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氷室の野望(仮)  作者: 和音


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7/17

7 続きからはじめる(1567年1月15日 徳川家)


1567年1月15日 徳川家――



部屋を出てみる。

どうやらここは、岡崎城本丸の二階か三階部分にあたるようだ。

廊下はさすがに肌寒い。

なにせ着ているのは白絹の小袖(こそで)夜着(よぎ)の二枚だけ。


とことこと歩くと、廊下の曲がり角で女中(じょちゅう)に出会った。

驚いた女中は手に持った水桶(みずおけ)を抱えたまま声を上げた。

「姫様!」


いやいや、そんなに驚かなくても。


「トイレ……(かわや)へ行きたいのだけど、どこにありますか?」


しまった。

子供が大人に尋ねるように普通に敬語で話しかけてしまった。


「あ……え……?」

女中狼狽(ろうばい)

しばらくして気を取り直して

「こちらでございます」


よく考えたら、自宅のトイレの場所を知らないなんて普通はありえない。

まいっか。ゲームだし。


トイレに着くと、ぶったまげた。

生まれて初めて見た、床に穴が開いているだけの俗に言う『ぼっとん便所』である。

ただ、囲いはちゃんとある。

控えめに言って悪臭が凄かった。


悪臭に耐えながら用を足したのち、ある事に思い至った。

トイレットペーパーって……無くね?


でも紙があった。

のちに調べたところ、反古紙(ほごし)と言われるリサイクルの紙でした。

うん。

まだ小さいとはいえ、さすが大名の家康の城だ。


ただ、難題は終わったあとにあった。

手が洗えないのだ。


この頃、当然ながら水道は無い。

代わりにあったのは、手桶の水だった。

そう。

誰が使ったかも、いつ替えたのかも分からない、桶の水。


忸怩たる思いだったけど、手洗いはしなかった。我慢した。

はい。ここも改善。尿意は無くす。

そもそもトイレまで作り込まなくていいんだよ。

ゲームなんだし……でもわたしとAIは、凄い。



そんなこんなしながら厠を出ると、控えていた女中に作業を続ける様に言って再び廊下を歩く。


すると、階段に出た。

上へ行くか。

下に降りるか。

んー、下は寒そうなので上へ行ってみる。


階段を上がるとすぐ、二人の武士が外を見ながら話をしていた。

例の如く、二人の頭上には『△』のアイコンが。


慣れた感じでクリックしてみると――


氏名:本多(ほんだ)忠勝(ただかつ)(19)

統率:69

武力:85

知力:57

政治:49

魅力:75


氏名:榊原(さかきばら)康政(やすまさ)(19)

統率:71

武力:79

知力:65

政治:57

魅力:70


うわあああああーーーー!

声が出そうになり慌てて口を両手で(ふさ)ぐ。

もはやアイドルに街中で出会ったおばちゃん状態である。


目の前にいるのは――

若き日の 本多忠勝と同じく19歳の榊原康政!!

戦国オタク脳が爆発寸前。


落ち着け、私。

今の私は7歳。

徳川家の姫。

はしゃいだら即終了である。


ふたりはまだこちらに気付いていない。

廊下の先、開け放たれた障子の向こうで城下を見下ろしながら何やら話している。


「東の動きが騒がしいとの報せがありましたな」

忠勝が低い声で言う。


若いのに声が重い。

声帯まで武力85か。


「今川の残党か、それとも武田か……」

康政が静かに返す。


知力65。納得。


うわぁ。

会話の完成度が高すぎる。

これ録音したい。

真紀は、今まさに五感フル体感だった。


ふと、忠勝がこちらに気付いた。

「……姫様?」


しまった。

子供らしく、子供らしく。


「おはようございます」

あ、普通に言ってしまった。


二人が一瞬顔を見合わせる。


やばい?

やばいのか?


「体調を崩されていたと伺いましたが……」

康政が膝を折る。


改めて――その動きが滑らかすぎてリアル。

これAIが生成してるの?

すごくない?


魅力50の笑顔をお見舞いしてみる。

どうだ!


忠勝が少しだけ目を細める。


んー、感情ログが見たい。

改善検討だな。


「外は冷えます。お戻りになられますか?」


いやいやいやいや。戻らん。

私は探索に来たのだ。

「いえ、少し城の中を見て回りたいのです」


二人がまた顔を見合わせる。


この沈黙はなんだ。変?

7歳が言うには生意気?


康政がやんわりと口を開いた。

「姫様はまだご静養中にございます。

万が一のことがあっては――」


すると、いきなり目の前に文字が浮かんだ。


―1. 大人しく部屋へ戻る

―2. わがままを言う

―3. 論理で説得する

ちょっと待て。3番ウケる。


うし。当然3番。

目力でクリック。


「ちちうえは、いま三河を治めておられます」

自分の口が勝手に動く。

いや、動かしているのは私だけど言葉が滑らかすぎる。


「ならば、城の様子も城下の様子も知っておくべきではありませんか」

あ。これ7歳じゃない。


二人の目がわずかに変わった。


―榊原康政 好感度 +3

―本多忠勝 警戒度 +2


あああああああああああ!!

数値出るんだ!最高!!


忠勝が静かに言う。

「……姫様は聡明(そうめい)にございますな」


警戒度上がってるけどな!


康政はふっと笑った。

「では、我らが付き()いましょう」


よし!護衛ゲット!!

城内探索スタートである。



階段をさらに上がる。

最上階へ。

足が短い。7歳にはちょっときつい。


最上階の見張り台に出た瞬間、冷たい風が吹き抜けた。


すると目の前に三河の大地が広がる。


遠くに流れる矢作(やはぎ)川。

朝霧が薄れ日が昇る。


リアル。

やばい。泣きそう。


忠勝が言う。

「いずれこの地を、より強きものに」


ああ。

この人は本気で言ってる。私は知っている。

この家は、最後に勝つ。


でも――

それは何十年も先の話。


その時、視界の端が赤く点滅した。




<1567年1月15日時点>

亀  姫(7)…統12 武 3 知68 政25 魅50

徳川家康(24)…統70 武72 知69 政70 魅82

本多忠勝(19)…統69 武85 知57 政49 魅75

榊原康政(19)…統71 武79 知65 政57 魅70

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