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第三十四話 タイのかに道楽

第三十四話 タイのかに道楽

山の方へタクシーは向かった。街頭が消えて真っ暗な道を進む。

 (こんな所に、店あったかなぁ〜)と思いながらタクシーは進む。一部道路も舗装されていない。

 しかし、しばらくすると、派手なネオンが見えて来た。良く見ると、デカいカニのオブジェが見えてピカピカ光っている。

「かに道楽やん」と言っちゃんが口走ると、早苗ちゃんのお父さんも、

「そうでしょ、そっくりでしょ」と言った。早苗ちゃんも「えーっ」とか言っていたが、評判のお店らしい。

 なんなら満員で入れない事もあるらしいが、出発の直前に、お父さんが確認して予約してくれたらしい。

 凄い数の人だった。良く予約が取れたなぁ〜と思いながら、手前のテーブルに入れて貰った。

 何やらタイ語でお父さんは店員と話をしている。アロイとコップンカーくらいしか自分はわからないが、流暢なタイ語で注文を取ってくれた。

「山谷さんはハイボールで良いですか?!」さっきバーでハイボールを頼んでいたのを見ていてくれたのだ。

「早苗は何にする?!」

「私もハイボールで」早苗ちゃんも少し落ち着いて来たみたいでリラックスし始めて来た。お父さんは焼酎が好きみたいだったので、ハイボール二杯と、焼酎はそのまま日本語で、焼酎麦とか言って注文していた。

「何を食べようか?!」とお父さんが聞くので、

「いやあ、何でも良いですけど、トコブシとアワビの中間みたいな奴と、シャコとエビの中間みたいな奴が食べたいです」と言うと、

「なーんや山谷さん、知ってるんや」

「いや、この店は初めてですけど、他の店で食べた事があります」と言うと、

「何?!遊び人同士、気が合うんぢゃない?!」と早苗ちゃんに言われてしまったのだ。本当は何も知らないテイでいこうと思ったのだが、向かいのテーブルの白人のおっさんがテーブルにトコブシアワビを山盛り積んで美味そうに食べていたので、ついつい注文してしまったのだ。未だに何て名前なのか知らないが、絶品なのである。

 それに、シャコエビもめちゃくちゃ美味い。日本ではシャコはにぎりの間で一個だけ食べたりするが、箸休めで食べるだけで、実はそれほど美味くはない。

 けれど、タイのシャコエビは死ぬほど美味いのである。前での先輩とタイに来た時に、

「めっちゃ美味いっすね」とバクバク食べていたら、

「俺のもたべぇや」と先輩の注文した分まで食べてしまった事があったのだ。この二つは抜群に美味い。タイに来たら是非食べるべきである。

 早苗ちゃんのお父さんはその二つと魚を頼んでくれて、もう一度乾杯という事になった。

「乾杯!!」と少しだけさっきよりは緊張感も取れて和やかになって来た。

「山谷さんは、郵便局?!」

「ええ、でも退職して、ハローワークの学校に行ってます。

「ビルの資格とか?!」

「いえ、そっちでも良かったんですが、一度プログラムの勉強をやってみたかったんです」と言うと、

「今から?!」

「はい」

「大変だね」

「ええ、まあ、でも、上流工程は大学で少しやっていたので、SEで会社は内定貰いました」

「へえ、で?!Pythonとか?!」

「いえ、最初っからPythonだと、なんかあった時に何も出来ずに困るし、Pythonやってる人、山程いるので、ここに来る意味がないという先生達の方針で、Cからやって、アセンブリと最後はLinuxですね。

「キツイねぇ〜 それ、失礼やけど、若く無さそうなのに、しかも7か月でやるの?!」

「はい、授業は地獄です」と言うと、早苗ちゃんが、

「お父さんはエンジニアなのよ、今は上流工程の管理者だけど、下流工程も出来るわ、アセンブリは特に強いわ」

 (やってもた〜 これは知ったかしたら、出来ないのもうモロバレやん)といっちゃんは、冷や汗が流れて来てしまった。


 続く〜

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