トラス
しばらく道を歩いていると、遠くの方にぼんやりと、
棒のようなものが見えてきた。
「なんだろう……」
僕は遥か遠くに見える、地面にささる棒のようなものを目指して歩く。
「暑い……」
太陽がじりじりと肌を灼く。
じんわりにじむ汗を手で拭いながら、ゆっくりと前に進んでいく。
目的地の棒を睨みつけ、ただ一心にそれを目指して。
目的地に近づくにつれて、棒に見えたものの形が明らかになっていく。
「これは……」
僕は今、その棒の根本に立っている。
鋼材を組み合わせ、その重さを軸力によって支えているであろう構造体。
構造体は天へ向かって高く伸び、その頂点を見据えるためには頭を高く持ち上げなくてはならない。
首が痛くなってきた。
そう、これは鉄塔と呼べるようなものだ。
鉄塔の周りには、コンクリートでできた建物がいくつか残されている。
鉄塔よりは大分低い建物だが。
何か、役にたつものが無いか探すため、鉄塔の周りをしばらく歩いていると、声が上から降ってきた。
「よう、そこのヤツ!」
つまり、鉄塔の上から誰かに声をかけられた。
上を見ると、鉄塔の足場に一人の男が立っていた。
僕の身長の3倍の高さぐらいの場所だろうか。
「よっ!」
男は僕に手を振ると、器用に鋼材を足場にして、鉄塔を伝い降りる。
彼が地面に降り立った時、ドスン、という音がした気がした。
そんな気がするほど、重量感のある男だった。
身長は僕より頭1つ分ほど高そうだ。
体の幅も1.5倍はあるんじゃないだろうか。
男はニヤッと人当たりの良さそうな笑顔を浮かべて、僕に話しかける。
「よう、少年!」
「こんにちは」
「どこから来たんだ?いやー!まだ人がいるんだな!助かったぜ」
僕は自分が来た方向を指差す。
「あっちから」