12:冒険者ギルドの規則
お読みいただきありがとうございます。
不定期連載12話目です。だいぶ遅くなり、申し訳ありません。
12:冒険者ギルドの規則
街の食堂は、天気がいい日は、外にテーブルが出ているところが多い。
特に、王都から近い街は、王都に向かう冒険者や、王都から出てきた冒険者で、食堂がどこも混雑するからだ。
中で注文して、外に持ってきて食べる方式がとられているところが多い。
ウィルも、さっさと一軒の店に入っていく。
ルードにとっては初めての店だ。
あれこれ頼んで、トレーに乗せてもらう。
トレーの一つをルードに持たせ、外のテーブルに持っていかせた。
さらにもう一つトレーに乗るだけの料理を頼み、あとから外にでる。
ルードは、隅のほうのテーブル席で、所在なさそうだ。
「待たせたな。さ、食おうぜ」
「あ、ああ」
所狭しと並べられている料理に、ウィルはどんどん手を付けていく。
魔力を使ったり、ドーピング材を使ったりすると、なぜか食欲が増進されてしまうのだ。
ルードも食べ始める。
「まあ、食べながら聞いてくれよ。時間もないしな」
手と口を動かしながら、ウィルは話し始める。
「まず、冒険者になるには、冒険者ギルドに登録しなければいけない。登録するには、試験に受からなければいけない、ここまではいいな?」
いわれてうなずく。
「冒険者登録料は、金貨一枚。高いと思ったろ。だけどな、これは、二割が登録料、あとの八割が冒険者がなくなった時に、遺族に渡されたり、家族がいない場合は墓を作ってもらって、永代供養代となる。引退した時にかえされたりとかだな。
あとな、依頼料の一割は、冒険者ギルド預かりとなるんだ。それも返ってくるものだからな」
一口飲み物を飲む。
「でも払えなかったらどうするんだ?」
「払えない時の措置として、冒険者ギルドに借りるというのがあるんだ。金貨一枚分まで、自分が登録した場所の冒険者ギルドの所属冒険者として、街専の冒険者になるんだ」
「街専?」
「そのギルドがある街専門でやる冒険者だ。いろいろ街の中のことや、ちょっとした討伐、採取などをやるやつらだな」
「どうやってお金返すんだ?」
「依頼料の二割が引かれる。だから、実質、三割が依頼料からひかれて渡されるんだな。渡された依頼料をためて、たまった分で先に帰せば、街専からは卒業できるしな」
料理があらかたなくなっていく。
ウィルの食べる速さは、ルードの目の見張るものがある。
「依頼はもちろん、失敗したら、違約金も発生する。依頼料の1,5倍だ。結構痛手だぞ。」
「なんで、そんなに」
「そりゃ、依頼主が頼んだ日までの時間が無くなるからだろ。十日あった依頼を受けたとしよう。五日やりましたが、失敗しました。あと五日でできるかどうか、ということだ。なので、違約金は、依頼主に渡すお詫びと考えればいい。ほかの冒険者に緊急で頼まなければいけなくなるからな。緊急依頼は高くなるんだぞ。あと依頼失敗の違約金、払えなかったら、奴隷おちだな」
ルードはうなずく。
「だから、最初は、期日なしの依頼を受けたり、自分のランクにあった依頼を受けることを勧める。自分の実力以上の依頼を受けて、できなかったじゃすまないんだからな。ギルドの信頼にもかかわるから、受付でたいてい言われるんだが、ちょっと強くなったり、ランクが上がった冒険者が陥りやすいんだよ」
「なるほど・・・」
ウィルは飲み干したコップを振る。
中から、それを見ていたのだろう店員が出てきた。
金を渡し、ルードの分も違う飲み物を頼む。
「で、冒険者ランクな。一番下が、Hランク。これが、お前が受かればなれるランクだ。で、一番上が、SSランク。・・・過去にはいたが、今はいないな。Sランク冒険者が、大きな国に一人いるかどうかだな。片手程だ」
「ウィルは?」
「俺はAランク。ほら」
ギルドカードを見せる。
金色のカードに大きくAと書かれている。
「カードは、魔道具だからな。ほかのやつは使えない。依頼料をギルドに預けておけば、どこのギルドでもこのカードで金を下ろせるぞ」
「・・・すごいんだな」
「それだけじゃない。依頼中に亡くなったとしよう。魔獣に食われたりしたら行方不明とかになってしまうだろう。だが、このカードが、本人の魔力に反応するから、なくなったと判断された途端に、最初に登録した冒険者ギルドに現れるんだ」
「えっ!」
「そういう魔道具だ。冒険者ならだれでも知っている」
「ほんとにすごい魔道具なんだな」
知らなかったことだ。
自分は何も知らない、ルードはため息をつく。
「あとは・・・お前、植物の区別つく?」
「植物の区別?」
「試験は採取だぞ」
「・・・ああ、それなら、食べられるものと食べられないもの、薬になるものくらいなら」
辺境にいたとき、飢えを満たすために、森の中の植物を食べた。
あの頃も今もは生きることに必死だった。
「それなら大丈夫だな。・・・よし、そろそろ行くぞ」
「ああ」
片付けをするのも、外テーブルを使っているものの仕事だ。
食器を中の店員に渡し、歩き出す。
「冒険者ギルドに行くんじゃないのか?」
「ん?まず、この街でとまるとこ、宿に入ってからだ」
ウィルが指さすほうには、大きな宿泊施設があった。
看板には『冒険者専用宿 ヤラナイカ』と書いてある。
「変わった名前だな」
ほかの街で見たものは、専用でもなかったし、強そうな魔物の名前がついてたりとかしていた気がする。
「あれは、あの宿と、この街の歴史が関係しているんだ。ここって王都まですぐだろう。街専門の冒険者がいなかったんだ。王都で登録したほうがいいからな。で、この宿を作った主が、泊まる客泊まる客に、街専門冒険者をやらないかって、勧誘していたんだ。で、それに迷惑と困惑した街長が、この宿の名前に変更させて、今に至る。・・・最初は冒険者専用じゃなかったらしいぞ」
「なんで今は?」
「冒険者ギルドの規則で、さっき言ったろう。借金して冒険者になるやつが増えたからだな」
「なるほど」
そう考えると、自分はウィルに払ってもらったので、街専門冒険者にならなくて済むのだ。
ウィルにかえしていけるようになればいい。
「ほら、早く入って、宿確保するぞ」
ウィルに促される。
ここもウィルが払い、というより、ウィルは、ここに自分の部屋を確保しているのだそうだ。
年単位で契約して、先払いし、泊まる人が増える場合、その人用の寝台や、食事代だけ、払えばいいのだ。
「ここの部屋だ。あとはお前の武器を買って、冒険者ギルド行くぞ」
荷物を置くと、すぐに外に出る。
鐘がなるまで、もう、半刻もないかもしれない。
武器屋は、初心者用から、ベテラン用、鑑賞用まで、何でもそろっていた。
「合いそうなやつ選べよ」
「わかった」
辺境にいたときは、ちょっと長めのショートソードを使っていたので、それを選ぶ。
ふりやすさを重視した。
ここでもウィルが払う。
申し訳ないと思いながら、確実に受かって、早めにかえそうと心に決めた。
「冒険者ギルドに急ぐぞ」
ほぼぎりぎりの時間でつく。
「ルード、オレは手伝えないんだから、頑張って来いよ。終わったら、宿に来いよ」
「わかった」
ギルドの前で分かれる。
中に入っていったのを見届け、ウィルはおおきく伸びをする。
やっと眠れる。
宿に戻ると、ベッドに横たわった。




