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第10話:世界の管理者と叛逆者(4)

 猿轡を強引に剥がされる衝撃により、いつの間にか気を失ってしまっていたミリアは意識を取り戻した。

 つんのめるように前に足を踏み出し掛けるミリアだが、腕の辺りに痛みを感じて結局その場から動くことは出来ずに立ち尽くす。どうやら、両手を後ろで拘束されて固定されているようだ。

 チラリと後ろに目をやると、彼女を誘拐した金髪の少女がすぐ後ろに立って冷たい視線でミリアを見ていた。あまりの視線の冷たさに背筋をゾッとする何かが走る。金髪の少女は後ろ手に拘束したミリアの腕を掴んで、その場から動けないようにしていた。先程腕を動かせずに痛みを覚えたのはこのせいだろう。


「シオン、放してあげなさい」

「はい、承知致しました」


 ミリアの前方から男性の声が掛けられると、シオンと呼ばれた金髪の少女は掴んでいたミリアの腕を放した。拘束されていることに変わりはないが、捻り上げられる痛みがなくなってミリアは少しだけ安堵する。


 半分だけ自由を取り戻したミリアは、周囲の様子と先程声を掛けて来た男性の様子を窺う。そこは高級感の漂う執務室で窓の外には空が見えている。どうやら、かなりの高層ビルのそれも高い階層の部屋のようだった。

 声を掛けて来た男性は革張りの豪華な椅子に座っており、品の良いスーツを纏っている。標準的な体格の四十代の男性だが、命令することに慣れた上位者の威圧感が彼を体格以上に大きな存在に見せていた。


「初めまして、須藤ミリア君。私は竜胆アギトという。竜胆財閥の総帥と言えば分かるだろうか」

「────ッ!?」


 竜胆財閥という名前に、ミリアは思わず息を呑んだ。

かつての日本を席巻していた旧財閥に対抗する形で前世紀末頃から急速に台頭してきた新財閥と呼ばれる三つの財閥の中の一つ。実質的に、現在の日本経済を支配する一角だ。特に竜胆財閥は貿易面を牛耳っており、この資源が少ない国で無くてはならない存在として確固たる地位を築いている。


「私からの要求はそこのシオンから聞いているだろう。素直に協力してもらえると嬉しいのだが?」

「絶対いや」


 ミリアの拒絶に、竜胆は嘆息しながら首を横に振った。背後でシオンの表情が一層険しくなるのが雰囲気で感じ取れる。


「やれやれ、親娘そろって強情なことだ。不破教授のお嬢さん」




 ◆  ◆  ◆




「不破教授の娘!? ミリアが?」


 セイジから告げられた言葉に、アラタは思わず驚愕の声を上げた。

 不破教授、それは現在日本および各先進国にて採用されている「善行システム」の生みの親であり、実質的に今の世界を築き上げた最重要人物とも言える存在だ。教科書にすら載っているような人物である。ミリアがその不破教授の娘だと言われても、すぐにはそれを信じられなかった。


「そういうことだ。善行システムの創設者である不破コウキの娘、不破ミリアがあの娘の本名だ」

「? 知り合いだったのか?」

「親父の方とは昔、な。俺は善行システムの元となる技術開発をしている時、あいつのチームメンバーだった」

「そうなのか」


 アラタはシステムの開発に携わった人間の一人が反対派の武装勢力のリーダーとなっていることに複雑な事情があることを感じたが、敢えて問い質すことはしなかった。それよりも何よりも、今はミリアの事の方を優先して聞くべきだと考えたためだ。


「ミリアが不破教授の娘だというのは信じるとして、一体誰が彼女を攫ったんだ? それに、何のために?」


 ミリアの素性には少なからず驚いたアラタだったが、どちらにしても今すべきことは何も変わらない。彼女の居場所を突き止めて救出する、それだけだ。そのためには、誰が何のために彼女を誘拐したのかを知る必要がある。

 アラタが気持ちを切り替えたことを満足げに見ながら、セイジは続きを話し始めた。


「十三使徒と呼ばれる組織が存在する。表に出てくる名前じゃないが、各先進国の巨大財閥から構成されていて、実質的に今の世界を動かしている連中だ」

「十三使徒?」

「キリスト教の十二使徒に対抗したのか、それとも別の理由によるものか、その名前の由来までは俺も流石に知らんがな。日本では竜胆財閥が出先機関になっていると言えば、どんな規模の組織なのか大体イメージは付くだろう」

「ッ!?」


 セイジの口から飛び出した想像以上の大物の存在に、アラタは息を呑んだ。


「つまり、竜胆財閥がミリアを誘拐したと? だ、だがそんなことをしたらシステムのマイナスポイントが付くだろう。真っ当な企業のすることでは……」

「暴力に訴えた実行犯は確かに善行システムで悪行と看做されてマイナスのペナルティを負うことになるだろう。しかし、指示を出す側は言いようによる。『攫え』と言ったなら悪行になるが、『招待しろ』『お連れしろ』と言うだけなら悪行にはならない。受ける者が勝手に解釈して動く分には、指示を出す側は処罰されない。それが善行システムの限界だ」

「それは……」


 アラタはセイジの言葉に、返すことが出来ずに反論を呑み込んだ。彼の言う通り、善行システムには限界がある。それは事実だったためだ。


「実行犯のペナルティも、支持者がそれ以上のポイントを割り振れば大したことにはならない。尤も、そんな風に思い切ったポイントの使い方を出来るのは、巨額の利益を生み出せるでかい組織だけだがな」


 善行システムと首輪法が敷かれることによって、小さな犯罪組織というのは自然消滅した。極道でも残っているのは全国展開しているような巨大な組織だけで、雑多な者達は全てそこに吸収されている。

 逆に言えば、巨大な犯罪組織は今も残り続けているということだ。それが為せる理屈は、セイジの言う通りのものなのだろう。


「少し話が逸れたな。そもそもの話だが、善行システムや首輪法みたいな既得権益に大きく影響する制度はそう簡単には制定出来ない。普通だったらな。しかし、あの時は異常とも言える程スムーズに施行が決まった。それが何故だか分かるか?」

「まさか、その十三使徒が関わっているのか?」

「理解が早くてなによりだ。お前の想像通り、裏で動いてた奴らが居る。奴らが不破の提唱した善行システムを強硬に後押ししたんだ。日本の竜胆財閥だけでなく、他国の財閥も間接的に日本経済に圧力を掛けた。一番強硬に反対する筈の経済界が真っ先に賛成派に回ったおかげで、善行システムも首輪法も極めて短期間で成立したんだ」

「一体何故財閥が後押しを?」


 財閥とその背後に居る組織が善行システムを後押しする理由が分からず、アラタは首を傾げた。勿論、善行システムは上手く用いれば元手がある方が大きな利益を生み出すことが出来る。先見の明がある資産家が反対をしないというのは、まだ理解の及ぶ範囲だ。しかし、そこまで強硬に後押しをするとなるとまた話は変わってくる。何か理由がなければ、その積極性は流石に不自然だ。


「俺も最初は単に利益を生み出すためだけだと思ってたんだがな、奴らの狙いはもっと大胆だ。今のこのご時世の中、善行システムの基幹を押さえれば、それはこの国に住まう者達の行動を思うがままに操れるようになる。奴らは、経済面だけでなくより強固な支配体制を構築しようとしているのさ」


 セイジの言葉に想像を巡らせたアラタの背筋に冷たい物が流れた。

善行システムは首輪型端末を通して各人の行動を評価する。善行を行えばプラス、悪行を行えばマイナスのポイントが割り振られるのだ。しかし、もしもその判断に誰か悪意を持ったものの恣意的な介入が為されれば、一体どうなるだろうか。


 極端な例を挙げれば、人を殺すことは善行であるとシステムが書き換えられてしまえば、途端に大混乱に陥ることになる。そこまで極端な話でなくても、竜胆財閥や関連会社の物を購入するのは善行、ライバル企業の利益になることをしたら悪行となれば瞬く間に経済の全てを掌握出来てしまう。

あまりに致命的で想像もしたくない事態だが、支配を求める者達にとって善行システムが非常に有益な武器になり得るという点については彼にも理解が出来た。


「しかし、システムはそう簡単に掌握することは出来ない筈だ」

「その通り。後押しを受けたとはいえ、不破は肝心な部分については決して奴らに渡さなかった。だからこそ、現在の社会が成り立っている。奴らは未だ善行システムを掌握することは出来ていない」

「まさか、ミリアが攫われたのは不破教授に対する人質ということか……?」


 十三使徒の求めるシステムの管理者権限を握って放さない不破教授から、それを奪い取るための人質としてミリアを連れ去ったのではないかというアラタの問い掛けに、セイジは重苦しい表情で首を横に振った。


「いや、事態はもう少し悪い。おそらく不破は既に殺されている。奴らは、不破が妻か娘にシステムのアクセスコードを残していると考えて連れ去ったのだろう」




 ◆  ◆  ◆




「………………え?」


 竜胆の言葉に、ミリアは愕然とした。あまり表情を表に出すことが少ない彼女がここまで大きく反応するのは、それほどに彼の言葉が衝撃的だったのだろう。

 それもその筈、今ミリアの前で告げられたのは、ずっと気に掛かっていた父親の死だったのだから。


「お父……さんが……?」

「ああ、あれは不幸な事故だった。勿論、我々は不破教授のことを殺すつもりなど微塵も無く、あくまで穏便に協力して貰いたかったのだが……」


 竜胆が何か言い続けているが、その内容はミリアの耳には入って来なかった。

 ミリアがまだ幼い時分に行方を眩ませてしまって以来会っていない父親だが、いつかきっと会えると信じていた。寂しい気持ちはあったが、再会を信じてずっと待っていたのだ。

 少女のその願いは、最悪の形で踏み躙られることになった。竜胆はミリアの父を殺すつもりは無かったと言っているが、結局のところ彼らが父を追い詰めて死に追い遣ったことに変わりは無い。たとえ直接の原因が事故であろうと、彼らによって殺されたようなものだ。


 ミリアは涙を浮かべた目で竜胆をキッと睨み付けると、彼に向って飛び掛かろうとした。両手を後ろ手に拘束されているため殴ることも引っ掻くことも出来ないが、体当りでも噛み付きでもいい、せめて一矢を報いたかった。

 しかし、そんなミリアの捨て身の行動は竜胆に届く前に後ろに立っていたシオンによって止められてしまう。彼女はミリアの白い髪を躊躇なく後ろに引っ張り、引き倒した。


「痛っ!」


 髪を引っ張られる痛み悲鳴を上げるミリアは、手を後ろで拘束されているせいで受け身を取ることも出来ずに仰向けに倒れ込んだ。そんなミリアの腹を、横に回り込んだシオン力一杯が踏み付けてくる。


「あぐっ!?」


 当然、こんな暴力を振るえばシオンの首輪のポイントは著しくマイナスになるのだが、彼女はそんなことには一切頓着していないようだ。


「ひぎっ……」


 脇腹を蹴り転がされ、ミリアはうつ伏せの格好にされる。その背に跨るようにシオンが乗り、後ろ手に拘束されている彼女は身動きが取れなくなった。


「やれやれ、とんだじゃじゃ馬だな。まぁいい、そのまま聞きなさい」


 竜胆は二人の少女の攻防に全く動じることなく、そのまま話を続けた。彼は執務机の上に置かれていたミリアの鞄を開け、中からとある物を取り出す。


「っ! 返して!」


 それは、ミリアが常に持ち歩いていた一台の端末だった。彼女が最後に父親に会った時、彼から誰にも渡してはいけないと言い含められ渡されたものだ。


「求めていた物のうち一つはこうして手に入った。しかし、これだけでは役に立たん。これを使うためのアクセスコードを教えて貰おうか」

「お父さんを殺した貴方達に教えることなんて何もない」

「ふぅ……やむを得ん。それなら不本意ではあるが喋りたくなるようにするしかないな。何、案ずるな。手荒な真似をする気はない。多少のマイナスは問題ないとはいえ、これ以上シオンのポイントを無駄に減らさせるのも良くないからな」


 竜胆の指示を受けてシオンの手で強引に立ち上がらされたミリアは、そのまま引き摺られるようにして別の部屋に放り込まれることとなった。




 ◆  ◆  ◆




「ミリアの事情と状況については概ね理解した。それで、あんたはどうしてこのことを俺に話したんだ?」


 アラタは一通りの話を聞いた後、セイジに問い掛けた。

彼が話した内容は確かにアラタが求めていた情報だったが、それを改竄犯罪取締官である自身に告げる彼の狙いが分からなかったためだ。


「最初に言った通り、改竄犯罪取締官としてのお前にだったら話す内容じゃない。ただ、あの娘を助けたいと思っている一人の男になら話す意義がある」


 アラタは無言でセイジに話の続きを促した。


「俺達『気高き狼』は、首輪法にも善行システムにも縛られることを望まないし、そんな社会秩序を認めない。その為に戦ってきた。そしてそれは勿論現状においてもそうだが、十三使徒の連中がそれらを悪用して自分達の力を増そうとするのは更に気に喰わない。だから、奴らの企みを潰したいと考えている」


 セイジはそこまで言うと一度息を吐き、更に言葉を続ける。


「当然、俺達はこの間違った秩序を維持しようとするお前達、改竄犯罪取締官のことだってよく思ってはいない。逆にお前達も俺達のような反対派のことは敵視してるだろう。だが、その社会秩序を自らの権勢のために悪用しようとしている連中は、俺達にとってもお前達にとっても敵の筈だ」

「……それは改竄犯罪取締官の領分を越える話だ」

「そうか。まぁ、それならそれでもいいさ。だが、お前はその領分とやらを越えてあの娘を助けたいと思っている。だから危険と知りながらルイに従って大人しく此処までやってきた。違うか?」


 セイジの問い掛けに、アラタは静かに目を閉じ、一つ息を吐いてから首を振った。


「違わないな」

「お前はあの娘を助けたい、俺達は奴らの悪事を止めたい。別に俺達の思想に合意しろと言っているわけじゃない。ただお互いの望みを叶えるための、ビジネスライクな関係だ。それなら、協力し合えるんじゃないか?」

「成程な。しかし、まだ分からない部分がある。俺からすればミリアを救うのにあんた達の力があれば確かに助けになるだろう。だが、逆はどうだ? 俺の協力があんた達に必要とは思えないんだが」


 アラタの疑問に、セイジは笑いながら答えた。


「無論、協力を求めるのには理由がある。理由は主に二つ。一つは、首輪をしていない俺達では得られない情報の入手。そしてもう一つは、あの娘との仲介のためだ」

「首輪については、付ければいいだけじゃないのか?」

「勿論可能だが、俺達は付けない。信念として、付けられない」

「まぁ、そこは議論しても不毛になりそうだな。なら、もう一つの理由については?」

「不本意ではあるが、俺達が世間的に見ればテロリストのような扱いになっているのは承知している。仮に乗り込んであの娘を助けようとしても、信用して貰えない恐れが強いだろう。だから、知り合いであるお前に仲介して貰いたい」

「ん? ミリアとは顔見知りじゃないのか?」


 ミリアのことを「あの娘」と呼んでいるセイジがてっきり彼女と面識があると考えていたアラタは、意外そうに聞いた。


「親父の方とは知人だったが、あの娘についてはこっちが一方的に知っているだけだ。そもそも、会ったのはあの娘が赤ん坊の時の話だからな。流石に俺のことなんて覚えてはいないだろうよ」

「そうか。それなら、仕方ないか」


 セイジ達「気高き狼」がアラタの協力を求める理由について、彼は一応の納得をすることにした。

 そんな彼に、セイジは改めて決断を求める。


「さて、時間も限られている。そろそろ決めてくれ。俺達と手を組んであの娘を助けるか、それとも一人で足掻くか、あるいは見捨てて元の生活に戻るか」


 セイジはその言葉と共に、右手を差し出してきた。手を組むことを選ぶなら、その手を握れというつもりなのだろう。

アラタは暫くの間差し出された彼の手を見ていたが、やがて自らも手を差し出して彼の手に重ねた。


「ああ……ミリアを助け出すために、手を貸してくれ」


 二人の男達がギュッと手を握り合う。


「よし、そうと決まれば早速プランを練ろう。なるべく早く行動した方がいい。あの娘が連中に屈してアクセスコードを差し出してしまったら、お終いだからな」

「ああ。しかし、ミリアが何処に居るのかは分かっているのか?」

「それは大丈夫だ。あの娘が連中の本社ビルに連れて行かれたところまでは確認している。問題は、ビルのセキュリティと治安維持部隊だ」


 部屋の隅から引っ張り出してきたテーブルの上に、今時珍しい紙の地図を広げながらセイジが告げた。地図の上には一つの×印が書かれており、恐らくは此処が竜胆財閥の本社ビルがある場所なのだろう。


「治安維持部隊については、俺の率いる部隊が別のところで騒ぎを起こして引き付ける。その隙に別働隊を突入させる。アラタ、お前もそちらに同行してくれ」

「別のところで騒ぎを起こすって、死人が出るようなものじゃないだろうな?」

「安心しろ、人的被害を出さない範囲でやるつもりだ」

「それと、ビルのセキュリティについてはどうするつもりだ? それに、内部構造も分からないだろう」

「そっちは正直俺達では情報を得るのが難しい。お前の方で見付けられないか?」

「分かった、やってみる」


 アラタは首元の端末を起動させると、インターネット経由でIDとパスワードを入力して改竄犯罪取締室のアーカイブにアクセスする。

 資料室にあるようなスタンドアロンの端末と異なり、オンライン上からアクセス可能なアーカイブにはそこまで秘匿性の高い情報は格納されていないが、それでも彼が求める情報程度であれば見付けることが出来た。


「少し古いが、どちらもあった」

「よし、上出来だ!」


 セイジはアラタが見付けだしたデータをザッと確認し、侵入ルートを決めていった。粗方のことを決め終えると、彼は横でデータを覗き込んでいた娘へと声を掛ける。


「ルイ」

「なんだい、親父?」

「親父ではなくリーダーだ。お前はアラタと一緒にビル潜入組だ。あまり大勢で動きまわっても、非効率だからな。分隊のメンバーは逃走ルートの確保に回せ」

「はいよ、了解!」


 おどけるように敬礼する娘に何やらアイコンタクトを交わして満足そうに頷くと、セイジは改めてアラタの方を向いた。


「アラタ、お前は武器を持っているか?」

「俺が持ってるのはこれくらいだが」


 そう言うと、アラタは腰の後ろ、上着を撥ね上げたところから一本の警棒を取り出して見せた。


「スタンロッドか。銃は無いのか?」

「改竄犯罪取締官は捕縛以上のことはしないからな、殺傷武器は持てない」

「必要なら、用意するが?」

「必要ない。用意して貰っても使いこなせない武器なら、最初から無い方がいい」


 ミリアを助けるためにテロリストである彼らと手を結ぶことは承知したアラタだが、そこは譲れない線だとして殺傷武器の所持は断った。

 その言葉を受けて、セイジとルイの視線が僅かに鋭くなる。しかし、結局何を言うでもなく引き下がった。


「まぁいい。それじゃ、準備に取り掛かるぞ。行動開始は明朝の夜明けだ」

「ああ」

「はい」

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