第六十五話 夢のナイト(騎士)と300円のラッキーくじ
第六十五話 夢のナイト(騎士)と300円のラッキーくじ
その夜、倉庫に行った。
早苗ちゃんは相変わらず、安物の商品の梱包だって丁寧にしている。安物だって大事だ。
買って貰っているし、利益が千円であっても次の送料代が浮く。
今日は黙って、淡々と二人とも作業をしていた。倉庫の奥に、和風の草履や帯が出て来た。相変わらずの品のある商品だ。
ノーブランドだって馬鹿に出来ない。大手の百貨店の伝票とかも入っている。
「凄いわねぇ〜 お金持ちの人への送り物
って、ブランド品だけぢゃないのね、品があるわ」
「うん、品物良いでしょ、仕立て用の生地だけだって、自由に仕立てが出来るような無料券もついている。自由に作ってくださいって凄いね。自分らは売ってる完成品とかしか知らないからなぁ〜」
「そうね、お医者様だったっけ?!倉庫のオーナー」
「うん」
「なんか、感謝の気持ちを感じるわね」
そんな話をしている時に、
いっちゃんは、和風コーナーから古い和風のハンドバッグを見つけた。
「これ!」
「なあに、お宝?!」
「いや、ただのノーブランドのビーズバッグ、和服にも洋服にも合う、そう言えばもうすぐ卒業式が来るし、その後、入学式かぁ〜」
「ん、それがどうかしたの?!」
「いや、想い出と言うか、後悔と言うか」
「なによ?!」
「このバッグ、ばあちゃんに似合うなぁ〜と想って」
「えっ、」
「小学生の頃、自分は、ばあちゃん子でさぁ〜 親に怒られたら、いつもばあちゃん家に行っててさぁ〜 ハイカラなばあちゃんで、博多の街をブイブイ言わしていたらしい。オシャレして、いつもじじいのバイクのサイドカーに乗っていたんやて」
「へ〜」
「ばあちゃんは、明治生まれだよ、当時、マジなハイカラさんだったんだね、晩年は田舎に帰って来て、一人で暮らしていたけど」
「ふうん、で、そのおばあちゃんがどうしたの?!」
「俺が、酷いことを言っちゃったのさ」
「なんで?!」
「大学生になって里帰りした時に、親父とばあちゃんが喧嘩していてさぁ〜 悪い噂ばかり聞かされて、母親が特に、俺に悪口吹き込んでいて、久しぶりに会った時に」
「会った時に?!」
「あんた誰?!とか言ってしまったのよ」
「は?!」
「いちは、今、神戸におると?!」
「知らねぇ〜、とか言ったらさぁ〜」
「そがんに言わんでよかぢゃん」
とか悲しい顔で言われて、
「それっきりさ、葬式も行かんかった」
「なんで、おばあちゃんに良くしてもらってたんでしょ?!」
「うん、まぢで後悔してるよ、で、ビーズバッグが、そのばぁちゃんに似合いそうだなぁ〜と想ってたんだよ」
「馬鹿ねぇ〜」と早苗ちゃんは相変わらず涙目になっていたが、
「いや〜 年寄りが言う、後悔先に立たずかなぁ〜?!誰かにこれ使って欲しいなぁ〜 値段安くして、おばあちゃんか、お母さんにプレゼントして欲しいな、卒業式か入学式に来て貰って」
「供養のつもり?!」
「うん、おばあちゃん子の子供とか、お母さんに迷惑かけてる子とか、お金ない人に」
「自分自身貧乏だから?!」
「うん」
「買ってあげたくても買ってやれない人もいるんぢゃね?!」
「子供が、お小遣いで買えそうな値段とかで?!」
「300円にしようか?!」
「えっ?!商売何処かマイナスね」
「子供でも買えるし、貧乏な大人でも買えるしさ、卒業式とか入学式って、綺麗な格好して欲しいんよねぇ〜 ばぁちゃんに来て欲しいな」
「いっちゃん」
と、早苗ちゃんは、ひと呼吸置いた。
「私ね、あなたのそういう所、大好きよ、でもね、物書きをやるくらいだから、なんて言えばいいのかなぁ〜夢と希望の世界に生きているのはわかるけど、まずあなたが真っ先に立ち直るべきなんぢゃないの?! 少ししっかりしなさいよ、たぶんおばあちゃんもそう想っているわ」
いっちゃんは、黙ってしまった。
続く〜




