プロローグ3
「ほら、お姉ちゃんこっちだよ」
「あ、うん。分かった・・・・・・」
どうしよう。結局何も解決策が見つからないまま到着してしまったけど。
何とかできな・・・・・・
「あら、リリィちゃんも来たのね」
「あ、はい・・・・・・」
メアリちゃんのお母さん、やっぱりどう見ても子持ちには見えないよな。
「他の方はもう行ってるわ。私達も行きましょう」
「は~い」
「はい」
嬉しいような、人として大切な何かを失うような・・・・・・・・・・・・。
「ほらほら~」
「わっ、やったな!」
「はい、背中は洗えましたよ」
「今度は私がする~」
・・・・・・唖然、茫然、開いた口が塞がらない。
多分、今の僕ってそんな感じなんだろうな。
だって、目の前には女性の裸が溢れてる。僕と同い年位の子やメアリちゃんやメリーさん位の人まで色々居るけど・・・・・・うっ、マズイ!頭がクラクラしてきた。
お、落ち着け。こういう時は、確かお経を・・・・・・って、お経なんて全く知らないぞ!
「お姉ちゃん、洗ってあげるから早く!」
「・・・・・・っく、分かった。ちょっと待ってね」
ええい! 男は度胸だ!
装備を解除して・・・・・・
「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」
ん?何か妙な視線を・・・・・・うをっ!
何か皆見てる!?
えっ?! 僕変な事でもしたのか?
「わあ~~~、お姉ちゃんキレイ」
「キレイ? 僕が?」
「うん」
まあ、確かにこのキャラの外見は綺麗に作れたと思うし、他のプレイヤーからも好評だった。うん、悪い気はしないかな。
「それじゃあ、洗ってあげるね」
「それじゃあ、お願いします」
「んふふ、任せてください。よいしょ、よいしょ」
おお! うん、悪くない。というか何か気持ち良いな。誰かにこうやって貰うの、小さい時以来だもんな。
「ねえ、ちょっと良い?」
「はい? ぶふぅっ!?」
「ちょっ! ちょっと大丈夫?!」
上手く声が出せないから、必死に頷いて大丈夫だと伝えた。
だって、そうでしょ? 行き成り目の前に、自分と同い年位の女の子の裸があったら、そうなるよね?
と言うか、今はよく鼻血が出なかったな。ふう、危ない危ない。
って、まあ、それはさて置き。
「えっと、どうしたんですか?」
「ん、うん。私ね、モンスターに襲われかけてた馬車に乗ってたの。でも、あなたのお蔭で助かったからお礼を言いたくて」
「それだったら気にしなくて良いよ」
「そう?・・・・・・ねえ、それとちょっと聞きたいんだけど、あなたと一緒に居る男の人・・・・・・」
「ダンの事?」
「ダン、って言うんだ・・・・・・ねえ、あなた達って、もしかして付き合ってるの?」
・・・・・・ん? 突き合う? 殺し合うって事? いやいや、そんな物騒な事を聞かれる訳無いよね。
多分、恋人かって事だよな?
「違うよ。ダンは戦友で親友なだけ・・・・・・」
「? どうしたの?」
話し掛けられたけど、答えてる場合じゃ無いみたいだな。
「皆さん、直ぐにここから離れて、さっきの場所まで戻って下さい」
「え? どうして・・・・・・」
「モンスターが近付いて来てます。だから、僕がどうにかするので早く!」
僕の突然の言葉に全員が動揺を隠せないでいる。
多分すぐに、逃げれば良いのか、それともここに居る方が安全なのではないか。どうすれば良いか皆混乱してるんだ。
どうすれば、どうすれば皆を・・・・・・
「お母さん、みんな! 早く行こ!」
僕がそんな風に考えてたら、メアリちゃんだけがそう言って、行動を始めている。
それは、子ども故の単純さからなのか、それとも僕を信じきっているからなのか、それは分からないけど、それでもメアリちゃんが、そう言ったお蔭で皆が逃げ始めた。
それじゃあ、僕も装備を・・・・・・って、マズイ。もう来てる。
まだ、準備も出来てないっていうのに・・・・・・
「「「「「「シャアァァァ」」」」」」
茂みから飛び出してきたのは、二足歩行で両手と両足が鋭い爪を生やしたモンスター『アサリア』の群れだった。
「っち、『魔符 火連弾』」
アイテムボックスから、1枚の札を出して発動させた。
僕が発動させたのは、攻撃用魔法が刻まれた札で、1回限りの使い切りだけど、魔力を消費せずに使えるっていう利点がある。
発動と同時に5つの火球がアサリアに向かって放たれた。
「ジャアッ!!」
火球の2つは1体のアサリアに直撃し、炎が体を包むと、動かなくなった。
だけど、残りの5体は素早く散開して攻撃をかわしてる。
「札が弱すぎたか! なら、『魔符 炎華流刃』」
次に出した札が発動すると、今度は炎が刃の様に横一閃に放たれた。
炎の刃は2体に直撃すると、体を真っ二つにして同時に切り口から炎が上がって、それが全身を包んだ。
「よし、残り3体・・・・・・っな、待てっ!!」
残りの3体が向かったのは、さっき皆が逃げってった方向。
僕には敵わないから、無力そうな人達を狙ったのか。すぐに追いかけないと・・・・・・。
ダンside
リリィ達が近くの川に行って、そろそろ10分位経つな。
・・・・・・リリィ、大丈夫か?元が男だから女の人と一緒なんて。唯でさえ免疫無いってのに。
ん?何か騒がしい・・・・・・
「何かあったんですか?」
「あ、ああ。今女性達が戻って来たんだけど、川でモンスターに襲われたって。それで女の子が1人残ったって・・・・・・」
「・・・リリィだな。はあ、まあ大丈夫だと思うけど・・・・・・迎えに行った方が良いか?」
リリィのレベルなら、この辺りに居るモンスターで、どうこうなるって事は無いな。
もしリリィが苦戦するようなレベルのモンスターなら、誰も戻って来れなかっただろうし、この辺りまで爆音やら何やら聞こえるし見えるだろうしな。
「・・・ねえ、お兄ちゃん!!」
ん? この子は・・・確か馬車で一緒だった・・・・・・
「お姉ちゃんがね、私達に逃げろって言ってくれたの。でも、お姉ちゃん1人で戦ってるの! 早く助けてあげないと・・・」
「リリィだったら1人でも大丈・・・」
「ひっく、う、うぅ~~~」
はあ、めんどくさいな。どうしたもんか・・・・・・ん? モンスターの気配。
リリィめ、数体逃がしたのか。
「母さんの所に行ってろ。それと、他の人にも森から離れる様に伝えとけ」
「へ?」
「だあもう! 早くしろ!」
「(ビクッ!) う、うん」
返事をしたら、さっさと母親の所に行ったか。それに、他の人にも伝えてるみたいだし・・・・・・んじゃ、俺は俺のやる事をするか。
「「「シャーーーッ!!!」」」
アサリアか、数は3体・・・何だ、心配して損した。
「ソッコーで潰す」
こいつら程度なら、これにするか。
俺が出したのは1本の刀『魔月・黒円舞』。刀身が黒く、柄が銀色に輝いてる。
「「「ジャッ!」」」
3体とも、一斉に飛びかかってきた。けど、
「ふっ!!」
一息と共に一瞬で終わった。
「はあ、弱いな。詰まらな過ぎる」
手ごたえが全く感じられない。やっぱ雑魚は何体倒してもな・・・・・・
「皆!大丈夫!?」
「あ? リリィか。こっちは、大、丈夫・・・・・・」
って、おいおい
「ぶふぁっ!!」
「・・・・・・ふつくしい」
「我が生涯に、悔いなし!!」
あ~あ、あっちは死屍累々か。
「どわっ! ちょっ! 大変だ、血が、血が出てる。ダン! すぐに治療を・・・・・・」
「・・・・・・リリィ、自分の恰好をよく見てみろ」
「へ? ・・・・・・あ、服着るの忘れてた。あははは」
何と言うか、しっかりしてるようで、どこか抜けてるんだよな・・・・・・。って、血溜りが凄い事に!!
「何でも良いから、早く着ろ。他の人が出血多量で死ぬぞ」
「うをお!」
「い、いや~、良いも、げふんげふんっ! 大変な所を助けて下さって」
この、おっさん・・・・・・。
俺のジト目に気付いたのか、コホンと咳払いをすると
「そこで、ちょっと良いか? このアサリアの爪とかの素材なんだが、俺達にも少し分けてくれないか?」
「素材を?」
「ああ、こいつらの素材なら、ソコソコの値段で売れるからな」
「ああ、そっか。う~ん、ダン、どうする?」
「ん~、まあ、良いんじゃない?」
金に困ってる訳じゃ無いしな。
それを聞いたら、おっさんは「ありがとう」って言うと、素材の解体にかかった。爪やら皮を剥ぎ取っては、丁寧に並べてる。
やっぱゲームと違って、自分で細かくやらないとダメなんだな。
「それじゃあ、解体は他人に任せて寝よっか」
「だな」
今日は色々あって疲れたしな・・・・・・。
今回は、視点変更をしてみました。
う~ん、難しいww
それと、今回も戦闘はアッと言う間でした。取り敢えず、暫くは戦闘無しの探索・探検編をしようかと思います。
それが、第1部になるのかな?
これからも、よろしくお願いします。