2話
「………………」
なぜかおれは、見知らぬ女性に正座させられていた。
「あの………」
「………なんですか?」
見るからに不機嫌そうな彼女は、最初の穏やかな声の主である。
「いえ、なんでも…」
「………ふん!」
ピリッとした沈黙に耐えかねて口を開いてはみたが、どうやら今はそっとしておいた方がいいのかもしれない。
気まずいので辺りを見回してみるものの、見えるものは青い空と雲だけ。それ以外には何もない。
こんな所で彼女は何をしているんだろう。
それにここは………
おれは一体………?
「………はあ」
思案に耽っていると、彼女のため息が聞こえた。
「…もういいです」
「はい?」
「不問にすると言っているのです!」
「は、はい!ありがとうございます!」
そもそもおれが何をしたのかさえわかってないのだが、機嫌が直ってくれるのならなんでもよい。
「ただし」
「…」
「次はありませんからね。わかりましたか?」
「はい、気を付けます」
「よろしい」
彼女は厳しい面持ちで頷いた。
「まったく、なんであなたみたいな人が最初の人間なのでしょうか…」
「はい?」
「なんでもありません」
「はあ…」
それから彼女は頬杖をついて、考え事をはじめたようだった。
何かぶつぶつと呟いているようだが、何を言っているのかはわからない。
この状況で、何もわからず正座させられるおれ。
ああ神様、ここはどこですか。
どうかお願いです家に帰してください。
「…それは無理な相談ですね」
「…は?」
顔を上げると、彼女がこちらの方を向いていた。
さっきまでの厳しい表情とは変わって、憐れむような顔をしていた。
「だってあなた…もう死んだのですから」