デルバルン part1
ダンside
「んん~、んっ、ああ~・・・何かスッゲエ寝た・・・・・・ここ何処だ? ・・・・・・・・・・・・あ~、そう言えばゲームの世界に来たんだっけ・・・ん?」
「ん~、ふひゅ~~~・・・・・・」
隣を見ると、リリィが平和そうに寝息を立てながら寝てる。
こいつは、神経が図太いというか、能天気というか・・・・・・
「早く起きろ」
「ん・・・・・・おはよう」
「ああ。さっさと起きろよ」
「ん、んん~~~、ふう」
リリィは起き上がると、馬車を降りてった。
俺達は護衛になったけど、急だったから昨日は夜の番には入らずに、今日から入る事になった。それで、俺達は、他の人に任せてさっさと寝た。
俺達が寝てたのは、護衛の人が交代で眠る為の馬車。
そのお蔭で、多少寝やすくて体が痛い、なんて事は無い。
「はあ、これからどうなるんだろうな・・・・・・」
そんな事を言いながら外に出ると、
「ダン、ご飯の準備が出来てるよ」
「ん、ああ」
考え込んでた所為で、何時の間にやら、ソコソコの時間が経過してたみたいだ。まあ、それは良いとして
「何だこの列は・・・・・・」
そこには、他の乗客や護衛の人間等が列を成してる。こりゃ一体・・・・・・
「ダン、準備が出来てるから手伝って!」
「手伝うって、こりゃ何なんだ?」
「いや~、朝から良い匂いがするもんでな、何かと思ったら嬢ちゃんが料理を作ってて、それで、俺達にも少し分けて欲しいなぁ、って事で」
昨日、俺達にアサリアの素材を分けて欲しいって言ってたオッサンが説明した。
成程な、それで、こんな炊き出しみたいになってるって訳か。
しょうがないな、手伝うか・・・・・・・・・・・・。
「はあ、疲れた」
「だったら、やらなきゃ良かったんじゃないか?」
結局、かなり時間が掛かったな。
まあ、片付けは他の人達がやってくれたからその分は楽だったけど・・・・・・。
「それで、聞いてきた話だと、デルバルンに着くまでは予定通りなら3日、何か問題が起これば、その度に遅れてくみたいだな」
「
「到着!! はあ、やっと着いた・・・・・・」
「馬車の旅がここまで疲れるものだとは、思いもしなかったな」
計4日間の馬車の旅は、現代人である俺やリリィにとっては辛く、もう体中が痛くてしょうがない。
「2人とも、護衛の仕事ありがとな。それじゃあ、これが報酬だ」
「ああ、んじゃ貰ってくな」
「・・・なあ、2人ともこのまま俺達と組まないか?あんた達が居れば怖い者無しだ」
「あはは、すみません。僕達にもやる事があるので・・・・・・」
リリィがやんわりと断った。
まあ、この街、下手をすればこの世界を回る必要があるかもしれないからな。幾ら護衛と言っても、精々この街を起点として動く人達とは、あんまり行動できないしな。
リリィに断られて残念そうにしながらも、どうやら納得はしたようで、「また機会があったら、一緒に仕事をしよう」と言って、他の人達と行った。
んじゃ、これからどうするか・・・・・・
リリィside
これからどうしよう。情報を集めるにも、ただ闇雲に探しても意味ないし、こういう時は
「フリーギルドを探そっか。そこでなら何か情報が手に入るだろうし」
フリーギルドっていうのは、プレイヤーが作ったギルドとは違って、フリークエストの受注やアイテムの購入、または依頼をする事が出来る施設。
ギルドに所属していないプレイヤーは大抵、ここでクエストを受注している。
「まっ、そうするしかないな」
「それじゃあ、まずは施設の位置を確かめないと。ゲームのままだったら良かったけど、この街って、どう見てもゲーム時代よりも大きくなってるね」
「ああ、正直驚いた」
ゲームの時代でも、そこそこ大きかったけど、目の前の街はそれ以上、数倍の大きさになってる。
その所為で、僕達が持っている位置情報は当てにならない。
「なっ、焦らずにいこうぜ」
「うん、そうだね。焦っても良い事無いし」
それじゃあ、まずは色んな店を見て回るか。
う~ん、どこが良いかな?
「あっ、あそこなんて良いんじゃないか?」
「へ? あれって、確か武器屋の看板だよね」
ダンが指差した先にある店は、入り口の上に武器屋のマークが入っている。
「ああ、もし俺達みたいに、この世界に迷い込んだ人達が居るなら、資金を得る為にああいう場所で装備を売った可能性がある」
「うん、だけど、そんなのどうやって調べるの?」
「簡単だ。この世界じゃ、ゲーム時代よりも武器の性能が低い。つまり・・・・・・」
「そっか、性能が高い装備があれば、それはプレイヤーだった誰かが売ったかもしれない、って事か!」
「そういう事だ」
んじゃ、早速店に行ってみよう。
えっと、失礼しま~す。
「らっしゃい!家は良い装備を揃えてるよ・・・・・・何だ嬢ちゃん、ここは嬢ちゃんみたいな子が来る所じゃ無いよ」
むっ! 嬢ちゃんって、確かに見た目は女の子だけど、そんな言い方しなくても・・・・・・。
「これでも立派な冒険者ですよ」
「ほう、そうかい。でも、そんな恰好で言われても説得力が無いな。冒険者だって言うなら、せめて鎧ぐらいは着てこないと」
・・・・・・はあ、確かに今僕が装備してるのは、見た目的には、ただの服だけど性能はそこらの鎧なんかよりも遥かに高いって言うのに。
もしかして、この店に入ったのは失敗だったかも。
何て考えてると、後に入って来たダンを見て
「いらっしゃい!どうだい、良い物が揃ってるだろ?」
ダンを見た途端に、顔色を変えて熱心に売り込みを始めた。
だけど、さっきまでの僕と店主の話しをしっかりと聞いてたみたいで、ダンはあんまり良い顔はしてない。
それでも、カウンターまで行くと
「ちょっと、この剣を見て欲しいんだけど」
そう言って、アイテムボックスから刀身は銀色に輝く両刃で、鍔は赤く植物の蔦みたいな形状の細剣を出して店主に見せた。
初めは「買う客じゃないのか」なんて言ってたのに、武器を鑑定しだした途端に、さっきよりもさらに顔色が変わって、剣を見てる。
「な、なあ、この剣。一体何処で手に入れたんだ? 材質といい加工法といい、どれを取っても一級品だ」
「へえ、そうなのか」
へえ、あのレベルで一級品扱いされるんだ。
ダンが出したのは『ストレートヴァインズ』って言う名前の剣で、ダンが作ってはみたものの、能力も形状も好きでは無かった為、その内にギルド販売しようと持っていた物だ。
ちなみに武器や防具には『装備スキル値』が存在していて、指定された数値にスキルが達していないと装備出来ない、もしくは装備出来ても性能を完全に引き出す事が出来ない、という風だ。
まあ、スキル値が低くても、性能の高い装備なら完全に引き出せなくても充分、って事もあるんだけどね。
「それで、序に聞きたいんだけど、この店にはこの剣と同等の武器や防具は置いてる?」
「へ?! いえ、こんな代物、そう簡単には入荷しませんよ。というより、こんなにも凄い物なら、冒険者達は売っぱわらずに使いますよ」
まあ、確かに僕達も強い物は基本使ってたしな。
それにしても、やっぱりダメか。もしかしたら、何て考えてたんだけど。
「そうか、なら良い」
「あ、ま、待ってくれ! 幾らなら、それを売ってくれるんだ!? 10,000か? 20,000か?」
ダンが冷たく言うと、店主は急に焦り出して値段を付けて来たけど、別に売るのが目的じゃ無いからダンは溜息を付いて店を出てった。
「次は何処に行くか・・・・・・」
「う~ん、やっぱりフリーギルドに行くのが1番じゃない? あそこなら、色んな情報は勿論、色んな人から情報が手に入るでしょ?」
武器屋を出て街中をウロウロしてるダンに提案した。
「そうだな。けど場所が分からん」
「ふふふ、その辺りは抜かり無いよ。さっき馬車で皆と別れる前に場所は聞いておいたから大丈夫だよ」
「(ピクン) なら、何でさっさと言わないんだよ」
あ、マズイ。ちょっと怒ってるな。
ダンは不機嫌になると、いつも眉と鼻が僅かに動く。ゲームだったら分からなかったけど、今は現実と同じだから、そういうのも分かる。
「あ、あはは・・・・・・」
「・・・・・・(ツンツン)」
「うぐっ! うっ、ご、ごめん。謝るから突っつかないで」
「え~、止めん」
うう、ダンって現実に居た時から僕が失言すると、いつも脇腹を突っついて来るんだよな。そこまで痛くは無いけど、ちょっと痛いし擽ったいし。って、いい加減・・・・・・
「ひゃんっ!?」
「うをっ! びっくりした。急に変な声を出すなよ」
「い、いや、だってダン。今、その・・・・・・」
「ん? 聞こえんぞ」
っく、こんな事、男で言うのは、いや、まあ今は体は女だけど、一応心は男のつもりだし・・・・・・って、さらに突っつくな!
「う、む、む・・・・・・」
「む?」
「胸に当たって、その、変な感じがするから止めろ」
っく、今の僕の顔、絶対に真っ赤になってる。でも、仕方ないでしょ。男なのに、胸がどうこう何て言うなんて。
「・・・・・・すまん」
ダンはボソッと言うと、そのまま黙った。
う、沈黙が痛いよ。早く着いてくれ。