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(プロローグ)
僕はこれから、人を殺してしまうかもしれない。
目の前の細い首に指をかけながら、僕はそう思った。
罪悪感に震えが走る。それでも、もう、僕の気持ちは止まらない。
――死ね、■■、死ね、■■、死ね、■■、死ね、■■――
「死ね」と「■■」の二つの感情を指先に込めながら、徐々に力を加えていく。
――このままこいつの肉を破り、骨を折り、その奥にまで指を突き入れたなら、その穴から僕のどすぐろい、汚泥のような感情を吐き出すことができるのだろうか。
もしそうなら、僕は、こいつを殺さなければならない。
薄暗い洋館の、湿った部屋の片隅で。
愛する少女のために、愛してくれた彼女のために……僕は人を殺すのか。
……どうして。
どうして、こんなことになってしまったのだろう。
僕は半年前まで、ちょっとした不幸を嘆くような、ただ平凡な幸福に包まれていたはずなのに。
なのに、どうして。
どうして僕は、こんな――
――こんな屋敷に、来てしまったのだろう。