17 現し世【追加デバッグ】
私たち二人は、岡崎城まで戻っていったんログアウトした。
大きく息を吐きながらヘッドセットを外す。
「姉ちゃん」
「ん」
「ユーザー要望が二点あります!」
「はい、誠人くん」
誠人が目をキラキラさせながら此方を向いて言う。
「一つ目!」
「うん」
「イベントの選択肢、無くせないかな?」
「ん?」
「いや、イベントが起きた時にどうするかは自分で考えて、言って、行動したい」
「なるほど……」
ノートにメモる。
私は基本デジタル人間ではあるんだけど、メモなどの書くだったり、資料を読む、等はなぜかアナログの方を好む。
不思議だけど画面ではなく紙面だと、より客観的に見れるのだ。
「他は?」
「これは良し悪しなんだけど……」
「うん」
「ちょこちょこ出る表示……さっきの【観測者効果増幅】とか」
「うん」
「あれ、雰囲気が台無しなので、消せないかな」
「ふむ……」
正直私も思った。
ただ、現時点ではかなり大事なパラメータだったり表示になってる。
どうしようかな……。
「せめてさ、『!』みたいな表示だけにして、目力クリックすると見れる、みたいに出来ないかな」
「なるほど」
これは一理ある。
「アレがずっと出てるとそっちに意識が行っちゃってさ」
「うん、ぶっちゃけ私もそう」
「でしょ?」
少し考えて
「わかった。変えてみようか」
そう言うとPCへ向き合う。
「ただ、選択肢削除はAIフル稼働になるかもなので、ちょっとイベントの発生頻度も落とすね」
「いいと思います、先生!」
早速、AIと会話しながら設定とパラメータをいじり始めた。
その間、誠人は買い物袋から本を取り出して読み始めた
「何それ」
横目で見ながら聞く。
「あ、これね」
すると誠人は表紙を此方に見せながら教えてくれた。
「徳川家康の本」
「いまさら?」
「ふっふっふ。確かに今更なんだけど、この中身は超濃厚なのよ」
「?」
「例えば!」
ページをめくりながら言う。
「これ。三方ヶ原の戦い」
PCのモニタから目を離し開かれたページを見ると、そこには夥しい文字の数。
「すご……」
そこには、1573年1月25日に三方ヶ原の戦いが起きた事だけでなく、そこに参陣した武田、織田、徳川の武将名とその兵の数、推測の部分も多いけど時系列での布陣や戦況の変化など、詳細に記してあった。
「これは凄いねぇ」
「でしょでしょ?」
このゲームは、歴史を事細かく知っている方が絶対的に有利だ。
だってそのイベントに参加し、結果に作用するんだもの。
そして、目線をモニターに戻して2時間ほど作業を続けた。
「……よし。出来た」
「おお!」
「ちょっと休憩」
そう言うと、換気扇の下に行き電子タバコで一服する。
さて、これからどうするか……。
ゲームとはいえ、やはり築山御前をこのまま亡くすのは、たぶん私には無理だ。
このゲームは想定以上に感情移入しやすい。
普通に会話できるのはやはり大きい。
結局うやむやではあるものの、現実世界への影響は無くなった(はずだ)。
「よし」
一服終えてそう言うと、再びPCの前に戻る。
「正信」
「……はっ」
いいね。なりきってる。
「ははうえ、築山御前を助けます」
「ええーー!?」
「現実世界への影響は無いんだぞ」
「いや、確かにそうだけど……」
「正信、返事は?」
「……はっ。かしこまりました」
そう言うと、二人は再び椅子に座りヘッドセットを被った。
<1567年4月15日時点>
―歴史乖離率:3.7%
―安定化モジュール:通常出力
―現実世界アンカー不安定率:0.7%(無効化処理済)
亀 姫【真紀】( 7)…統12 武 3 知69 政26 魅51
本多正信【誠人】(29)…統38 武22 知63 政50 魅65
徳川家康(24)…統70 武72 知69 政70 魅82
築山御前(28)…統14 武 5 知46 政19 魅83
本多忠勝(19)…統69 武85 知57 政49 魅75
榊原康政(19)…統71 武79 知65 政57 魅70
空 誓(58)…統21 武 8 知74 政63 魅88




