表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パニック・デッド  作者: サイラー
7/12

第七話「サラ」

この階の大部屋にはベッドが一台と沢山の装置で部屋は埋まっていた。

ベッドには女が眠っていた。

女の体には様々な医療機材が繋がっていた。

「3階は相部屋なのに4階は個室ですか。」と高君が羨ましそうに言ったが、

僕は寝ている間も医療器具に繋がれたままのキツい検査の内容だよっと返した。

僕と高君とではポジティブ思考とネガティブ思考で真逆だなと思った。

ベッドの名札にはサラと書かれていた。

「おっ、よく見ると金髪のいい女じゃないか。」アンディーが近づき起こしにかかった。

「よぉ、サラさん。目を覚ますんだ。ここは非常に危険だ。」

サラは目を覚ますと当然のように目の前にいる者たちに訪ねた。

「お前たちは誰だ?」

この状況がわかっていなのも無理はない。

「治験のアルバイトは終了だ。

今は危険な状況だからここから脱出しなければならない。俺達についてくるんだ。」

「何のアルバイトだ?なぜついて行く必要がある?」

サラはネイティブな発音だった。

どこの国から来たんだろう?

「話は後だ!とにかくここを脱出するぞ。」多少強引ながらも、この場所を離れる事にした。

サラは僕達の様子を見ながらも同行してくれた。

屋上の文字と矢印が描かれてる経路案内板を見つけた。

そこはちょうど僕が熱を出して隔離されていた部屋の真上に位置する場所だった。

部屋に入ると屋上へと繋がる階段を見つけた。

「なぜ、屋上へ行く?」サラから疑問も当然だったが、僕達の安全を確保してから説明する事を伝えた。

階段を登りきると鉄製の扉があった。

施錠を開にしてドアノブを回し少し扉に力をかけてみると扉は開いた。

屋上に出ようとした瞬間だった、夜空の中にライトが見えた。

その光はこちらに近づいている。どうやらヘリがこの病院に近づいてきているようだ。

「助けが来ましたね。」

「バカ!そんな訳ないだろう。救助連絡が取れていないんだぞ。これはヤバいぞ、博士やバリケードの外にいた連中が呼んだんだろう。屋上から突入して武力制圧する気だ。」

僕もそう思った。救出目的なら入り口をバリケードで塞ぐ事なんてするはずはない。

「それでも確かめてみましょう。屋上から外の連中に声をかけて、撃たれなければ助けに来た事になります。」

高君が言った事も完全に疑う事は出来なかったので、わずかな希望を胸に外の連中に助けを求めてみる事にした。

体を出した瞬間に射撃される可能性も拭い去れなかったので、身代わりとして斧で倒したスタッフを屋上に運んだ。

「こいつはいつも検査しているイワンじゃないか。」とサラが言った。

「サラ。こいつはショーン博士と一緒にオレ達を殺そうとしたんだ。仕方なかったんだ。

この施設内で許されない人体実験をしていたんだよ。」僕達は彼女に説明した。

「何やってんだ!」サラが叫んだ。こんな話を信じろと言われても信じられる訳ないのは当然で、そう言われても仕方のない話だ。

しかしその後の彼女の言葉に耳を疑った。

「なぜ、ショーン博士も殺さなかったんだ。」

しかし今の言葉は僕にもたしかに聞き取れた。

どうやら彼女は再生医療やクローン人間の実験に利用されていたようで、

「私も同じ研究所のスタッフだったらどうする?」

訳が分からなくなって、彼女にどう言う事か聞こうとした時だった。

ヘリの音がさらに近づいて来た。

「時間がないから急ごう。」

僕達はバリケード方面に向かい、屋上の手すり越しに運んだ死体を立たせた。

曇り気味の夜間で空は暗くなおかつ、屋上からの呼びかけなので生存者か死体かは判別が困難な状況を利用したのだった。

僕達は身を伏せながら大きな声でこの死体に演技をさせて助けを求めた。

これで救助をする気があるかどうか判断できそうだ。

反応を待っている間に、携帯を取り出して電波を確認して見た。

「あっ、私の携帯の電波はギリギリ入ってますよ。」と高君が教えてくれた瞬間だった。

十数発の銃声が聞こえたと同時に死体は射撃の的と化していた。

「これは恐らく全滅させる作戦だ。」

マスコミやギャラリーがいない状態で出て行く事は危険だ。

静寂を打ち消す轟音と共にヘリのローター音が近づいてきた。

貯水槽の物陰に身を隠しながら高君に動画配信の準備を任せて、

その間に僕とアンディーはリュックの中からエタノールを出しシーツの切れ端と組み合わせて簡易的な火炎瓶を準備した。

動画配信準備完了のタイミングと同時にヘリが屋上に到着した。

ヘリは屋上の上空でホバリングをして突入準備を始めた。

ヘリも武装兵も黒一色の部隊だった。

武装兵がヘリからロープ垂らしリペリングで降下する瞬間、

ライブ配信スタート!の合図と同時に持っている火炎瓶を投げつけた。

後部座席の武装兵が銃で応戦してきた為、物陰から飛び出せずにいると、

「こっちにもヘリはあります。」と高君はリュックから小型のドローンを取り出した。

高君の秘密兵器に僕達は驚きを隠せなかった。

ドローンを起動させると、ドローンに火炎瓶を固定して上空のヘリ内に突撃させた。

見事ヘリの後部席へ命中しヘリ内は炎上した。

慌てたパイロットは降下した2名の武装兵を残し、屋上から離脱していった。

炎が燃え移った武装兵2名を奇襲をかけ倒した。

彼等が所持していたアサルトライフルとハンドガンとサバイバルナイフを鹵獲した。

身元を確認できるものは所持していなかったが、顔はこの国の人間ではなかった。

4階に戻る前にバリケードの奥の藪に隠れている連中めがけて火炎瓶を放り投げた。

命中したかどうかは定かではないがとりあえずスッキリした。

ここで起きている状況の動画をアップして、多くの人にこの病院への集まりを呼びかけた。

「このメッセージを見た人達が助けに来てくれる事を信じよう。

それよりもまたヘリが来たら今度は対処出来ないので屋上から離れよう。」

僕達は屋上の扉を閉めて内から施錠をした。

4階の中央広間に戻り、外に人が集まる迄は装備を整える事にした。

アンディーはアサルトライフルと斧とハンドガン、高君は槍とハンドガンとサバイバルナイフ、

僕はアサルトライフルとサバイバルナイフを手に取りアンディーに基本的な使い方のレクチャを受けた。

サラにはスタッフが所持していた拳銃を手渡した。

彼の故郷であるスイスでは徴兵制度がある様で、兵役時代に得た武器の知識を持ち合わせていた。

「俺は軍隊にいた時、自国製のSIGってライフルを使ってたんだが、今手にしているものはM4アサルトライフルってやつで米軍の特殊部隊なんかが使用しているヤツだ。」

「まさか米軍に襲われているのか?」

「それは無いだろ。仮に米軍に襲撃されたなら、俺たちなんかとっくに全滅しているはずだぜ。

そしてこっちのハンドガンがP92だよ。装備からして相手さんは金持ってそうだぜ。因みにサラが持っているのはワルサーP99だ。」

「ところで落ち着いて聞いてくれサラ。この病院で治験のアルバイトに来た様だが、ここは人体実験している施設なんだ。」

「知っている。私がスタッフの一人だからよ。」彼女が研究所のスタッフという事に僕達は言葉が出なかった。

「ブラックハンドという多国籍軍事企業がこの実験をしているのよ。

その医療研究部門で再生医療のスタッフとして私も働いていたの。」

「聞くからに、うさんくさそうだな。」

「再生細胞の培養に私の希少な血液型が有効な事を研究で発見してからは、血液の提供に協力していたわ。」

「サラ、君はクローン人間の事を知っていたのか?」

「クローン人間の実験をしている事を知ったのは最近で、まさか人を襲う怪物を造っているとは想像できなかったわ。

間接的に私も実験の手伝いをさせられていた事に許せなくなったわ。」

「取り返しのつかない状況になってるんだぞ。」

「本当に申し訳ないと思っているわ。

ショーン博士はこんな事を言っていたの。私の希少な血で生き返った死者を元に戻せるとも言っていたから献血に協力をしたのよ。」

「それは間違い無いのか!じゃあ君の血でこの凶暴なイービル達を元に戻せると言うことか。」

「きっとイービルを抑制する薬になるわ。」

もしかしたらこの治験では、僕達の中に希少な血液型がいないかを検査していたのかも知れない。

「やってみる価値はある。僕の友達の松田を救ってほしい。協力してくれないか。」

「俺達からも頼む。」

「もちろん、救いに行きましょう。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ