第二十二話 マカティ
第二十二話 マカティ
駅前でバスを降りて、『飛魚』に行った。早苗ちゃんと丸男や、かずみちゃんもいた。
「あれ、かずみちゃんもおるやん」と言うと、
「来たわよ、早苗とこっそり旅行に行くらしいやん」笑笑
「そんな情報もう漏れてんのや」と言うと、丸男が、「ほんまに色男やなぁ〜」と常連客達も笑っていた。
早苗の隣に座って、
「とりあえず、ハイボール」と言うと、
「あいよ」と、お店のお姉さんが言って、グラスいっぱいに入れてくれた。
大将が
「なんやいっちゃん、海外行くんか?!」と聞くので、
「フィリピンかなぁ〜」と言うと早苗ちゃんが
「あたしのお父さんに会いに行くのよ」と言うと、丸男が
「え〜っ、結婚すんのか?!早すぎるやろ〜」と言うと、
「フィリピン怖いから、一緒に行って貰うだけよ、居場所もはっきりわからないから」
「へぇ〜」と丸男は、あまり聞かない方がいいのかと悟ったみたいだが、
「自由人だから、しょうがないのよ」と早苗ちゃんは言うと、大将が
「フィリピンも広いし、物騒やからなぁ〜」言った。 いっちゃんが、
「何処にいるか予想出来てんの?!」言うと早苗ちゃんは、
「マカティに居たのはわかっているけど、なかなか連絡くれないの」と言った。
「マカティって、地元のセレブが住む街だろ、お父さん金持ちなんや」と大将が言うと、
「へぇ〜 知らんかった。そんなにお父さん、お金持っていたかなぁ〜」と早苗ちゃんは言った。
「いっちゃんはフィリピン行った事あるんだろ?!と大将が言うと
「マニラとか、バコロド、あと、ボラカイ島かな」といっちゃんが言うと、かずみちゃんが、
「ボラカイ島もお金持ちのリゾート地やん、いっちゃんもお金持ちなの?!」
「そんな訳ないやん、昔は安く行けたんだよ」と言うと、丸男が、
「全盛期のいっちゃんは、凄かったんだよ」と笑いながら言った。
昔は確かにいっちゃんはお金に余裕があったが、最近は、丸男にいつも奢って貰ったりで、落ちぶれている。
「しかし、はっきり居場所がわからないと、広すぎるし、島から島の移動は大変やで」と言うと、丸男が、
「彼氏を連れて行くって、メール送ったらええやん、それなら一発で会ってくれる」
まあ、確かにそうだった。
娘が彼氏を連れて行くのに会わない父親はいないだろう。
「しかし、おっさんが一緒に行ったらお父さんがっかりしないか?!」と、いっちゃんが言うと、
「自信ないの?!」と早苗ちゃんは言った。 大将が、
「なんや、ラブラブやん」と言うと、
「年齢関係ないやん、いっちゃんは、十歳以上は若く見えるし」と丸男も言うと、
「それでも、おっさんやん」といっちゃんは言ったが、何故か大爆笑になってしまった。
いっちゃんは、そもそも童顔だったし、キャラからして、全く年寄りには見えなかったので、得なタイプではあった。
かずみちゃんが、
「早苗はいっちゃんの事好きなんでしょ?!、それなら何も問題ないわ、結婚なんか先の話しで、今、好きな人を紹介すれば良いだけの話」と言った。
「うん」と早苗ちゃんは言った。
(えっ、早苗ちゃん、俺の事本気で好きなんやー)と内心いっちゃんは嬉しかったが、大昔、二十歳下だった前の嫁と付き合ってる時に、前出の、仲良しだった立ち飲み屋の大将に、
「いつか、彼女が大人になって、来るべき時が来たら、逃してやりな!」と言われた事を想いだした。
無理くり結婚して、嫁は、三年で出て行ったのだ。
続く〜




