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第五十話 ウヰスキー

第五十話 ウヰスキー

バスの中で完全に眠っていた。

 横に早苗ちゃんがいる事もすっかり忘れていたのだ。阪神高速を降りてルート四十三に入ったくらいに目が覚めた。なんか尼崎の感じが伝わって来たのだ。少しのざわざわ感に安らぎを感じる。少しうるさいくらいが良いのだ。尼崎は危ない街だと思われているが、実はそうではない。三十年前とはもう全然違う。阪神尼崎は上品なのである。

 ここで(え〜っ)とか言われそうだが、笑笑 昔は、場所は何処とは言わないが、ポリボックスの中で警察官と格闘している連中や、暴れている連中など、しょっちゅう見たが、今はそんな事はない。

 阪神電車でワンカップとタバコの人達ももういない。ニューヨークと同じ名前の公園でも、アル中の人はもういないし、勝手にブルーシートとダンボールの住宅もない。昔はそれが嫌いではなく、逆に寂しい。いっちゃんの良く行くバイトも先も常識が通用する。笑笑 当たり前だが。

 ただ何というか、薄れたとはいえ、義理人情は残っている。時々阪神電車の商店街の立ち飲み屋とかに行きたくなる。

 つい来ないだ立ち飲みに行ったが、買い物帰りのおばちゃんがひとりで来て、二杯くらい呑んで帰って行った。変な人ではなく普通のおばちゃんだ。そういう光景は心地良すぎて、時間が止まって欲しいと想う。買い物籠を持っていたので、買い物途中か、これから帰るのかは知らないが、幸せな家庭があるんだろうなぁ〜と想像すると、酒のアテになるのである。


バスは阪神尼崎に到着した。これから更にバスに乗って、尼崎のビバリーヒルズのお化けアパートまで帰えるのだ。

早苗ちゃんもぐっすり眠っていたので、お互いバス停まで行くのはしんどかったが、十五分くらいなので、何とか走って間に合った。

「今日は泊まって行くわね、しんどいから、変な事しないでね、疲れているから」

「動物ぢゃあるまいし、嫌ならしねえよ」

と言うと笑っていた。


 地元に着いて、とりあえず家にかえる。

早速、晩ご飯を食べに飛魚へ行く。

もちろん、両手にはお土産でいっぱいだ。

 飛魚に入ると満席だったが、常連が、

「おう、いっちゃん帰って来たんか?!もう帰るわ」と、テーブル席を開けてくれた。その人達にもドライフルーツを渡す。

「おっ、大麻グミか?!合法やろな?!」

と言っている。

「それ食べながら一発やったら、天国に行けるぜ」と言うと、

「おう、今夜試してみよ、またな!いっちゃん」と言って帰っていった。

 カウンター席から、かずみちゃんと丸男がやって来て、

「おかえり、ハネムーンは良かったか?!」

「まだ、ハネムーンは行ってねえよ」と言うと、かずみちゃんが早苗ちゃんに、

「お父さんに会えた?!」

「うん」と早苗ちゃんは答えた。

「マスター、日本酒、二合二本」と言うと、マスターが、

「いっちゃん、いよいよ結婚か?!」

「就職してからな!!」と言うと、

「おう、いよいよ覚悟を決めたか」

と店長が言った。

 常連客もええ感じでこっちを見てくれた。

 それから丸男とかずみちゃんと、テーブルを囲んで呑み出した。

「ああ、お土産があるぞ」

「おお、ウヰスキーか?!」

「なんでわかるん?!」

「ワンパターンんやないか!」

「要らんのか?!」

「要るに決まってるやん!!」笑笑

 丸男は、イチローとかも呑むウヰスキーに目がないウヰスキー好きだったのだ。


 続く〜

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