1話
心地よい浮遊感を感じる。
薄明かりが差して、体全体が陽光に包まれたような暖かさにまどろんでいると、どこからか声が聞こえた。
「目を…覚ますのです………」
「んっ………」
柔らかな、しかし力強さを秘めている女性の声。
その姿を確かめたくて、やおら瞳を開いた。
少しの間眩しさに目を細めていたが、慣れるとそこには、ただただ青。
どこまでも限りなく空が広がっていた。
足元には雲。
何回か踏んでみて感触を確かめると、ぽふぽふと確かな弾力を感じる。
「我が子よ………こちらへ………」
女性の声が聞こえた方へ振り返ると、大理石で建てられたような、簡素な造りの玉座が見える。
そこに、誰かいるようだ。
足元を確かめながらぽふぽふとその手前まで歩いていくと、段々と光が強まるのを感じる。
どうやら、玉座の方から光が差しているらしい。
その光のせいで、そこに座っているのが誰なのか、確かめることができない。
手前まで辿り着いたところで、いよいよ眩しすぎて、目を開けることさえ叶わなくなった。
「我が子よ…よくぞここへ………」
「あの」
「どうしましたか?」
「眩しいんですけど」
「あっ…ご、ごめんなさい!私の後光の所為ですね!よ、弱めましゅ!」
「しゅ?」
「あっ………」
一瞬落ち着いたかと思った光は、途端に強さを増してこれでもかと言わんばかりに辺りを照らした。
「眩しいまぶしい!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
思わず腕で目を覆いながら、声の主へと近づく。
「あの、落ち着いて…」
女性の目の前に来たところで、彼女の存在を片腕で探す。
ぷにっ。
「ん?」
ぷにぷに。
「あれ、雲?」
そんなはずはない。雲は宙には浮いてなかったし、なにより感触はぽふぽふだったはず。
それならこのマシュマロのような感触は一体…。
「そこは………」
「はい?」
「そこは触れてはなりません!!!」
叫び声が眼前から鳴り響いた後、突如吹き荒れた突風によりおれは吹き飛ばされた―――
誤字脱字等ありましたらごめんなさい。