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第二十九話 路上の海上

第二十九話 路上の海上

 がっつりとスタートしたが、目的地を考えていなかった。

 まっ、とりあえずは、適当に走ってみようと思ったが、そんなのんきな流れではない、朝の八時過ぎなど未だに通勤ラッシュの時間帯だ。

「しかし、思ったよりヤバイなぁ〜」といっちゃんは心臓がバクバクしていた。

 後ろに早苗ちゃんを乗っけているので、アルコールは御法度だ。周りのタイ語の看板を見ても、なんのこっちゃわからない。なるだけ英語の看板や、英語の交通標識を読むようにしたが、タイ語が目に入り過ぎて全然わからないのだ。とにかく前に進んで、デカい流れに乗っかる事にした。

 バイクの爆音と、車の無茶な運転でビビりまくりだったが、何とか前方に進んだ。

 早苗ちゃんはしっかり捕まっていたが、体温など伝わって来ない。むしろ自分の冷や汗で冷たかった。赤信号になって止まるとホッとすると思ったが、そんな事もない。後ろから隙間にどんどん入って来るのだ。まさに、全く隙間がなかったのだ。

 しかも、三人乗り、子供入れて四人乗りとかもいるのだ。日本のとは全く違う世界だったのだ。

 例えば大阪梅田の駅前や、ミナミなんかもビビるが、そんな比ではない。荒れた海上に匹敵する。

 昔、花見の時期に女の子を船に乗っけて土佐堀とかを船で走って、クルージングの花見を計画した事があるのだが、下見に、新西宮ヨットハーバーから土佐堀まで、小型の屋根なしボードで、ひとりで行った事があったのだが、帰りに天候が変わって雨が降り出し、ハンドル付きの小型ボードはハンドル側に傾き、揺れとシケで怖くなって、涙を流しながら帰って来た事があったが、そのレベルが今、地べたの道路で展開されていたのだ。

 (早苗ちゃん、大丈夫かなぁ〜)と思いながらも、正直自分自身の事が心配だったのだ。とりあえず心を落ち着かせる為に、デカい流れに慣れるまで走った。

 三十分くらいして、別れ道で、ひとの少ない方に入って行けた。よく考えてたら、田舎の方に行けば良いのだ。街の周りをぐるぐる回っても意味が無かったのだ。普段なら分かりきっているのだが、冷静さも欠いていたし、地図も大体の把握をしておけば良かったのだが、阿保すぎた。ビビっているのを早苗ちゃんに気づかれない事で必死だったのだ。

 やっと、街から外れて、落ち着いた場所に出た。ちょうど、日本の駄菓子屋やみたいな店の前に着いてバイクを降りた。

「怖かった〜 あなた凄いわね、こんな所を運転出来るのね」と言われたが、脇と背中がびっしょりだった。よく考えたら、バイクのマグネットのナビをすぐにつけておくべきだった。ポケットに入れておいた超強力両面テープでマグネットをやっとつけて、スマホを貼り付けて確認して、駄菓子屋でジュースを2本買って、早苗ちゃんに一本渡した。

「ふ〜 やっぱりちゃんと地図を見とくべきだったね」と言うと

「タイ語ばっかりでわかんないわよ、でもスリル満点ねぇ〜 バイク四人乗りとか初めてみた。怖くないのかしら?!」と早苗ちゃんは、以外と喜んでくれていた。

 (だったらいいか!)と少しいっちゃんも安心した。

 よくわからないジュースを飲みながら、目の前でタイの子ども達が遊んでいた。

 早苗ちゃんは話かけて、話が通じたのか、会話も慣れて楽しそうだった。

 その横で、ペットボトルでガソリン売ってるサングラスのいかついおっさんを見て、珍しがっておっさんとも会話していた。

「ねぇ〜路上でガソリンなんて売ってんの?!」と聞いて来たので、

「普通だよ」と言うと、彼女は更にワクワク感が増したみたいだった。タイの人間は一見そっけないが、元来優しいので、すぐに慣れる事が出来るのだ。

 少し回って、仏像や、射撃場にも行こうか?!と言うと、

「良いわね〜」とええ感じになりそうだった。


 

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