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第五話 しんちゃん

第五話 しんちゃん

 また週末がやって来た。

 十時半にはLINEが飛んで来て、『飛魚』と書いてあった。

「しょうがないなぁ〜」と言いながら、駅前に向かうのである。

 店に入ると、まいどの顔触れがいた。

良く奢ってくれる一応親友の丸男がいた。何で丸男と言われているのかわからないが、そう呼ばれている。

 彼も独身で、尼崎ではボンボンだ。

 自分より一個下なので、自分は時々『兄貴』とか呼ばれている。

「兄貴学校行ってんのか?!」とか聞いて来た。丸男は現場のエンジニアを経て今は管理者になってデスクに座っている。

 仕事が面白くないらしい。いつも酔っ払っている。

「俺も昔はシーケンサーを持って現場に出かけて行ったんだよ〜」とか言っているが、週末は酒浸りだ。

 駅外れのスナックのおねいちゃん達にいっぱいお金を払っているが、何故か誰とも付き合わないのだ。

 丸男の昔の彼女も知っているのだが、何故か丸男は冷たかった。良くわからない。

 成就しない飲み屋のおねいちゃんとビフォーアフターを山程やって、誰とも付き合わないのだ。

 今日も相変わらず、二人でくだらない会話をしていると、若いにーちゃんが、入って来た。

「あれ、あんたもしかして」

 来ないだの喧嘩のにーちゃんだった。

「すみません、来ないだ自分、その辺にお守り忘れてなかったですか?!」と言うと、大将が、

「あるよ」と言ってお守りを渡してくれた。紫色の普通のお守りだった。

「ありがとうございます、良かった、母親がくれたんです」と言っていた。

「あんた名前は?!」と大将が聞くと、

「山﨑新之助です、宜しくお願いします」と言うので、丸男が、

「まあ、いっぱい飲んで行けや」と新之助を誘った。

「良いんですか?!ありがとうございます」と新之助はお礼を言った。

 厳つい顔をしているが、妙に礼儀正しかった。

 それから、喧嘩の原因を聞くと、本職の誘いを断ったのが原因らしい。チンピラ時代が長くて、やっと正式な組織に入れそうだったが、ある事が原因で心底嫌気がさしたらしい。それで、縁を切って関東から逃げて来たのだが、見つかったと言う訳だ。

 その後、今度はキッチリ縁を切る事が出来たらしいが、する事もなくぷらぷらと、知らない関西圏を徘徊していると言う訳だ。

「どうせなら、大将に弟子入りしたらどうだ?!」と自分が言うと、

「えっ、いーんですか?!、お願いします」と大将が返事する間もなく、

「いつから来たら良いですか?!」とか言い出した。

「何を無茶な事を言ってるんだ、弟子は取らねえよ」

と、最初大将は言っていたが、直立不動で頭を下げるその姿に、最後は、

「わかった、最初はバイトで給料安いぞ」

 と了承してくれた。それからこっちも向いて、「兄貴も丸さんも宜しくお願い致します」と頭を下げた。

「兄貴ぢゃねえよ、いっちゃんで良いよ」

 と自分が言うと、

「いや、前回助けて貰ったし、いち兄さんと丸兄さんですね」と気合いと若さでこっちが圧倒されてしまった。

「なんか、丸兄さんって笑っちゃうなぁ〜」と丸男が言うと、

「いえいえ、兄さんお願いします」と言っていた。それから、新之助がトイレに行っている間。

「大将、給料払えんのかよ?!」と自分が言うと、

「来月でこの店辞めんねん、ここで働いた後は、別の寿司屋を紹介してやるよ」と言っていた。

「まぢかよ、寂しくなるやん」

「いや、もう疲れた」と大将は急に真面目な寂しい顔になってしまった。


 続く〜

 

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