第三十三話 再会
第三十三話 再会
夕方、ホテルでまったりしながら、早苗ちゃんに続きを聞こうとしていると、なんと、お父さんから電話がかかって来た。今から会えると言う。
「なんか緊張すんな」といっちゃんが言うと、
「なんで緊張すんのよ、あたしの事好きなんでしょ、しっかりしてよ」と言う。
「お、おう」と、言いながらも、自分がおっさんというのは、いっちゃんでもやはり少し引け目を感じるのだ。
早苗ちゃんはまだ二十代後半だ。
最後とは言わないが、最高の売り時だ。
コンプラなんか知ったこっちゃ無いが、女性が一番美しいのはこの時期なのは事実だろう。なのに、このおっさんで良いのだろうか?!とやっぱり悩むのである。
怒られても良いが、お父さんの最初の表情を想像するとつらいものがある。
しかし、(あたしの事を好きならしっかりしてよ)と言われるのなら、早苗ちゃんが自分の奥さんになってくれる、と言っている様なものかもなので、ここは、いっちゃん頑張って、
「わかった、ちゃんと挨拶するから、男のケジメをつけるよ」と言って、やる気満々になって来たのだ。
が、しかし、何故かその時、ちょうどいっちゃんの携帯にも、キャバの夏子ちゃんからLINEが飛んで来たのだ。
「ねえ、何処にいるの?!そろそろお寿司に連れていってよ」と携帯の上の方にLINEメッセージが読み取れた。
(あちゃ〜)と思ったが、すぐに早苗ちゃんに、
「後で携帯見るからね」と言われてしまった。
「わかったよ、とりあえず行こうか?!」と、ホテルのタクシー乗り場に行って、あたり前のように、“ウォーキングストリート”までタクシーを飛ばした。
ウォーキングストリートは一日中、一晩中賑わっている。夜の方が家族連れは目立つ。もう大昔みたいに買収街ではない。親子連れがいっぱいいるのだ。
その中を通って、小洒落たバーに入った。喧騒の中では落ち着いたバーだった。
「いらっしゃい」と日本語が飛んで来た。
品のあるママと、日本人のちょっとゴツい男性がいた。
「こんばんは」といっちゃんが言うと、
「こんばんは」と優しい口調でその男性に言われた。
「お父さん、久しぶり」と早苗ちゃんが言うと、ちょっとお父さんは涙目になっていた。その瞬間、早苗ちゃんも泣いてしまった。本当は二人とも会いたかったのだろう。いっちゃんと早苗ちゃんは、何故かお父さんを挟む形でカウンターに座ってしまうと、ママが、
「テーブルに移って」と奥のテーブル席を開けてくれた。
「初めまして、山谷一生と言います。いっしょうとか呼んでください」と言うと、
「早苗の父で亮と言います」と自己紹介してくれた。たぶんそんなに年齢は変わらない筈だった。けれど、お父さんはそんな事に触れずに、
「娘がお世話になっています」と言ってくれた。それから早苗ちゃんとお父さんは近況を話始め、いっちゃんは、ほっちっちになっていたが、頃合い良く、
「山谷さんは、海鮮料理好きですか?!今から行きませんか?!」と言うので、
「是非お供します」と気合い入って答えると早苗ちゃんも
「あたしも行きたいわ」すっかり元気になった早苗ちゃんも答えた。
それから、タクシーを捕まえて、山の方へと向かった。
続く〜




