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幻実サイクル

作者: 橘立花

薄汚れた裏路地にはいつもと変わらず、僕と女性が立っていた。

そして僕が彼女に近づくにつれてほつれたジーパンの裾がひらひらと動いた。

しかし僕と彼女の距離は縮まる様子はない。むしろ離れていっている気がするほどだ。

そんな事を長いこと続けていると、いつの間にが状況が変わっていることに気付く。

それは、追いかけていたはずの彼女がいつの間にか僕の事を追いかけているからだ。

つまり僕が彼女から逃げているという事になる。僕には逃げている気はないし、何故そうなっているのかはよく分からない。

彼女に捕まえられたと思うと、僕が彼女の事を掴んでいた。

そして僕に服を掴まれた彼女は、ゆっくりとした動作で僕に振り向いた。

振り向いた彼女の顔は口角が吊りあがって半ば笑っているかのようにも見えた。

口元から覗かせる白い歯やピンク色の歯茎から、視線を上げて目のあたりを見ようとしたのだが・・・

そこには白と黒が反転して原型が分からなくなった眼球が、窪みに収まっていた。

一瞬心臓がドクンと跳ね上がり僕の目と体はその場に固定されたかのように動けなくなった。

そして彼女の腰まで届きそうな髪がふっと宙に舞ったかと思うと、僕の視界はその髪によって遮られて真っ暗となった。

その黒い視界の色が急に反転して白になったかと思うと、僕はガバリとベッドから跳ね起きた(・・・・・・・・・・)

どうやらその白い光は、ベッドの横にある窓から降り注いでいる日光の光のようだ。

僕は全身に汗をかいているようで、体には薄いパジャマが汗でべっとり張り付いていた。

それに不快感を感じた僕は、ベッドから降りて服を脱いだ。

そして全裸になった僕は壁に掛けられているタオルを使って濡れた体を拭いた。

自分の汗でびっしょりになったタオルを部屋に隅に置いてある黒い籠の中に放り込むと、

引出しに入れられている衣服を次々と取り出して順々に着ていった。

もうその動作は手慣れたものだった。

この夢を見はじめてから早1ヵ月。夢から覚めると汗が体を覆っていて毎日着替える事になる。

部屋の隅置かれた籠と、壁に掛けてあるタオルはそのためのものだ。

そして今の時刻は、昼の2時。

日に日に起きる時刻が遅くなっている。そのため最近は学校にあまり出れないでいた。

しかしこうなる前まではしっかりと講義に出ていたために、出席日数はなんとか足りている。

だがこうしてられるのもあと僅かだろう。

そう思った僕は、少し前に近くの病院に診察に行った。

しかしそこで医師から帰ってきた答えは、異状なし。

そしてその医師は、僕に大きい病院へ行くように勧めた。

あまり症状が酷くなってほしくない僕は、医師から言われた病院へと足を運んだ。

長い時間を待って医師から下された診断結果はとても曖昧なものだった。

確か眠りが浅いために十分な睡眠が得られず、睡眠時間が長引いてしまうといったものだ。

そして原因は分からないらしく、解決策はないらしい。

医師が言うには規則正しい生活を送れば治るとの事らしい。

僕は医師が言ったとおりに規則正しい生活を送ったが、状況は変わらなかった。むしろ悪化する一方だ。

再度病院へ行こうと思ったが、同じ結果になるだろうという事を予想して病院には行かなかった。

僕は、日を追うごとにその夢について考え始めた。

その夢は何度も見ているためか今では鮮明に思い出せる。

まず、細長く伸びた裏路地。

あそこは一体どこで、横の壁はなんの建物の壁なのだろうか。

そしてあのちぐはぐな鬼ごっこ。

長い時間追いかけっこは続けているのは分かるのだが、その記憶は今でも曖昧だ。

最後に、必ず夢に出現するあの女。

その女は話したこともないし、見たこともない。

唯一分かっていることと言えば、目が無残にも潰されているという事。

その記憶だけは一番鮮明に覚えている。そしてその直後に長い髪の毛が舞い意識が戻される。

一体あの続きはどうなるのだろうか。

僕がそんな夢についての思想に(ふけ)っていると、とりあえず付けていたテレビからニュースが流れていた。

『4件にも及ぶ謎の連続怪死事件。そして今日もこの事件のものと思われる女性の死体が、ここ高尾山の麓で観光客の通報により発見されました。

犯人はまだこの近くに潜んでいるのでしょうか、それとも別の場所に身を潜めているのでしょうか。

そして今回を含めた5件とも、殺害方法がバラバラという事と、殺害されたのが全て女性というのには何か意味があるのでしょうか。

尚、どの死体も死亡推定時刻からその場で殺害されたものでないという事が分かっているようです。

高尾警察は犯人逮捕に向けてこの連続怪死事件に全力で当たっている模様です。』

そういえば僕のこの夢が始まる次期に、同じくしてこの事件が発生した記憶がある。

しかし、この夢と連続怪死事件は全くの別物。接点と言う接点が見つからない。

ただ、事件が起きた大体の位置と僕の家の位置はかなり近い距離にある。その点はしっかりと注意しなければいけない。


今夜も僕はベッドに横たわった。上に乗っかっている布団が妙に重く感じるのはいつも通りだ。

そして目を閉じてから、考えもしない事が頭に浮かんでは消えていく。

その様々な考えが、僕が眠りに就くことを拒む。そのため眠りにつくまでしばらく時間がかかる。

これも毎夜の事だ。そしていつの間にか、部屋の電気が切れるように僕の頭は真っ暗になった。


またこの夢か・・・見慣れた裏路地が僕を迎え入れていた。僕の目の前には、目の辺りを両手で押さえて(うずくま)っている女性がいた。

ただ今回はいつもと違うようだ。長い長い追いかけっこは終わっているようで、残るは彼女の顔を見て夢から覚めるのみ。

僕はいつも通りに彼女の服を掴んだ。

すると彼女は目を押さえながら、僕の方に向って腕を振り回した。

「そこね! そこにいるのね!?」

初めて彼女が僕に声を発した。

その第一声はとても甲高い金切り声で、思わず耳を塞ぐほどだった。

目を隠すようにして覆っている腕の隙間から、横一線に切られたと思われる切り傷がチラリと見えた。

その切り傷は生々しく、そこから溢れている血液が頬を伝って顎に流れて地面に滴っていた。

コンクリートの地面に視線を落とすと、円状になった血液がたくさん見られた。

中には茶色くなりかけていたものもあったが、ほとんどが真っ赤だった。

いつもならここで夢から覚めるはずなのだが、まだ僕の意識は夢の中にあった。

彼女は、闇雲に手を動かして僕の事を探していた。そして彼女が動くたびに両耳につけてある銀イヤリングがゆれる。

僕はいち早く夢から覚めたくて彼女に近づいた。

僕が彼女の服に手を掛けようとすると、僕のいる方向が分かったのだろうか振り回した拳が僕の頭にぶつかった。

そして、僕の意識はまた遠のいていった。そう、黒く反転したのだ。


僕は汗だくで布団から起き上がった。そして時計が指し示す時刻は1時だった。

いつもと変わらない朝。いや、昼。

僕は服を着替えるために、足元に布団を押しのけようとした。

すると、右手に何かを握りこんでいる事に気付く。何の疑問も持たずに手を開くと、そこにはきくらげみたいな物体があった。

しかしそれはきくらげではない。コンマ数秒して気づいた。それは人の耳なのだ。

僕は驚いてその耳から手を引いた。そしてその反動でかベッドから落ちてしまった。

僕は死んでしまったゴキブリを見に行くような感じで、先ほど落とした耳に目をやった。

布団の上にはやはり耳があった。しかも、銀のイヤリングをしているようだった。

銀のイヤリング・・・どこかで見たような記憶がある。はて、どこで見たのだろう。

僕が記憶の引き出しを次々に開けていくと、何かと一致した。

それは夢の中の彼女の耳だった。夢の時、彼女は銀のイヤリングをしていた。

怖くなった僕はとりあえずテレビをつける事にした。

テレビをつけるとちょうどニュースの番組がやっていた。

暫くくだらないようなご当地食材のニュースなどを見ていると、本命のニュースが流れ始めた。

『今朝、またもや連続怪死事件と同様の人物が犯人と見られる怪死死体が発見されました。

被害者も今までと同じく女性。今回は死体が川に捨てられており、片方の耳がもぎ取られていたようです。

犯人の残虐性は増すばかりで被害者だけが増えていくわけですが、この話を聞いて片岡さんはどう思いますか?_____ 』

そんな話が7分程度続いて次のニュースへと変わった。

だんだん僕の睡眠と事件との接点が浮き彫りになってきた。

ニュースで放送された被害者の写真を見ると、どことなく夢の彼女と似ている気がした。

そしてその写真に写っていた彼女の耳には、いまここにあるものと同じと見られるイヤリング付けられていた。

もうここまで来ると疑いようがなくなってきた。

しかし、今僕が警察に向かったとしても事件は何も動かないのではないだろうか。

何故ならば事件を起こしている犯人は、どうやって殺したのかも分からなければ、殺したという意識すらない。

一体そんな犯人を警察はどう対処するのだろうか。

これからは一体どうすればよいのだろう。現段階で自分が出来る行動と言えば、手足を縛って寝る事のみ。

しかし自分の知らないうちに殺人を犯して、尚かつ誰にも気づかれずに犯行を重ねているのだから、きっと意味はないだろう。

ようするに僕が今打てる手段はなし。現状放置で自然になくなるのを待つことだけだ。

最終手段としては、ずっと起き続けなければならない。しかしそんなことをすればいずれ自分が死ぬ。

僕はそんな睡眠への恐怖を抱き続けなければならなくなった。








さぁ、とりあえず今回のお話をまとめてみよう。

まずこのお話の中心人物に当たる、主人公『僕』

その『僕』はいつからか睡眠時間が増え続けて日常生活に異常をきたしている。

そして、問題はその夢だ。

果たして『僕』が見ているのは夢なのか、はたまた現実なのか。

仮にそれが夢だとしよう。だが、夢の場合は一つ問題が降りかかってくる。

それは朝起きた時に手に握られていた、殺害された女性の耳だ。

まずその耳が被害者の失われた片方の耳というのは間違いないだろう。

しかし、まだこれが夢だとしても別の誰かがこの話に介入をすれば不可能なことではない。

例えば介入者をAと置いた場合、そのAが『僕』に対してなんらかの暗示を掛けてあのような夢を誘発させ、

『僕』が疑心暗鬼になった頃に『僕』の家の中にAが忍び込み、自分が殺害してきた女性の耳を握らせるといったものだ。

そしてそのAが『僕』の友人で、サプリメントと偽って睡眠薬の服用させていれば長い睡眠も頷ける。

そして残るは後者の現実というケース。

まず、睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠がという2つの睡眠があるのは知っているだろうか。

簡単に説明すれば脳が通常と同じぐらい動いているのか、ほとんど動いていない状態だ。

そしてここで登場する病名は睡眠自遊行症、俗に言う夢遊病というものだ。

この夢遊病というのは、睡眠中に歩きまわったり、同じ動作を繰り返したりすることだ。

そしてこの時は深い眠り落ちていて、翌日は本人にその記憶は残っていません。

『僕』は夢で必ず同じシーンを見るのだが、これは何かのスイッチでレム睡眠に入ったのか、それとも覚醒しているのかのどちらかだ。

だが状況から考えて前者だろう。

そして問題は、その夢を見ている時に現実の彼は一体何をしているのかだ。

私の見解では夢遊病で女性を殺した時の記憶が本能的に残っていて、レム睡眠に突入した際その記憶が呼び起こされ同じ夢を見るのではないかと思う。

そして長い睡眠については、体が疲れを癒やしていないために睡眠時間が増えたのではないかと思われる。

夢遊病に関しては医学的にはっきり解明されている訳ではないので、そう強くは言えません。

そんな2つの仮定を見て、あなたはどちらが正解だと思われますか。

そしてもしあなたがこんな恐怖を体験したらどうしますか?




今回のお話は、私の見た夢が精神的ダメージを与えるものだったので、


その夢から逃避するために書いた、ストレス解消の作品です。


そのためかなり手抜きな部分があります。すいません。


そして睡眠は大切ですねという事を訴えるためにも書きました。(後付け)


ずうずうしいですが睡眠はしっかりとるようにしましょう。そうでなければ私みたいにおかしくなります。


ここまで目を通してくださいありがとうございました。

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