11:身分証手に入れるには
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不定期連載、11話目です。
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11:身分証を手に入れるには
街の手前、ウィルは門を少し離れた所へと歩き出した。
ルードは慌ててついていく。
「ウ・・・ウィル、どこ行くんだよ」
「ん?門の外で野営する」
当たり前のように言うウィルに、ルードは動揺を隠せない。
せっかく街が目の前にあり、ゆっくり休めるというのに、なぜなのか。
ウィルが向かった先には、何組かの冒険者がいた。
皆、街を目の前に、野営の準備をしている。
「ほら、ルード、こっち来い」
小さく焚火を作りながら、ウィルはルードを呼ぶ。
仕方なく、焚火のすぐそばに座った。
ぱちぱちとはぜる日で、携帯食の干し肉をあぶる。
「なあ・・・」
「ん?なんでここで野営するか、だったか?お前の身分証を作るためだろ」
「オレの身分証のため?」
「朝の門でしか仮身分証が作られないことが一つ、仮身分証は二日しか期限がないことが一つ、冒険者登録をするには試験があるということが一つ、だな」
「試験・・・」
「といっても、読み書きができるかと、簡単な採取なんだが、午前中しかやっていないんだ。それでほぼ一日が終わる」
「受からなければどうなるんだ?」
「犯罪者じゃなければ、仮身分証をまた発行してもらって、冒険者登録か、どこかのギルドの所属になればいい。あとはこの街の住民だな」
「そうか」
それなら、今の時間でも入ることはできないのだとわかる。
ウィル一人ならば入れるというのもわかるので、自分がいかに足手まといかもわかってしまう。
「お前、読み書きくらいできるだろ?」
「それくらいは・・・」
「じゃ、実技で落ちるやつってほぼいないから、大丈夫だろ」
「うん・・・」
「じゃ、明日は朝早いから、くったら寝ろよ」
「ウィルは、ずっと寝てないんじゃ・・・」
「俺は一週間寝なくても平気だからな」
ドーピングだけどな、とは言わない。
冒険者になったら、寝ずに戦うこともあるのだから、市販で出回るようなもの以外の薬も手に入れることがあるのだ。
「街に入ったら忙しいぞ」
「わかった」
おとなしく食事をして、寝袋に入る。
寝ようと思えば思うほど、目がさえていた。
朝、ウィルに起こされて、ルードは起きだした。どうやらいつのまにか寝られたようだ。
「飯も食わないで悪いが、もう行くぞ」
どこかから出したのか、ぬれタオルをルードに投げてよこし、周りを片付け始めている。
周囲を見ると、冒険者たちももう動き出していた。
「門が開くからな。ここにいる人数が、全部、仮身分証発行してもらうものだってことだ」
いわれて、なるほどと気づく。
この人数のほか、門が開くのを待っているものがいるのだろう。
急がないと時間がかかる。
門にたどり着くと、ほぼ待たずに、身分証をチェックするところまできた。
「すまん、こいつは持ってないから、仮身分証を発行してもらいたい」
ウィルが自分の冒険者証を掲示して、門番にいう。
すぐさま、ほかの門番が来て、二人を置くにつれていった。
「よう、ウィル」
門番の一人は知り合いだった。
仮身分証発行の担当を、この日はしているらしい。
「すまんな、こいつの身分証を発行に来た」
「お前さんが後見人になるんだな?ええと・・・」
「ルードです」
「そうか。ルード、この球に手を置いてくれ。犯罪歴とかなければ、仮身分証はここから出てくる」
水晶のような球を職員が指さす。
これも魔道具だった。
ルードが手を置くと、一瞬光って、仮身分証が発行された。
「犯罪歴はないようだな。仮身分証は、効力が二日間。二日のうちに返還されない場合は、犯罪者として裁かれる。それが嫌なら、さっさと身分証を作る、もしくは、二日のうちに仮身分証を帰して街から出ることだ。あとは、中で犯罪さえ犯していなければ、延長申請も受け付けるので、延長の場合は、すぐに来るように」
仮身分証の注意を受ける。
「はい、ありがとうございます」
「発効には、銀貨二枚だ。・・・ウィルが立て替えるのか」
ルードにはもち金がない。ウィルはすぐに手持ちの袋から、銀貨二枚を出した。
「じゃあ、行くぞ」
「あ・・・ああ」
「いい滞在になるよう祈ってるぞ」
仮身分証発行が終わり、外に出ると、もう門の入り口は行きかう人で込み合っていた。
発行で手間取わなくてよかったな、とウィルは笑う。
「これから冒険者ギルドに行くぞ」
「あ。あの、ありがとう。オレ、金なくて・・・」
「ないのはわかってるから、気にするな。それよりさっさと試験の手続きしたら、飯だ」
すたすたと進むウィルについて、冒険者ギルドに来た。
ルードにとっては初めての場所だ。きょろきょろと見まわしてしまう。が、ウィルにとってはどこでも同じだ。
カウンターに行く。
「よう、ウィルじゃないか。何だ、依頼か?」
「ああ、ちがう。こいつを冒険者登録するのできた」
ルードを引っ張る。
「だれだ?」
「オレの知り合いの子だ」
「へえ。・・・ええと、名前は?字は書けるかい?かけないなら代筆するが」
「あ、ルードです、書けます」
カウンターの男性から、用紙を受け取る。
ウィルが覗き込みながら、こことここだけ書けと教えてくれたところを書く。
「読み書きは大丈夫そうだな。身分証は・・・」
「あ、これ・・・」
ルードはおずおずと仮身分証を出す。
ウィルの知り合いの子供という設定なのに、仮の身分証でいいのだろうかと、不安だ。
「おいおい?」
「こいつ馬鹿だからな。家飛び出して、途中で弱い魔物にほぼ半殺しにされて、荷物全滅。知り合いに頼まれて、俺が冒険者にするために連れまわし始めたとこだよ」
ウィルがあきれたようにため息をつく。
仮でも、身分証が発行されているということは、犯罪歴がないということだ。その説明で、職員も納得した。
「王都でやればよかったじゃないか」
「ここが一番近かったんだよ」
「なるほどな。・・・で、ルード、冒険者になるには、試験を受けないといけないんだが、大丈夫か?試験中はウィルに世話してもらえないぞ」
「ば、馬鹿にするな。俺だって、戦える・・・」
尻つぼみになる声に、ウィルと職員の、わかっているよ、のような顔が見える。
二人にとってはルードは戦い方も知らない一般人なのだ。
「試験は採取だ。時間は、次の鐘が鳴った時だな。その間に、必要だと思うものをそろえて、冒険者ギルドの裏庭に集合だ」
「わかった」
「試験料と登録料で・・・金貨一枚だ」
「金貨一枚!」
「これで」
ウィルが難なく出す。
「あのなあ、ウィル、それじゃ、金貨出せないやつがどうするかの説明とかできないだろうが」
「そんなのは俺が教えておくよ。俺はもう腹が減ったんだ」
「なんだ、飯食ってないのか。・・・ああ、じゃあ、ギルドの規則とかも教えてあげてくれよ。くれぐれも試験への遅刻も厳禁だからな」
「わかった。ありがとう」
あまりにも手続きが早く進み、ルードはまだ混乱していたが、ウィルと一緒にギルドから出た。
街がだんだん活気づいていく。




