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藤原ゴンザレス短編集

お姉ちゃんは覇王

薄暗いマイルーム。

男子中学生のパトスがアレなサンキュチュアリ。

生のイカの臭いがかすかに香るエモーション。

そこに俺は布団を被って篭っていた。

色々ショックでお外には出たくない。

絶対に出ぬのだ!あのバカがいる限り!

どんどんッ!どんどんッ!

ドアを叩く音がする。

俺は瞬時にドアへダッシュし、ドアノブを掴み力をこめて踏ん張る。


「ゆうちゃん! 開けて!」


どんッ!どんッ!っとドアを叩く音。

ガチャガチャとドアノブを回す音がする。


「開けぬ! 絶対に開けぬぅッ!」


俺は全力で扉を押さえる。

マイサンクチュアリに侵略者を入れてはならないのだ。

次第にどんッ!どんッ!という音は消え俺はほっと胸をなでおろす。

だが世の中はそんなに甘くなかった。


「……いいもん! 壊すから」


「あっ! っちょッ らめえええええええ!」


ものすごい勢いで避難しようとする俺。

だが全ては無駄だった。


「みかぱーんち! どごーんッ!」


ドゴオオオオオゥッ!という音とともに吹き飛ぶドア。

ドアの破壊に巻き込まれて縦回転しながらガシャーンと!いう窓ガラスの破壊音とともに外まで吹き飛ぶ俺。


「ぎゃああああああああああああ!」


身に振りかかる縦回転のGに命という名の蝋燭の火がそっと消え去ったように……思えた。

そして次の瞬間自由落下が始まり、ぐちゃっ!という湿った音とともに庭の地面に叩きつけられる。


「あれ? ゆうちゃん? どこ行ったのー?」


間抜けな声。

たった今、俺を殺そうとしたゴリラ女。

俺の一つ上の姉の美香だ。血は繋がってない。

美香とは三歳のときに親の再婚で姉妹になった。

よくある話だ。

美人でドジでブラコンな姉。

なにそのエロゲ。

だが俺はシスコンにはならない。

姉に問題があるのだ。

美香は覇王なのだ。

意味がわからないって?

俺もわからねえ。

始まりは今日。美香が中学三年生になり、一つ下の俺は中二になった日だ。

学年開始時のオリエンテーション。

一年間の注意事項を教師が説明していた。

その時だった。

教室の緊急地震速報器から、けたたましくサイレンが鳴りはじめたのだ。

慌てて机の下に潜る俺とクラスメイトたち。

そして次の瞬間ドゴオオオオォンっと破壊音がした。

揺れる学校。女子の悲鳴が上がる。

その時俺は見た。

窓の外でスキンヘッドで異常な体格をしてるので有名な三年の不良を殴りながら上昇していく美香の姿。

空中コンボだった。

そして、空中で掴み横回転しながら恐ろしいスピードで落ちていった。

ズウウウウゥン!と二度目の地震。

俺は見たものが信じられなかった。

優しくてドジな姉。

それがゲームみたいな動きで空中コンボを決めてたのだ。

揺れが収まり担任が慌ててテレビをつける。

ピコピコピンと音とともにちょうどいいタイミングでニュース速報が流れるところだった。

だがその内容は先ほどの地震ではなかった。


『第34代覇王は東京都の中学3年生の内藤美香さん』


意味がわからない。何もかも意味がわからない。

俺が呆けているとテレビで流れていたドラマが途中でニュースに切り替わった。


「第34代覇王に東京都の中学三年生、内藤美香さんが選ばれました。繰り返します……」


テレビに美香の顔写真がデカデカと映る。

だから意味がわからねえ!と心の中でツッコんだ。

そして俺は辺りを見回す。

やはりというか当然のようにクラスの視線が自分が自分に集まっていた。


「あ、あの内藤君。このニュース……内藤君のお姉さん……だよね?」


女子生徒が俺に聞く。


「俺も何もかもわからねえからな!!!」


つい強く言ってしまう俺。

俺には本当に何もわからなかった。

わけがわからなかった。

あのゴリラ女は本性を隠していたのだろうか?

なにかの病気なのだろうか?

もしかして大掛かりなイジメ?

少しだけ心配になった。

たった一人の姉なのだ。心配なのは当たり前だ。

学校が終ったあと急いで家に帰った俺。

関係者に話を聞きたかったのだ。

家にいる美香の実の母親である母さんに聞いてみたのだが、


「あの子、昔から力強かったのよねぇー」


とため息をついていた。

おいコラ聞いたことねえぞ!その情報!と詰め寄る俺に一言。


「あの子、ゆうちゃんの前だとお嬢様ぶるのよねえ……昔から……」


そうですか……俺は自分の目が腐っていたことを悟りそして諦めた。……ふりをした。

姉の問題だ。自分に火の粉が降りかからなければいい。……と自分を納得させた。

だがその日の夜だった。

風呂からあがった俺が自分の部屋で見たもの。

俺のベッドの上でパンツ一丁ワイシャツ一枚。

俺のデニムのズボンを頭から被り、俺のTシャツを抱きしめ、俺のボクサーブリーフを握り締めて眠る美香の姿だった。

色々とショックだった。

美香お姉ちゃん。

いつも優しくてしっかりしてる。

それがこの姿なのである。


「えへへへへへへ……ゆうちゃん……お姉ちゃん覇王になったよ……これで結婚できるね……」


寝言。その寝言で俺の中の何かが切れた。


「出てけゴルァアアアアアアアッ!」


エロ展開にはならない。

絶対に! 絶対にだ!

そして話は冒頭に戻る。

マイサンクチュアリから美香を追い出し引きこもる俺。

そんな部屋に侵入するためにドアを壊して侵入しようとして俺を殺しかけた美香。

全てが悪夢である。

庭に横たわってKOされている俺。

全身が痛くて動けない。

そんな俺に美香が窓から身の乗り出して一言。


「ねー、ゆうちゃん。覇王ってなに?」


「俺がわかるわけねえだろおおおおぉッ!」


つうかお前さっき寝言で結婚できるとかぬかしてたよな!

そういうごまかし方が通用すると思うなよ!すべてばれてるからな!

そこまでツッコミを心の中で入れたら急に意識が遠くなってきた。

そして薄れ行く意識の片隅で俺は誓った。

俺は絶対にシスコンになどならん! 命が惜しいからな!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 世界はきっと姉と君の仲を認める。 だって命は惜しいから。
[一言] よく分かんないけど、面白いです。 これ短編ってもったいないですよ。 是非シリーズ化してください。
[良い点] ああ、こういう軽くてさらっと読めるコメディっていいなぁ。 [一言] へきへきして来ました(?) これからもがんばってください。
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