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追放王子と生態系調査人  作者: 水野青色
11/23

11:身分証手に入れるには

お読みいただきありがとうございます。

不定期連載、11話目です。

議事脱字報告、評価もいつもありがとうございます。


        11:身分証を手に入れるには


 

 街の手前、ウィルは門を少し離れた所へと歩き出した。

 ルードは慌ててついていく。


「ウ・・・ウィル、どこ行くんだよ」

「ん?門の外で野営する」


 当たり前のように言うウィルに、ルードは動揺を隠せない。

 せっかく街が目の前にあり、ゆっくり休めるというのに、なぜなのか。


 ウィルが向かった先には、何組かの冒険者がいた。

 皆、街を目の前に、野営の準備をしている。


「ほら、ルード、こっち来い」


 小さく焚火を作りながら、ウィルはルードを呼ぶ。

 仕方なく、焚火のすぐそばに座った。

 ぱちぱちとはぜる日で、携帯食の干し肉をあぶる。


「なあ・・・」

「ん?なんでここで野営するか、だったか?お前の身分証を作るためだろ」

「オレの身分証のため?」

「朝の門でしか仮身分証が作られないことが一つ、仮身分証は二日しか期限がないことが一つ、冒険者登録をするには試験があるということが一つ、だな」

「試験・・・」

「といっても、読み書きができるかと、簡単な採取なんだが、午前中しかやっていないんだ。それでほぼ一日が終わる」

「受からなければどうなるんだ?」

「犯罪者じゃなければ、仮身分証をまた発行してもらって、冒険者登録か、どこかのギルドの所属になればいい。あとはこの街の住民だな」

「そうか」


 それなら、今の時間でも入ることはできないのだとわかる。

 ウィル一人ならば入れるというのもわかるので、自分がいかに足手まといかもわかってしまう。


「お前、読み書きくらいできるだろ?」

「それくらいは・・・」

「じゃ、実技で落ちるやつってほぼいないから、大丈夫だろ」

「うん・・・」

「じゃ、明日は朝早いから、くったら寝ろよ」

「ウィルは、ずっと寝てないんじゃ・・・」

「俺は一週間寝なくても平気だからな」


 ドーピングだけどな、とは言わない。

 冒険者になったら、寝ずに戦うこともあるのだから、市販で出回るようなもの以外の薬も手に入れることがあるのだ。


「街に入ったら忙しいぞ」

「わかった」


 おとなしく食事をして、寝袋に入る。

 寝ようと思えば思うほど、目がさえていた。


 朝、ウィルに起こされて、ルードは起きだした。どうやらいつのまにか寝られたようだ。


「飯も食わないで悪いが、もう行くぞ」


 どこかから出したのか、ぬれタオルをルードに投げてよこし、周りを片付け始めている。

 周囲を見ると、冒険者たちももう動き出していた。


「門が開くからな。ここにいる人数が、全部、仮身分証発行してもらうものだってことだ」


 いわれて、なるほどと気づく。

 この人数のほか、門が開くのを待っているものがいるのだろう。

 急がないと時間がかかる。


 門にたどり着くと、ほぼ待たずに、身分証をチェックするところまできた。

 

「すまん、こいつは持ってないから、仮身分証を発行してもらいたい」


 ウィルが自分の冒険者証を掲示して、門番にいう。

 すぐさま、ほかの門番が来て、二人を置くにつれていった。


「よう、ウィル」


 門番の一人は知り合いだった。

 仮身分証発行の担当を、この日はしているらしい。


「すまんな、こいつの身分証を発行に来た」

「お前さんが後見人になるんだな?ええと・・・」

「ルードです」

「そうか。ルード、この球に手を置いてくれ。犯罪歴とかなければ、仮身分証はここから出てくる」


 水晶のような球を職員が指さす。

 これも魔道具だった。


 ルードが手を置くと、一瞬光って、仮身分証が発行された。

 

「犯罪歴はないようだな。仮身分証は、効力が二日間。二日のうちに返還されない場合は、犯罪者として裁かれる。それが嫌なら、さっさと身分証を作る、もしくは、二日のうちに仮身分証を帰して街から出ることだ。あとは、中で犯罪さえ犯していなければ、延長申請も受け付けるので、延長の場合は、すぐに来るように」


 仮身分証の注意を受ける。


「はい、ありがとうございます」

「発効には、銀貨二枚だ。・・・ウィルが立て替えるのか」


 ルードにはもち金がない。ウィルはすぐに手持ちの袋から、銀貨二枚を出した。


「じゃあ、行くぞ」

「あ・・・ああ」

「いい滞在になるよう祈ってるぞ」


 仮身分証発行が終わり、外に出ると、もう門の入り口は行きかう人で込み合っていた。

 発行で手間取わなくてよかったな、とウィルは笑う。


「これから冒険者ギルドに行くぞ」

「あ。あの、ありがとう。オレ、金なくて・・・」

「ないのはわかってるから、気にするな。それよりさっさと試験の手続きしたら、飯だ」


 すたすたと進むウィルについて、冒険者ギルドに来た。

 ルードにとっては初めての場所だ。きょろきょろと見まわしてしまう。が、ウィルにとってはどこでも同じだ。

 カウンターに行く。


「よう、ウィルじゃないか。何だ、依頼か?」

「ああ、ちがう。こいつを冒険者登録するのできた」


 ルードを引っ張る。


「だれだ?」

「オレの知り合いの子だ」

「へえ。・・・ええと、名前は?字は書けるかい?かけないなら代筆するが」

「あ、ルードです、書けます」


 カウンターの男性から、用紙を受け取る。

 ウィルが覗き込みながら、こことここだけ書けと教えてくれたところを書く。

 

「読み書きは大丈夫そうだな。身分証は・・・」

「あ、これ・・・」


 ルードはおずおずと仮身分証を出す。

 ウィルの知り合いの子供という設定なのに、仮の身分証でいいのだろうかと、不安だ。


「おいおい?」

「こいつ馬鹿だからな。家飛び出して、途中で弱い魔物にほぼ半殺しにされて、荷物全滅。知り合いに頼まれて、俺が冒険者にするために連れまわし始めたとこだよ」


 ウィルがあきれたようにため息をつく。

 仮でも、身分証が発行されているということは、犯罪歴がないということだ。その説明で、職員も納得した。


「王都でやればよかったじゃないか」

「ここが一番近かったんだよ」

「なるほどな。・・・で、ルード、冒険者になるには、試験を受けないといけないんだが、大丈夫か?試験中はウィルに世話してもらえないぞ」

「ば、馬鹿にするな。俺だって、戦える・・・」


 尻つぼみになる声に、ウィルと職員の、わかっているよ、のような顔が見える。

 二人にとってはルードは戦い方も知らない一般人なのだ。


「試験は採取だ。時間は、次の鐘が鳴った時だな。その間に、必要だと思うものをそろえて、冒険者ギルドの裏庭に集合だ」

「わかった」

「試験料と登録料で・・・金貨一枚だ」

「金貨一枚!」

「これで」


 ウィルが難なく出す。

 

「あのなあ、ウィル、それじゃ、金貨出せないやつがどうするかの説明とかできないだろうが」

「そんなのは俺が教えておくよ。俺はもう腹が減ったんだ」

「なんだ、飯食ってないのか。・・・ああ、じゃあ、ギルドの規則とかも教えてあげてくれよ。くれぐれも試験への遅刻も厳禁だからな」

「わかった。ありがとう」


 あまりにも手続きが早く進み、ルードはまだ混乱していたが、ウィルと一緒にギルドから出た。

 街がだんだん活気づいていく。


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