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第七話 逃走

第七話 逃走

 それから毎日しんちゃんは、『飛魚』に朝から入り、洗い場からシャリ焚きと簡単なつまみなら作れるようになっていた。

「偉い成長早いなぁ〜」と言うと、

「大将が優しいからですわ」と、少し関西弁にも慣れて来たみたいだった。

 時々来る嫁も、髪の毛が黒くなっている。

 結構と言うか、かなり可愛いのだ。

アイドル顔負けだった。皆んな、

「あのアイドルより可愛いんぢゃね?!」とか言っていた。

 黒髪のショートカットが、おっさんらは名前が出て来ない、笑笑、可愛いアイドルぽかったのだ。

 それから、二週間経って、急に大将が店に来なくなった。

「大将どうしたの」と言うと、

「何かあったみたいです」と、しんちゃんは、まだ寿司が握れていないので、店には、兄弟店から応援の板さんが来ていて、自分もよくわからないと言っていた。

 そうこうするうちに、西宮の高級住宅街で盗難があって、億単位のお金が盗まれたとテレビのニュースでやっていた。

 実は、何とそこが大将の実家だったのだ。

 皆んな最初は知らなかったが、そこが大将の家だとすぐに噂がたった。

 どうもプロの犯行で、家族は誰も傷つけず、気がついたら盗まれていたと言う新しいスタイルだった。最新の強盗集団は、荒っぽい押し入りなどやらず、綿密な計画を立て、大昔の怪盗ルパンみたいに、鮮やかに盗んで行くのが最先端の連中だったらしい。

 大将はこれまで頑張ってい大阪で大金を稼いで来たが、嫁と次男が、お金が大好きで、店を少し無理して、拡張しているらしい。

 大将の長男はと言うと、何と北海道で学校の先生をしているらしい。親父と同じでお金に全く興味がないらしい。

 なので、店は次男と嫁が大阪で店をやって、気の合う長男も北海道に行ってしまったので、大将はこの街にひとりでやって来た。寿司を握って、酔っ払いを相手に遊んでいると言う訳だ。

「大将大丈夫かなぁ〜」

「大将なら大丈夫だろー」皆んな酔っ払ってはいるが、少しは心配していた。

 しんちゃんが、「大丈夫ですよ、大将ならきっと」と言って俺ら酔っ払いの酒の相手をしてくれていた。

 しんちゃんはそれほど悪い奴では無いと皆んな信じていた。

 しかし、店の卒業の三日前、しんちゃんも嫁も姿を消してしまった。復帰した大将も少し残念がっていた。

 それから一週間して大将はまだ店をやっていた。

「辞めるんぢゃなかったの」と言うと、金が無いからまた稼がなきゃと言っていた。

 それからまた一週間がたち、何事も無かったかのようにに土曜日が来て、店でいつもの連中と呑んでいると、警察がやって来た。

 大将は、そのまま警察官と一緒に出て行って、そのまま店を閉めて出て行ってしまったのだ。

 しょうがないので、自分たちは、隣の居酒屋で飲んでいると、テレビで西宮の強盗団が捕まったとニュースをやっていた。

「大将の家ぢゃね?!」と言うとまさしくそうだった。犯人は捕まり、悪そうな三人の男と、何としんちゃんの嫁がそこにいた。

 真相はこうだった。最初から、しんちゃんは騙されていたそうだ。

 関西には知られていない関東の有名な強盗団が、最初から大将の大阪の店のお金を狙っていたのだ。

 一年かけて資産を綿密に調べているうちに、店主が家族と揉めて、この街で別の寿司屋をやっていたのを知ったのだ。それで、足を洗いたいしんちゃんのお守りを取り上げ、店の前で騒ぎを起こして、何かのきっかけを狙っていたのだ。

 本人も願っていたし、足を洗わせ、カタギになる事を勧めて、寿司屋で修行をさせ、バレない様に色々と様々な話を聴き出していたのだが、しんちゃんが途中で気づいてしまったのだ。

 嫁が夜中にこっそり連中に連絡をしていたのだ。

しんちゃんは、それに気づき涙を流したが、大将の優しい心に、心を奮い立たせて警察に報告しに言ったのだ。

 まさか本当にやるとは思っていなかったが、悪い連中を散々見て来たしんちゃんは、ここで嫁も仲間も全てを警察に売ったのだ。

 それで警察の対応も早く、事件が解決したと言う事だった。

 そして、それを全て知ったのは、しんちゃんが亡くなってから、一か月後だった。


 続く〜

 

 

 

 

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