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第五十四話 不快

第五十四話 不快

とうとう今日から学校だ。

早苗ちゃんも会社に行った。

いっちゃんもとうとう弁当持ちになった。

学校に売りに来る弁当は、日替わりで売りに来るが、ろくな弁当はなかった。飯が少ないのだ。明らかにぼったくりの業者もいてウンザリだったのだ。なかには美味しい良心的な店もあったが、学生を舐めた悪質な業者もいた。なのでカップラーメンばかり食べていたのだ。

「山谷さん、今日は弁当ですか?!」と学校の友人達が言って来た。

「うん、彼女に作ってもらった、節約も兼ねて」と言うと、

「彼女って奥さんいないのですか?!」

「昔の嫁は出ていったよ」と少し黒歴史が出たが、昼休みのざわざわが、かき消した。学校には新しい学科が出来ていて、久しぶりの学校で嬉しいのか知らないが、必要以上に騒いでる婆あ達がいた。

 せっかくの早苗ちゃん弁当が台無しになるので、とっとと食べてタバコを吸いに行きたかった。そもそも同じ科の学生も、話しが面白くないのである。

 ドロップアウトしてここに勉強に来ているのだから見栄張るなと言いたかったが、くだらん自分の知識の技術力の話しを、遠回しに自慢したりする奴や、全く喋らない挨拶もしない奴もいた。糞可愛い毛ない奴も多かったのだ。

 危害は加えて来ないが、不快は加えて来るのである。プライドの高い馬鹿ほど面倒かった。早苗ちゃん弁当の件を聞いてくれた学生は良い奴だったが、その学生もいっちゃんと同じ事を言っていた。

 所謂落ちぶれたプライドの高い、傘張りも出来ない浪人がうちのクラスで、新しい学科の学生は陽気な江戸庶民みたいな感じで少しだけ羨ましかったのかも知れない。

 早苗ちゃん弁当を食べて、タバコを吸いに行った。そこは情報交換が出来た。

「就職はどう?!」の会話が出来る。

それに、時々可愛い娘が来たのだ。グラフィックス系の学科の女の子だった。

 デザインの話しも色々と教えて貰ったし、いっちゃんの小説の表紙のデザインのアドバイスもしてくれたのだ。会話友達で、年齢も早苗ちゃんより若いので、恋愛なんかにはならないが、若い女の子と会話するだけで、シャキーンと生き返るのである。

「彼女さんと旅行に行ってたんですか?!」

「うん、タイに行って来た、面白かったよ」

「良いなぁ〜 就職活動で忙しくて何処にも行けないですよ」とか言っている。

「就職決定したら、行って来れば?!」

「そうですね、イタリアに生きたいな」

と楽しい会話は進んだ。

(この子にもカレンシルバー買えば良かったかな)と一瞬助平心が浮かんだが、笑笑

彼氏がいるみたいなので、会話して貰えるだけで十分だろう。それに、昼休みは短かった。タバコ一本吸って会話して、もう一本吸って会話して、終わりくらいだった。すぐに授業が始まる。

「小説の表紙出来たら送ってくださいね、観てみたいです。それじゃあ」と言って彼女も授業に向かった。

 いっちゃんは、歌うたいと文字は書けるのだが、絵は全く描けなかった。

 なので友人のイラストレーターに丸投げだったくせに文句は言っていた。笑笑

 友人と言っても音楽家としては、年齢も技術力も大先輩だが、優しい人にアグラをかいて、直しを何回もやって貰っていたのだ。

 特にAmazonで発売する時は文句ばっかり言っていたが、その先輩のデザインは格好イイのである。デザインの事はわからないが、唯一無二な絵を描いて、絵を描けない、いっちゃんですらもわかったのだ。

違った意味の無知の知だった。

 (自分自身の絵の才能は無いが、この人の絵の才能が飛び抜けて良いのはわかる的な?!)

 

そして、いっちゃんも、授業に間に合うように、教室に戻って行った。


 続く〜

 

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