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無題  作者: 入表 山猫
3/4

前略3

ドアのチャイムを鳴らして、呟くような声で

「ただいま・・・」と


学校で大したことしてないはずだが、疲れがたまっている気がする。



・・・返事が無い。それどころか家から物音一つすらしない。


嫌な予感がして、素早くカバンから家の鍵を取りだして・・・






というところで

「あんた何してんの?」と少し呆れた声が聞こえる。


そうか、買い物に行ってたんだ。自分の早とちり笑ってしまい、重い買い物袋を持っているだろうばあちゃんの元に向かうーーーー


◆◆◆◆◆◆◆◆◆


買い物袋を家に運び、さっきの話をばあちゃんに呆れられ、良く言えばとても健康的な、悪く言えば質素な夕食を摂り、風呂も勉強なども済ませて今に至る。


ただいま23時。ここら辺は住宅しかない上、高年齢の人達が住んでいるため21時でも、とても静かでたまに虫か猫の鳴き声がするぐらいである。勉強など何か集中するにはもってこいの場所ではあるが、コンビニが遠く、そして行き帰りの夜道も蛍光灯が少ないため、夜外に出かけることが億劫になることも多い。ばあちゃんに言わせればこんぐらい暗けりゃ変な物も寄ってこない・・・らしい。


ふと、今日トオキに言われたことを思い出す。


トオキが言うあいつとはヒョウミのことだろう。いやヒミだったかな?


ヒミ?に会ったのは入学式のそれなりに長い(ありがたい)話の後、体育館(一階)でクラブ紹介を聞いていたが特に部活に入るつもりは全くなかったので、こっそり抜け出そうとし、トイレに行きたいという理由で無理矢理下校をして、みごとそれが翌日にばれ、途中で抜けた数十人(なんでこんなに多いんだか)は放課後に学校外の周りをごみひろいする事になった。まあごみひろいを適当に済ませ、皆が帰る雰囲気になった時、一人だけ学校に戻っていく人影が見えたので、その人影に対して話し掛けた。


その人影は振り返り・・・たしか図書館に行くとか言ったと思う。

その人影は少し小柄な男子でなく、少し大柄な女子だった。

その人影は、日本人が持つような黒髪と外国人が持つような白肌を


そのヒミと出会った時の感情が一目惚れと知るまでは1日もかからなかった・・・が何故か告白どころかまた話し掛けようと思わなかった。


特に気取っている訳でないし・・・確かに好意を持っている・・・んー・・・


さっきの言葉を訂正する。


思った。そして、いきなり告白もあれだったので、帰宅する時に一緒に帰りませんか?みたいに、適当に声を掛けるつもりだったが


ちょうど校門からヒミを見かけたとたん声を掛けようという気持ちが雲散霧消してしまった。もちろん全く無くなったわけでないので、無理に声を出そうとしたが無理だった。


一目惚れ=恋ではないと考えたが、たまに見かけると、ついヒミに目がいってしまう。そしてそれがずるずると続いてしまう・・・。


そして一週間前


たまたま職員室前で先生達が話していることを聞いて、ヒミが海外に引っ越すことを知る。


そして今ここまで何もせず今に至る訳だが・・・


間違いなく今週中に引っ越す、それによって多少後悔するだろう、だが高校に入る頃に少し忘れる。むしろ、これからの新しい高校生活に心踊るだろう。


それでいいのか?小さくない疑問が心の底に溜まる。


海外といっても、行くところはアメリカやヨーロッパとかそこら辺だと思われる。引っ越した後また出会うのはものすごく難題だ、同じクラスでもないのに。




・・・自分に対して苛立ってくる。自分の腹に鈍い痛みを感じる。そうストレスを感じる・・・。


わかってる。家でグダグダ悩んでいても仕方ない。


でも自分は、本当にヒミが好きなのか?あれ以来あまり声を掛けれずに。


思いや考えが生まれ消える。それを繰り返すうちになんとも言えない自分の中にある「モヤモヤ感」が溜まる。


その「モヤモヤ感」が自分の許容量を越えた時


そんなこと考えても意味が無い!

ヒミは海外に行ってしまう。もしかしたら、今日にでも行くかもしれない!自分はそれでいいのか!


もちろん良くない。それじゃ、家で悩んでも変わらない。

どんな考えでも彼女に伝えたい! 今すぐに!


そう考えたすぐ後、自分の部屋を飛び出す。頭には血がのぼっている。誰にも止められる気がしない。

祖母の言葉に耳を貸さず

「ちょっとコンビニに行ってくる!」と言って、学校以外でよく見かける、ある広場に向かって走り出した。




今が何時かも忘れて・・・。

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