二の夏
歌合わせの日――。
静葉はため息を吐く。今回のように、やんごとなき身分の方が自分のような卑しい女と歌合わせなど、初めて。
相手は都に名高い藤原の一族。
兄弟の内で一番変わっていて…かつ芸に秀でている。
正直、からかわれているのだと思う。
通常の歌合わせとは違い、こちらは自分と緑と少数の女人。あちらは春輔さまと従者、そして共に都から来た歌の判者。
「歌選びの姫、名を教えてはくれませんか」
自分は御簾を隔てた間に背を向けている。
背にかけられる、明るく、どこか強い声。
――あぁ、これは人気があるのもわかる。
気持ちを抑え、首を振る。
「そうですか…もしや怒っていらっしゃるのですか?
急にお伺いしたことは申し訳なかった。ですが私は」
「おそれながら、我が姫はお体が弱くございます。
歌合わせを始めさせていただいてもよろしいでしょうか」
春輔さまの言葉を遮って、緑が座る。
豪胆な子だとふきだしそうになるのを抑える。
「む、うむ。おまえは誰だ?
姫の女人か?
それにしても男児のような声だな。その被りを取れ」
緑は金の鬼――目立ちすぎるその金髪を隠すために、頭から布を被って女人の格好をしている。
それが春輔の興味を引いたらしい。
緑はできものがありますので、と一言でかわす。
そして歌を一つずつ置いていった。
憎らしく写るだろうに、緑は春輔に愛想も見せない。
笑いを噛み殺して、歌合わせが始まった。
そしてこの出来事が、自身の運命を変えてしまおうとは――今は分からない。




