金の箱
第五十七話 金の箱
早苗ちゃんとの倉庫の冒険は毎晩の楽しみになっていた。
いっちゃんも今までの事を反省して、平日はお酒を飲まないので、晩御飯を普通に食べていた。最初は、酒呑みに晩酌がないなど、考えられない地獄だった。
「何で最初から米とか食わなあかんねん」とか、早苗ちゃんには、よう言わんかったが、笑笑 心の中では思っていた。
(夕方酒飲まないなんて阿保やろ?!狂ってる)とか最初は思っていたが、就職さえ出来れば酒も呑めるはず、とか自分自身で慰めながら苦しんでいたが、人間は慣れるものである。
むしろ酒飲まない方が、夜は楽しくなって来るのだ。
夜風や、何となくの自由な時間。たぶん、日本の国も貧しい時代は、庶民は蝋燭の横で本を読んだり、家族みんなで、今日あった事のお話をしたり、夢や想像の話を語りあっていたのではないだろうか!!
いっちゃんも最初の一週間はなんだかなぁ〜と思っていたが、早苗ちゃんと夜に倉庫に行って、出力の弱い電気ストーブをつけて、二人でお宝を探しながらの撮影をすると、思いっきし多幸感を感じる事が出来るのだ。酒もイイがしかし、
ジェミニっ子が書いた文章を直しながら、「売れたらいいね」とか言いながらの静かな倉庫の中での毎晩のデートは、良く芸能人とかが良くするエピソードで、
「昔は売れる前ねえ、二人で苦労しましてん」みたいな感じで楽しかったのだ。
予想外のものが売れたり、売れると想ったやつは売れない。と、そんな感じは、結構楽しかったのだ。初めての一週間は好調で毎日良く売れたが、この二、三日、売れなくなって来たのだ。
「商品がありきたりっちゃあありきたりやもんなぁ〜、なんか一発逆転が欲しいなぁ〜」
「贅沢いっちゃ駄目よ、ここの倉庫の商品は、高級品で殆ど使ってないわ、お金持ちの人達のやりとりって、ちゃんとした商品なのね」
事実、良い商品だらけなのだった。例えば、お礼で品物を渡す時に現金が渡せない立派だとされる職業の人には、心を込めて高価な商品や、気持ちの伝わるお品をお渡しするのだろう。しかし本人が亡くなった場合や、必要がなくなった場合、家族の第三者にとってはそれほど価値はない。
いっちゃんの母親なんかも、親父の遺品や、残してくれた家や土地、高級な釣り道具など全く興味がなく、売っぱらってすぐに現金にしようとか平気で言うし、本人にとっては大事なものでも、第三者は興味がない事も多かったのだ。まさにお金持ちの倉庫もそんな感じだった。それとマルカリなら大事に使って貰えそうとも想ったかもしれない。なので、早苗ちゃんは、そういう気持ちで丁寧に梱包もしていたのかも知れない。
「早苗ちゃん、梱包丁寧にやり過ぎぢゃね?!」
「駄目よ、大事に使って貰いたいから」
ある意味供養なのかも知れない。大事に使って貰いたい気持ちは伝わるみたいで、早苗ちゃんが送ってくれた商品には、感謝の気持ちのメッセージが良く来ていた。
「ねえ、意外と楽しいわね、商品を生き返らせるというか?!」
「早苗ちゃんってさあ、俺よりロマンティストぢゃね?! まあ気持ちはわかるけど」そんな事を話していると、なんか珍しいものが出て来た。
いっちゃんは黙ってしまった。
「何これ?!」
「ケンタウロスやん」
「ちょっと早苗ちゃん、奥の部屋の扉開けて、ギターないか探してみて?!」
「えっ、鍵がかかっているわよ」
「鍵はこれ開けて」
早苗ちゃんが扉を開けて電気を付けると、隠しのギター部屋が現れた。
続く〜




