13:試験
お読みいただきありがとうございます。
不定期連載です。
ルードヴィヒの、試験の話です
13:試験
ルードヴィヒが冒険者ギルドについたのは、試験が始まるぎりぎりだった。
新人冒険者試験を受けるのだろう見た目の人たちは、10人ほどだろう。
毎日試験はあるが、多いのか少ないのかはわからない。
試験官は、ギルド職員の獣人だ。
ところどころに傷があるのが、猛者だったのだろうということをうかがわせる。
「私は試験官のグードだ。見てわかるとおり、ギルドの外回りを担当している。今日も君たちの担当で試験場所まではついていく。では、試験内容を伝える。傷回復用ポーションの材料であるいやし草、各自5本だ。根っこは残して持ってくること。これから移動する森で採取だ。時間は夕刻の鐘が鳴るまでだ。質問はあるか?」
「は・・・はい。あの・・・いやし草ってどういう形ですか」
「自分で確かめろ」
試験を受ける一人が、手をあげて質問する。
だがグードは詳しい説明はしない。
冒険者にまだなってもいない彼らには、傷回復用ポーションのいやし草が、どんな形状なのかも説明されていない。
ただ、時間はあったはずなのだ。
試験は採取です。
受付嬢はきちんと伝えている。
そこから、新人試験で採取に適しているだろう場所を調べ、そこで何が取れるか、それがどんな形状なのか、調べるだけの時間が。
もうそこから試験が始まっていたといっても過言ではない。
「うう・・・」
この時点で、試験を受けるものたちの士気が下がっている。
ルードヴィヒは、その点だけは、安心していた。
辺境にいたときに、あれこれと食べられる植物を調べたからだ。
自分が生きるためだけに。
「それでは出発だ」
グードの声で、皆のろのろと動き出した。
門を出て、徒歩で一時間のところに森がある。
もちろん門外では魔物も出るし、森の中にもいる。その対策も自分でやらなければいけない。
冒険者になるというのはそういうことだ。
試験官であるグードは、ちらりと本日の受験者を見る。
最低限の装備をしているものは、数人。
採取すればいいだけと思っているのだろう。
これでは突破できるだろうか。
大けがするものも出てくるだろう。
だがそれでも冒険者になりたいというものには、試験を受けさせないといけないのだ。何度か受けているものは、さすがに最低装備と、今までの経験から調べてきているのだろうが、新しい顔もいるのだ。
あまりひどいけがをする前には、出てくるだろう魔物を倒し、保護するつもりではある。
試験が昼頃から始まるのは、毎日間引いているからだ。
心が折れなければいいが。
黙々と歩き続ける受験者を見ながら、目的地に着いた。
「はじめ」
グードの言葉に、ルードは早速、森の中に入っていく。
いやし草は、森や林の木に巻き付いた弦がある場所が目印だ。
栄養がよい土にしか生えないので、植物が多く生えて居るところや、草が多いところにあったりする。
あと、水気がなくてはいけない。
なので、耳を澄ませ、水の音がしそうな場所を探す。
深そうな森ではないのが幸いなのだろう。
すぐに水辺が見つかった。
小さな川が流れていたのだ。
周りを観察する。
弦の付いている木だけじゃない。
魔物の気配も感じた。
ゴクリ、と唾をのむ。
自らを落ち着かせ、剣を抜く。
がさがさとした音のほうに向くと、四つ足の魔獣が迫ってきていた。
コボルトだ。
犬の魔獣。
辺境ではザコ魔獣として、新人いじめの一つで、コボルトの集団に置き去りというのがあった。
ルードも何度もやられた。
その中でも死ななかったのは、死にかけそうなときに助け出されることと、何度もされたことで、倒せるようになったからだろう。回復魔法の効果もあったかもしれない。
冷静に対処すれば、ほぼ一太刀で倒せる。肉は食べられるので、辺境では普通に食卓に出ていたし、皮も使い道があるので、剥ぎ取りも覚えさせられた。
迫ってくるコボルトに向かっていく。
買ってもらった剣が、どのくらいの強さなのかわからないからこそ、慎重に事を進めないといけない。
辺境で使っていたものよりよさそうだ、とは思っている。
グゥオオオオオオオ
コボルトが襲ってきた。
素早くよけ、剣をふるう。
手ごたえはあったが、足を切りつけただけだった。
「にぶったか」
学園に通っていた時には、武器など持たなかったな、と思い出す。
足を切りつけられたコボルトの怒りの形相が見える。
だが、ルードもここでやられるわけにはいかない。
もう一度剣を構えなおし、対峙する。
グゥオオオオオオオオオ
先ほどよりも大きな方向を受け、迫ってくるコボルトに、正面から切りかかる。
剣はうまく頭蓋を割り、コボルトがそのまま勢いを失い倒れた。
「やったか」
皮は少し傷がついてしまったが、素早く血ぬきと剥ぎ取りを開始する。
剥ぎ取り用のナイフを持っていないことが残念だったが、ショートソードで何とかなった。
肉も持って帰りたいが・・・と思い立ったところで、自分が試験中だということを思い出した。
剥ぎ取りをしていただけで、結構な時間がたっている。
幸い、いやし草が近くにいくらでも生えていたので、根の上から切り取り、コボルトの肉と皮を一緒に持って、森の外に向かった。
コボルト一匹以外は、魔物に合わずに済んだようだ。
森の外では、けがをした何人かの受験者と、グードが待っていた。
「おい、お前・・・」
「コボルトに襲われたから狩っただけです。いやし草はこれ」
ルードヴィヒは、いやし草は渡す。
コボルト肉は食事だ。
渡すという選択肢はない。
「お前は合格だ。まさか剥ぎ取りまでしてくるとはな」
新人の中にも時折こういうものがいる。
だが、新品の装備で来た若者が、ここまでできるとは思っていなかった。
夕刻の鐘が遠くから聞こえてきた。
試験は終了だ。
「よし、帰るぞ」
けがを負ったものも、傷回復ポーションで治されている。
まだ何人が合格かはわからない。
ただ、ルードヴィヒは、試験官に合格を言い渡されたので、決まっていた。
冒険者ギルドの裏庭。
合格者は、ルードヴィヒを含め5人。
ほぼ半分というのは、僥倖だろう。
受からなかったものも、試験のための費用は払ってあるので、あと5回までは受けられるという。それまでにみな受かるだろう。
合格した者たちに、冒険者プレートが配られた。
プレートの説明は、ウィルの言っていたことがほとんどで、なくした時は、登録した冒険者ギルドに現れるらしいので、近くの冒険者ギルドに言えば、そのプレートがそこに送られてくる仕様だ。
ただし、一応の罰金があるので、なくさないようにとのことだった。
「よし解散。あ、えーと・・・ルードだったか。その皮を売るなら、冒険者証と皮を持って、買取カウンターに行けよ」
「ありがとうございます」
早速買取してもらえるのならと、うれしく思う。
少しでもウィルに早く返したいのだ。
対等でいたい。
なんとなくそう思ってしまっている。
ちなみにコボルトの皮はこの辺りでは当たり前にあるので、銅貨5枚だった。




