表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

7話


「お、おい!待てって!」

「待ちません!放っておいてください!」

「そうはいってもな…」

 なぜかおれは、訳も分からず走り出すアルテミシアの背中を追いかけていた。

 ネックレスを取られるのがそんなに嫌だったのか?

 だったらそう言ってくれればいいのに。

「ほら、これ、返すよ!悪かったって!冗談だから!」

 おれは掴んでいたネックレスを前に掲げる。

 それを彼女はチラッと振り返って見たが、プイっと前を向いてしまった。

 違うのか…?

 彼女からの反応は無く、むしろスピードが上がっているようにも思えた。

 運動音痴だと勝手に認識していたが、なかなかどうして、逃げ足の速いやつ…。

 だがその鬼ごっこも、唐突に終わりを迎える。

「うわ!おい、急に止まるなよ!」

 脱兎のごとく走っていた彼女が急に止まったのだ。

 おれの言葉に反応は無く、硬直している彼女に近づく。

「おい、どうしたんだよ一体…」

 彼女の頭越しから、彼女の視線の先を覗く。

 すると、ここからおよそ、20、30メーターほどの距離に、動く影が見えた。

 ………狼だ。しかも二匹。

 こちらを警戒している様子。いきなり襲いかかってくる様子はなさそうだが…。

「厄介なことになったな…。おい、アルテミシア。大丈夫か?」

 凍り付いたまま動かない彼女の表情を後ろから覗き見る。

「ミミミノルさん、やばいです。魔獣ですよ。私たち、絶体絶命です」

「一旦落ち着けって」

 あわあわと慌てる彼女を必死になだめる。

「どどどうしましょう?私、こういうときどうしたらいいのか、教わってないんです。ミノルさん、なんとかしてください」

「こら、おれを盾にするんじゃない」

 おれの後ろに回って前を窺う彼女。

 なんとかしてといわれてもな…。

 未だ狼はこちらの様子を見ている。

「逃げよう。触れぬが吉だ」

「そ、そうですね。見逃してくれればいいんですが…」

 幸いにもまだ狼とは距離がある。

 それに、襲われたとしても二匹なら………なんとかなるか?

 まあやるしかない。

 とりあえず足元にある手頃な棒っきれを拾う。

 若干腐食が進んでいるが、これしかない。ないよりはマシだろう。

「驚かさないようにゆっくり逃げるぞ。絶対に背中は見せるなよ」

「は、はい」

 野生動物には背中を見せてはいけないとのじいちゃんの教えだ。

 生涯役に立つことはなかったが、まさかこんなことになるとは…。わからないもんだな。

「………ミノルさん」

「ん?あ、おい、背中向けるなって言ったろ」

「違うんです」

「違うって何が」

「わたしたち、囲まれてます―――」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ