第六十九話 混ぜても混ぜなくとも
第六十九話 混ぜても混ぜなくとも
「お母さんは、福岡の人なの?!」
と、聞こうとしたが辞めた。
他人のプライバシーなど知ったこっちゃないし、偶然かき混ぜるのを忘れた可能性もあるからだ。
(もう一杯頼んで、博多割だったら聞いてみようか?!)とも想っていたが、沈んでいる丸男の前で急に笑顔になったので、
「どないしたんや、なんかええ事あったんか?!」
「いや、これ、博多割って言うねん、先に水を入れて、後からゆっくり上の方にウヰスキーを入れる。
中洲の飲み屋行ったら出て来るよ、普通の水割りの店もあるけど、好んで頼む人もいる。悪酔いする時もあるけど、俺は好き」
「そんなん、呑んでしまえば一緒やん」
「まあね、でも上等のウヰスキーの時は美味しく感じるよ。その時は水も上等がいいい、それより、東京行ったら新しい女出来るやろ?!」
「出来へんわ、かずみちゃん、一緒に来てくれへんかなぁ〜」
「行くわけないやん、お前とは行かんやろ」笑笑
「笑笑、誰が飲み代払とんねん」
「だったら呼ぶな」笑笑
「冷たいやっちゃのぉ〜」笑笑
「転勤断ればええやん、最悪仕事を辞めてしまえ、五十過ぎたから、勧奨退職もあるだろ?!」
「まあな、いつ辞めてもいいねんけどな、なんかムカつくねん」
「年金も早く貰えばええやん、この先どうなるかわからくなるし、俺は六十になったらすぐ貰う」
「まあな、制度的に減額される可能性もあるしな、憲法以外は、全ての法律変えれるからな、憲法違反にならなければ」
「最低限度の生活を脅かされなけば、減額は可能ってか?!」
「それは辛いのぉ〜」
話は、どんどんズレて行く、酒呑み同士の会話では良くある事だ。
「かずみちゃんの事、本気ぢゃないやん、ええ感じの女友達か?!」
「別に、友達でもないわ、早苗ちゃんの友達だろ?!」
「まあ、でも彼女は別嬪やん、背も高いし、格好イイ」
「付き合ってくれと言われれば、しゃあなしに付き合ってやるけどな」笑笑
「しょうがねぇ〜な〜」
丸男との馬鹿話も、繰り返しになって、しょうもなくなって来た。
「梅田行くか?!」
「明日行こう、今日は帰って寝る」
「そうやなぁ〜 俺も早苗ちゃん待ってるし」
「いっちゃんは、幸せなやっちゃの〜」
「結構苦労してるぞ」笑笑
水割りを頼もうとしたが、おかんは帰っていなかったので、丸男が会計して、居酒屋から出て来た。
阪急電車に乗ると、ありきたりだが、松本零士氏の漫画を思い出す。
登場人物の中で、目が光る車掌さんが落ちこんでいる時みたいに、今日の丸男は小さく見えた。それと、最近、緑のシートをあまり見なくなったのは何故だろう。
皆んなどんどん年寄りになって行くのに、これから自分自身は就職するのかと思うと、気分は落ちこんで行く。
しかし、丸男はまた、明日は元気になって酒を飲みに行くだろう。
(明日、明日) 丸男が良く言うセリフだった。
お化けアパートに帰ってきた
早苗ちゃんはテレビを観ている。
「またコントやってんの?!」
「うん」
と、早苗ちゃんはお笑い好きだ。
すぐ泣くくせに、お笑いも大好きだった。
続く〜




