎ取りをしていただけで、結構な時間がたっている。


 幸い、いやし草が近くにいくらでも生えていたので、根の上から切り取り、コボルトの肉と皮を一緒に持って、森の外に向かった。

 コボルト一匹以外は、魔物に合わずに済んだようだ。


 森の外では、けがをした何人かの受験者と、グードが待っていた。


「おい、お前・・・」

「コボルトに襲われたから狩っただけです。いやし草はこれ」


 ルードヴィヒは、いやし草は渡す。

 コボルト肉は食事だ。

 渡すという選択肢はない。


「お前は合格だ。まさか剥ぎ取りまでしてくるとはな」


 新人の中にも時折こういうものがいる。

 だが、新品の装備で来た若者が、ここまでできるとは思っていなかった。


 夕刻の鐘が遠くから聞こえてきた。

 試験は終了だ。


「よし、帰るぞ」


 けがを負ったものも、傷回復ポーションで治されている。

 まだ何人が合格かはわからない。

 ただ、ルードヴィヒは、試験官に合格を言い渡されたので、決まっていた。


 冒険者ギルドの裏庭。

 合格者は、ルードヴィヒを含め5人。

 ほぼ半分というのは、僥倖だろう。

 受からなかったものも、試験のための費用は払ってあるので、あと5回までは受けられるという。それまでにみな受かるだろう。

 合格した者たちに、冒険者プレートが配られた。

 プレートの説明は、ウィルの言っていたことがほとんどで、なくした時は、登録した冒険者ギルドに現れるらしいので、近くの冒険者ギルドに言えば、そのプレートがそこに送られてくる仕様だ。

 ただし、一応の罰金があるので、なくさないようにとのことだった。


「よし解散。あ、えーと・・・ルードだったか。その皮を売るなら、冒険者証と皮を持って、買取カウンターに行けよ」

「ありがとうございます」


 早速買取してもらえるのならと、うれしく思う。

 少しでもウィルに早く返したいのだ。

 対等でいたい。

 なんとなくそう思ってしまっている。


 ちなみにコボルトの皮はこの辺りでは当たり前にあるので、銅貨5枚だった。


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