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あの日、声をかけてくれた君は

作者: 竹の子
掲載日:2026/04/25

「〇〇ちゃんと話してみたい」


それは確かに私の名前だった。

この声は、あの海馬くん?


正直言って苦手だ。

目つきが鋭いし、何を考えているのかわからない。


なんでよりによってこの人なんだろう。


でも、このクラスになってから半年くらい経つのに、

海馬くんとはほとんど話したことがない。


話したいとも思ってなかったし、

いつも同じ人としかいないイメージ。

他の人と仲良さそうに話してるのも見たことがないし、

女子と喋っているところなんて、全然見たことがない。


海馬くんの席は、私のすぐ後ろ。

話せない距離じゃないのに、どうして話しかけてこないんだろう。


そう思い始めてから、ずっと気になっていた。


「ガチャン」


背後で物音がして振り返ると、ハサミが落ちていた。

海馬くんが落としたんだろう。


拾って渡すと、


「ありがとう」


その声は、思っていたよりずっと優しくて、甘かった。

ちゃんと声を聞いたの、初めてかもしれない。


キンコーンカーンコーン。


授業が終わった。

まだノート書けてないし、最悪。


トントン、と肩を叩かれる。


振り返ると、海馬くんがノートを差し出していた。


「これ、見る?」


突然で驚いたけど、困ってたからありがたかった。


「え、いいの。ありがとう」


ノートを受け取って、思わず聞く。


「なんで貸してくれたの?」


「書き終わってなくて困ってそうだったから」


淡々とした声。

でも、ちゃんと周りを見てるんだって思った。


すごいな、って思っていると——


「話したかったし」


ボソッとそう言った海馬くんの頬は、少し赤くなっていた。


その日から、海馬くんと話す機会が増えた。


授業でわからないところを聞いたり、

どうでもいい話をしたり。


最初は見た目で避けてたけど、

話してみると、海馬くんはよく笑うし、

楽しそうに会話してくれる。


楽しい。


こんな時間が、ずっと続けばいいのに。


気づけば、頭の中は海馬くんでいっぱいだった。

声が、ずっと頭の中で響いている。


どうしちゃったんだろう、私。


今までこんなことなかったのに。


「なぁ、俺〇〇ちゃんのこともっと知りたい」


急にそんなことを言われて、戸惑う。


私も知りたい。

でもこの流れって——


もしかして、告白?


海馬くんからしてほしい。

私のこと、どう思ってるの。


ただの友達?


「そんなわけない」


はっきりした声だった。


「俺は〇〇ちゃんのことが好き」


まっすぐな目で見られて、

胸が一気に熱くなる。


嬉しくて、その場で飛び跳ねてしまった。


それからは、授業中も海馬くんのことばかり考えてしまう。


会話は今までと変わらないのに、

全部が少し特別に感じる。


この人を好きになってよかった。


心から、そう思った。


海馬くん。


私の視界に入ってきてくれてありがとう。

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