私は乙女ゲームのキャラでした
公爵令嬢エリアナ。それが彼女の名前だった。赤の巻き毛に紫の瞳の美少女。だけど彼女は、この世界の主人公、ユーナに負ける運命。恋愛物語でヒロインを虐める女キャラ、だったと思う。この世界は乙女ゲームで、悪役令嬢が存在するのだ。私はそのエリアナに転生したオタクだ。
だけど、私は負けたくない。前世はヒロインタイプの女に煮え湯を飲まされ続けてきた。転生してまでそんな女に苦しめられたくないのだ。だから私は、ヒロインのポジションを奪うことにした。いや、取り戻すのだ。ヒロインの受ける幸福は、前世自分が手に入れるはずだったものだ。だから私は、取り戻す権利がある。
そう思って、まず、ヒロインの行動を先んじて、攻略対象たちを攻略した。そうしたらヒロインがおかしくなった。自分を被害者に置こうとし始め、私のしてもいないことをみんなに吹聴しはじめ、なぜかみんなそれを信じ始めた。そして、学園の卒業パーティー。ゲームのクライマックス。私は婚約者に婚約破棄された。元婚約者の傍らにはゲームのヒロイン。私は彼女に嵌められたのだ。だが、彼女の行動は穴だらけで、私は逆に彼女を断罪しー、
「あーだめだめ。web小説のデータでおかしくなってるよ。」
そこはとあるゲーム会社だった。パソコンの前で女性二人が話し合っている。
「AIでキャラと会話できる乙女ゲームを作ろうとしたけど駄目だね。主人公の友人キャラが何度やっても挙動がおかしい。自分の事、攻略対象の婚約者で転生者の悪役令嬢だって言い始める。これ、そういうゲームじゃないのに」
「web小説でだいぶありますからね。悪役令嬢。もうこれ主人公の近くにいる気の強そうな女キャラみんな悪役令嬢になっちゃうんじゃないですか。」
「そのへんの影響で乙女ゲーム自体を令嬢から男を奪うゲームって思い込んでる人も多いからねえ。この子、婚約者じゃないのに」
「もうなんか、ここまで来ると強制力感じますね。」
はあ、とため息をつく。
「まるでホラーですね。実際には婚約者でもないし、とられてもいないのに、そう思い込んでしまうって」
「他にもプロンプト試してみて色々やってみようか」
「もうこれ、ホラーゲームにした方がよくないですか?自分を悪役令嬢だと思い込んでいる主人公が真実を知るたびに精神が崩壊していく、みたいな…。実際は悪役令嬢でも転生者でもなんでもないという」
「…それいいかもしれないわね。上に言ってみようかしら」
「本気ですかあ」
その後、ゲームはリリースされたが、主人公の女性友人キャラの存在は消されていた。制御できたかったためだ。そしてしばらくしてもうひとつ、ゲームがリリースされた。悪役令嬢が婚約破棄を防ぐ話。ジャンルはホラー。主人公のビジュアルや設定はあの乙女ゲームの友人キャラを流用していた。ゲームの真相は、元の設定のままだった。つまり思いこみ。主人公の被害妄想。これが受けるかどうか、売れるかはまだ分からない…。




