第三十一話 早苗ちゃんのお母さん
第三十一話 早苗ちゃんのお母さん
ここで、早苗ちゃんのお母さんの話をしておく。
早苗ちゃんのお母さんはとても優しくて、そしていつも楽しそうにしていた。
早苗ちゃんに、昔の家族の事を聞くと、みんな仲が良くて羨ましかった。
いっちゃんの家族みたいに、喧嘩ばかりというような事はなかったのだ。
ごくごく普通で、お母さんが早くに亡くなるまでは。
お母さんは、早苗ちゃんが、中ニの頃に亡くなってしまった。一番多感な時だ。
真面目な早苗ちゃんにだって反抗期はある。それまで仲良しだったお母さんにも嫌味を言う事もあったという。その反抗期も中二の後半には無くなるのだが、無くなる寸前、お母さんの病気が発覚した。
かなりの難病で、打つ手は無かったらしい。発覚して一年で亡くなるのだが、最期までお母さんは優しかったらしい。
お母さんが亡くなる一カ月前には、もう毎日早苗ちゃんは泣いて暮らしていたらしい。
早苗ちゃんにはお兄ちゃんと弟がいたが、お兄ちゃんは高校生でもしっかりしていたらしい。
むしろ今まで亭主関白のまんまのお父さんが、毎日泣いていたらしい。
お母さんの支えがどれだけ家族の支えになっていたか初めて知ったらしい。
女の人は強い。それに、お父さんをいつも立ててくれていたらしい。
そもそもお父さんも優しい人で、なんちゃって亭主関白だったのだ。五人家族の一番の大黒柱はお母さんだったのだ。
お母さんが亡くなって、早苗ちゃんはお母さんの代わりをやる事になった。
受験もあるので、部活を辞めて主婦業と受験勉強に専念する事になった。
しかし、お父さんは、外に呑みに行く様になってしまったのだ。
もちろん家族には迷惑かけるほどではないが、お父さんだけが、夜いなかったのだ。そうなると、「親父何やってんねん」になってくるのだ。
元々掃除も洗濯も親父はやってなかったが、お母さんがいない今、早苗ちゃんだけが家事はしんどい。
なので自分の洗濯物は自分自身で洗濯して干してたたもうと言うルールになったが、お父さんだけがやらないのである。
最初は早苗ちゃんが代わりにやっていたが、だんだんうざくなってくるのである。
「ねえ、お父さん、自分の洗濯物くらいは自分でやってよ」と早苗ちゃんは言ったが、
「何で俺がやらなあかんねん、家事は早苗の仕事だろ!!」と言うようになってしまった。確かにお父さんはお金を稼いでくるのだから、最初は普通にやっていたが、お酒に溺れ始めたお父さんの事が嫌いになって来ていたのだった。
お兄ちゃんも「まあ、しゃあないやん、時々俺がやるよ」と言ってくれたが、段々と嫌いになっていったのである。
早苗ちゃんもまだ中三だったし、まだ反抗期を抜けたばかりだし、家の中は昔と違って寒々として来たのだった。
しかし、ここでまた、お父さんに彼女らしき女のひとが出来たみたいだったのだ。
実際はただの飲み友達だったらしいが、女性だと、早苗ちゃんとしては、ムカつくだろう。お母さんが亡くなって、半年しか経っていまかった。それにこれには、流石にお兄ちゃんも弟も嫌な気分になったらしい。そして、その女の人は、少し下品だったのだ。お酒カラオケ大好きな少しぽっちゃり系だったので、女番長的な?!
早苗ちゃんのお母さんは、細身で決して美人ではなかったけれど、品のある人だったのだ。何処で知り合ったのかはわからないが、一緒に商店街を飲み歩いている姿を見かけた早苗ちゃんは、お兄ちゃんと弟に報告して、段々と家族の和が崩れてしまいそうな予感がしてしまったのだ。
続く〜




