旅に出よう!
「ね、知ってる? この駅の噂」
久しぶりに、友達と四人で日帰りだけど旅行することになった。その当日、駅の入口で待ち合わせた皆と移動中にそんなことを言いだしたのは、そもそもの旅行の言い出しっぺである真波。
「あ、知ってる知ってる」
「わたしも、SNSで見たことあるよ」
それに十香が頷き、私も同意する。奏絵は「なにそれ?」と不思議そうにしてたけど、十香が噂の内容を言葉にしてくれた。
「一緒にいた人が、いつの間にかいなくなるってやつでしょ?」
「そうそう、それそれ」
頷いた真波が、ざっとスマホで検索して出してきた。ちらっと見えた画面からすると奏絵に見せたのは多分、SNSのまとめサイトだな。
「へえ、そんなのがあるんだ」
内容をある程度読んで、奏絵は理解してくれたらしい。奏絵もスマホは使うけど、SNSはあまり使わないって言ってたっけなあ。一地方の話だから、トレンドに乗ることもないだろうし。
そうして奏絵はくるりと駅の構内を見回して、首を傾げた。
「でも、その割にこの人を探していますとか、注意喚起ポスターとかないよね」
「鉄道のサイトにも、そういうのは載ってなかったよお」
「そりゃ、噂だし」
彼女の言葉に、思わず同意する。真波が肩をすくめたのは、そこまでマジ話として取るなよってことなんだろうな。そりゃ、噂だし。
「てか綾梨、見に行ったんだ?」
「興味本位でさ。それに、時々ない? SNSで流れてる話の真偽とか、プレスで出したり」
「ああ、あるねえ」
十香に目を丸くされて、理由を口にした。いや、本当に載ってたりしたらネタになるなって思っただけなんだけどね。
ほんと、この四人で旅行するのは大学の卒業旅行以来じゃないかな。予定がなかなか合わないからね、社会人て。
この駅はそこそこ大きな駅で、売店のお弁当が結構美味しいので有名だったりする。旅行以外にも、会社で食べる用に買っていく人も結構いるんだよね。改札の外にも中にもお店があるので、私はよく外のお店で買っていく。今日お昼を買うのも、その同じお店だ。
「綾梨、どれにする?」
「私これ、壺飯弁当」
でも、会社で食べるのに焼き物の壺に入った弁当はさすがに笑われそうなんだよねえ。旅行の時でもないと、はっちゃけて食べられないわ。壺は持って帰ってゴミ箱代わりにでも使おうかな、うん。
「ていうか、行きから壺持っていくの? 重くね?」
「会社で食べたらなにそれ、って夕方には噂になってそうでさ。真波は何食べるの」
「ガッツリステーキ弁当。おまけにコーンサラダも付ける」
「ああ、真波コーン好きだもんねえ」
ちなみに、今真波が選んだガッツリステーキ弁当にも、付け合わせでコーンが入ってたりする。そこを指摘しようものならサラダとは別腹、とか言われそうなので私は黙っていよう。
「十香ー、選んだ?」
「うん。わたしは鶏そぼろ弁当ー」
「地味だねえ」
しっかり肉を食べる真波、壺の炊き込みご飯が好きな私。十香は、地味でシンプルなものが好きだ。まあ、おかずの取り合いになるわけでもなし、いいけどね。
「じゃ、行こうか」
「そだね。三人ともレジ終わったし」
「並ばなくて済んだのは、よかったねえ」
各自、それぞれのお昼をしっかり持ってお店を後にした。こうやって三人でわいわい弁当を選ぶのも、本当に久しぶり。
さすがに改札は少し混んでいて、私たちは並んで待つ。ま、そんなに時間かからないけどね。スマホがあれば切符買わなくても良かったりして、割にすいすい進めるのは助かる、らしい。うちの親とか、泊まりがけの旅行するときって切符発売日の朝から並んだとか言ってたなあ。
「真波ー」
「綾梨、並ぶ場所間違えたねえ」
真波の並んだ方の列がさっさと進んで、私が並んだ列は切符出すのに手間取ったおじさんのせいで時間がかかったんだよねえ。くっそ、せめてカード使えってば。
「荷物大丈夫?」
「そこは大丈夫。しっかり持ってたから」
大事な壺飯弁当、流されてなるものか。結構お高いんだから……何と言うか、食い意地が張っているなと自分でも思う。
でもまあ、かばんもちゃんと持ってるし、真波もいるし。よし。
「じゃ、いこっか」
「そだね。一応早めに待ち合わせしたけど、電車に遅れたくないし」
「よし」
二人でそのまま、階段……はめんどくさいのでエスカレーターに乗る。真波と二人で旅行かあ、ほんとに久しぶりだよねえ。あー、楽しみ。
しばらくホームで待ってると、列車が入ってきた。ちょっと豪華めに作られているのはま、特別急行と名乗るだけのことはあるよね。
……お昼がついてるわけじゃないので、壺飯弁当は買ったんだけど。まあ、のんびり乗ってのんびりご飯食べて、降りた先でのんびりするのが目的だからさ。
「よし、行こう」
ドアが開いたので、勇んで乗り込む。久しぶりの一人旅、楽しいことになりそうだ。




