袋詰めの愛
秋から冬になろうとする頃、世間を騒がせる事件が起こる。
日本中を轟かせ、彼はこう呼ばれるのだ。
「愛に埋もれた狂気」
深夜、当日付き合っていた女性の部屋に訪れ、眠る彼女に深く時間をかけてキスをした。
その後喉を強く締める。
そしてまるで何事もなかったかのように、諸事に耽る。息絶えた事を忘れたかのように。
朝が開ける、淡い桃色の光を浴びて、彼が最も愛した彼女の好きなところを、巾着袋に入れる。
しばらくして遺体は発見され、彼もいとおしい巾着袋を取り上げられて、永遠に彼女と会えなくなる。
僕らは、とても不幸な二人になるのだ。
そんなことを夢に見ながら、火照り始める体で彼女の部屋の前にいる。
合鍵を使い、部屋に訪れ彼女の眠るベッドに近づき、キスをした。
彼女の目が、ゆっくり開く。
「貴方は自分自身を愛してる。あいにく、私も貴方と同じ事を考えてるのよ」
腹部に強い痛みを感じ、見えなくなっていく視界に、僕に似た、彼女の笑顔をみた。