第五十五話 金がねぇ〜
第五十五話 金がねえ
就職活動は最悪だった。
しかも金がねぇ、事実金がないのであった。
旅行の為に、スロットで買った分は全部使い果たし、毎月の支給額にタイメー乗っけても足りないのであった。親父が死ぬ時に借金をしてしまったのだ。親父の家は、前も書いた通り複雑過ぎて面倒なのだった。
せめて、親父が生命保険をかけてくれていたら良かったのだが、しかし、そんな事はもうどうでもいい。親父の生き方は否定しない。ただ早苗ちゃんに迷惑をかけたくなかったのだ。最低限の生活をしながら、とりあえず就職をしなければと焦っていたのだ。万枚出したってもうスロットはやらなかった。負けるのがわかっていたからだ。これからは、タイメーギリギリまでやって、不必要なものは、マルカリで売る事にした。ここに来て、漢のプライドなど全く要らなかった。ギターも売った。エレキヴァイオリンも売った。ブルースハープも売ったが、ブルースハープは気のいい外人が買ってくれた。吸いまくって半音下げたりする楽器に日本人は、余り買わないだろう。
洗ろたらしまいだが、嫌がる人間も多いだろう。
「大事にするよ」の日本語メッセージは売れしかった。英語でやりとりしていたが、最後は日本語でくれた。
楽器はまた買えばいい、就職の為には、色々と金もいるのだ。シャツだって綺麗なやつがいるし、ネクタイも替えたい。交通費も馬鹿にならないし、就職活動で有休の認定降りるのも結構大変なのだった。
(なんで俺が落ちるねん)
「だから、あたしを頼ってよ」と早苗ちゃんは言っていたが、ちょっとムキになっていたかも知れない。
「なんか、痛々しいよ」と早苗ちゃんは言い出すようになってしまった。
「うるせえなぁ〜 俺はヒモぢゃねえよ」と普段のいっちゃんからは、想像出来ない行動も出て来た。
就職で苦労なんか今までした事がなかったのだ。バブル期の世界とは全く違っていたのだ。年収四百五十万円や、ボーナス四カ月でドヤ顔顔される。冗談ぢゃなかった。いっちゃんの時代では、四十代でも六百万越えだったのだ。ボーナスも五か月超えていたのだ。何を言ってんのか分からなかった。日本の経済狂っているとしか言いようがなかった。
「明日、学校の先生とじっくりと話をしてみるよ」
いっちゃんも少し冷静になって来た。今日のいっちゃんは、おかしいのは自分でもわかっていた。
「そんなにムキにならないで、一年や二年食べさせてあげてもいいって、あなたを信じてるから言っているのよ、二人で協力すれば良いんぢゃないの!!なんの為にお父さんに会いにタイに行ったのよ!!」
いっちゃんは、少し感に触りながも早苗ちゃんの優しさが、身に染みていた。
「そうだね、ごめん」血の気が一気に引いて来た。なんか、正直になれなかったのだ。正直である。真っ当に生きると想いながらもどこかええ格好しいの所があったのだ。そりゃあ、プライドもあった。俗物まみれだった。
もう一度リセットしなきゃとか、偽善者みたいな事は言いたくなかったが、そうせざる得なかったのだ。早苗ちゃんに親父の為に作った借金や自分自身の女に入れ込んだ借金がまだ残っている事を正直に言った。若い頃に比べたら少ないもんだが、失業手当とタイメーなんかでは、返しながらの就職活動は地獄だったのだ。それをわかってくれている丸男はいつも黙って呑み代を払ってくれていたのだ。
「了解したから、ちゃんと落ち着いて就職活動してね」と早苗ちゃんに言われて、
「ありがとう」と言った。
続く〜




