表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

忘却

作者: 三日目のチーズケーキ
掲載日:2021/11/03



少し怯えた顔で、こう言われた。



「あなたは誰?」と。



そして、彼女は浮かび上がる感情を抑えながら、



少し声を震わせ、こう言った。



「娘よ、お母さんの娘」と。



すると、



「あぁ、そうね」



と母は呆気なく言った。




またある日、



「あたなは誰?」と言われた。



そして、彼女は優しい表情を浮かべてから、母の手を握り、こう言った。



「娘よ、お母さんの娘」と。




またある日、



「あなたは誰?」と言われた。



そして、彼女はまだ優しい表情と柔和な声で、こう言った。



「娘よ、お母さんの娘」




そして、そんな日々が続いたある日、



「あなたは誰?」と言われた。



そう言われると、彼女は普通の声で、こう言った。



「娘よ、お母さんの娘」




そんなやりとりが続いたのだ。




彼女は実の母から忘れられた、あの日の悲しみにも慣れてしまい、


時に、母に腹を立てた。



そして、同じ事を繰り返す日々に対し、


時に母に厳しい言葉を言いそうになり、


「疲れた」という言葉が幾度となく出るようになってしまっていた。




そうしている内に、季節が幾つか巡った。


母の体調はどんどん弱っていくのが、目に見えて分かっていた。





彼女は実家で荷物整理を始めた。


この先何があるのかがわからない為、一度整理をしたかった。



その際、彼女は押し入れに仕舞ってあったアルバムを見つけ、何気なく開いてみた。




その中にはくすんだ色のフィルム写真が並び、



幼き日々の自分がいた。



彼女はその場に座り込み、写真を眺め出した。



じっと眺めた。



勿論、写真には母も写っていた。



母がまだ小さな私と手を繋ぎ、



笑っていた。




彼女はその写真から、母の笑顔と明るい声を思い出し、



涙を流した。



そして、 



忘却していたのは、私の方だと思った。



「ごめんね、お母さん」と一人呟いた。




その愛を、忘れていたのは私の方だと。



娘は泣いた。



そして、これから忘れないように、



いくつかの写真をアルバムから取り出し、


いつでも見れる場所に、彼女は飾っておくことにした。



母の笑顔がいつもでも見れるように。



読んでいただき、ありがとうございました。


この作品は過去にアップした作品のリライトです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ