七不思議 ツギハギさん
「ねぇ、『ツギハギさん』って知ってる?」
学生4人が放課後の教室で7不思議についての話をしていた。
その時ある一人が話をふった。
その質問には誰も首を縦には振らず、その話を聞こうと全員が前のめりになっていた。
それを確認すると少女は話し出した。
「実は昔、この学校で殺人事件が起きたのは知ってる?
夕方の校舎に…今のこの時間くらいの時に生徒が数人集まって、何かの話をしてたらしいんだけど、その話をしていた生徒は夜にも家に帰ってなくて、親の方から電話が学校にかかってきたらしいの。
で、学校の先生は学校を探したんだけど、結局みつからなかったみたい。
でも次の日は、生徒が話をしてた部屋が真っ赤に染まってたの。」
「ヒッ!」
一人の生徒の反応に気を良くしたのか語り手の学生はニヤリと笑って話を続ける
「そう。全部、血。
床、壁、天井も飛び散った血がついていたの。
でも、1つ不思議なことがあったの。
いくら探しても死体が見つからなかったの。
そして、結局、その事件は迷宮入り。
猟奇殺人として処理されたの」
「え、それで終わり」
一人がそう言ったとき待ってましたと言わんばかりに、語り手は首を横にふった。
「いいえ、その翌年。
ある教師が、同じ教室で殺されたの。
…
…
…
全身をバラバラにされてね。」
「ひっ!」
「へー。」
「犯人は?」
「結局わからずじまい。
でも、その事件の後から学校で変な歩き方の生徒が目撃されるようになったの。
手足の長さが不揃いで体のバランスがおかしい子がね。
でも、学校側はそんな生徒は知らないと。
学生たちの間では噂が広がってね。
バラバラに殺された生徒のツギハギなんじゃないかってね。
そして、今もたまにだけど目撃されてるらしいの。
この時間にね。
そして、その子は、無くなった体のパーツを探しているの」
体がこわばっていた少女たちは、ふぅと力を抜いた。
そして、さっきまで聞く側だった女の子がニコニコして口を開いた。
「その話に追加すると、その殺人があった部屋はここだったらしいよ?」
「え?」
語り手だった女の子はゾワリとした感触を感じた。
今度は、さっきまで怯えていた女の子が恐る恐る口を開いた。
「あとね、殺された先生が実は生徒を殺した犯人でね。
生徒からの復習で殺されたんだよ。」
そして、聞き手だったもう一人が思い出したように指をたてた。
「それとね?今はその子たちは体にしっくりくる『パーツ』を探してるんだって」
それを言った途端、聞き手だった女の子達がニヤニヤとしだした。
「みんな詳しいんだね。
…あ、そろそろ電車の時間だから、か、帰るね」
語り手だった女の子は教室から出ようと立ち上がる。
しかし、その女の子の袖を聞き手だった子がつかむ。
「まってよー。
怖くなっちゃった?ごめんってばー」
聞き手だった子は満面の笑みを浮かべて女の子に話しかける。
「もう!離して!離してよ!」
女の子は力いっぱい振りほどこうとするが、聞き手の子の力が強くて振りほどけない。
まるで、大人の男の力に引っ張られている様で少女の恐怖心を煽る。
「それとね、『ツギハギさん』の『さん』はね。
女の子の『さん』と、三人の『さん』がかけてあるんだよー」
語り手の女の子が周りを見ると聞いていた女の子達が三日月のように口の端をつり上げていた。
聞き手の女の子『三人』が笑顔で語り手の女の子を取り囲む。
「いや!助けて!誰か!」
少女の叫びは夕暮れの校舎に響き渡った
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深夜の校舎では、工具を使う音がしていた。
「うーん。腕の太さが少し足りないかな……」
「その腕、貸してー」
「あ、足はちょうど良さそう!」
「はぁ。あとは右腕と左足だけなのになぁ」
少女たちは喜々として体を解体していく。
次の日、女の子のバラバラ死体が校庭で見つかった。
しかし、少女の右足だけは見つからなかった。
あえて語り手でなく、聞き手がソレでした。