第十七話 怪談
第十七話 怪談
妄想世界のついでだが、その晩、いっちゃんは、夜中の二時くらいに、首を絞められてしまった。
無呼吸持っているし、夢と綺麗にシンクロしているので、思い込みかも知れないが、首に手の感触が残っている。そんな大きな手ではなかった。
生霊か?!そんな生霊が出る程怨みを買う程の事をした覚えは無いが、人間わからない。最近糞つまらない喧嘩をしたばかりだし、知らぬ間に怨みを買う事もあるのだ。
実は、母親の生霊では無いだろうか?!鬱陶しいと想っていると、相手もこっちを鬱陶しいと思うものである。
今なら虐待ものだが、母親は毒親だった。
一から十まで干渉するのだ。
高校生までなら何とか我慢するが、もう五十もとっくに過ぎたええ大人である。中学生や、高校生では無いのだ。
母親のいつも言う事はヘンテコリンだ。
親父の仏壇触っていて、
「百円ライターが切れそうだから買ってくる」言っただけで、
「ぜんばつかうなちぃ〜(銭を使うな)」とキレるのである。たった百円ライターである。
わざわざ実家に初盆で帰って来ているのに、
「親父の墓に行くな」とか、急に理解不能な事を言うのである。
普段から自分を守る為なら平気で嘘をつくし、いっちゃんをいつも支配していないと気がすまない困った親なのだ。
弟の家族が来て、掃除をしている時に、弟の嫁が気を使って、
「これは、何処に置けばよいですか」と言った時に、昭和初期にしては、デカイ女ジャイアンが、杖で指図する姿を見て、流石に、
「手伝って貰ってやって貰ってんのに、そんな失礼な事をすんなよ」と怒ったが、聞こえないふりだ。
中学生の頃に、革ジャンもどきの黒いビニールジャンバーが流行っていて、ものすごく欲しかったのだが、年に二度くらい親父のボーナスが出た時に、普段、生活が豊では無い分、この時ばかりは、服を買って貰えたのだが、散々、
「黒いジャンバーやで」と言っているのに、母親は青いパーカーを買ってきたのだ。弟には黒いジャンバーで、とても喜んでいた。背中にBIG SPORTSと書いてあって、弟は悪気はなくて、普通に嬉しいので、
「にいちゃん、にいちゃん」と良くそれを見せにきたのだ。
(なんて馬鹿な母親なんだろう)と思って、(高校出たらこの家出て行こう)と決心した。
この時は流石に、母親は親父に怒られていた。
しかし、その時の母親の顔は本当に“屑”の顔をしていたのだ。はっきり覚えている。
でも、親父は、いっちゃんに、
「近所で安売りしてたぞ〜」と何気なく言って小遣いをくれたのだ。
(こんな優しい所もある父親と、馬鹿な母親が何故に結婚したのだろうか?!)と常々よく思っていたものだった。
とにかく母親は、いっちゃんをいじめるのが大好きだったのだ。それは、母親の実家がまた狂っていたせいもある。
ジジイは、兄妹で競争させたり、派閥を作って兄妹同士仲違いさせたりして喜んでいたのだ。しかもそれは、家族間だけにしか出来なかったのだ。
外面がやたら良いのだ。外では誰も攻撃出来ないヘタレのくせに、家のなかでは完全支配者なのだ。
いっちゃんの母親もそうだった。
けれど、みんな騙されて、近所では、いっちゃんが母親に暴言吐いて、いじめているとか誤解しているのである。
(子供の頃から精神的に虐待され続けてるっちゅうねん)と、時々思い出しては、発狂しそうになるのだ。
それで、(母親が夜中に首を絞めに来たに違いない) 爆笑
大笑いして、しまったのだった。
母親は、今も、妹の家に住んでいたかと思えば、実家にひとりで帰って住んだり、「弟の家に行く」と言っては、また妹の家に行ったり。困ったもんだ。
最近はこんな話も笑えるようになったが、いっちゃんは、本当はまだ暴露したりないのだ。
他の家族は、どうなのだろうか?!と、歳とった親子で野球観戦とか行ってる家族とか少し羨ましかった。
何故にうちは、家族で仲良く出来なかったのだろうか?!
それは全て全部母親が悪いのだ。
事実だからしょうがない。
「あ〜まー」
しかし、(解決に向かって行こうか)と、いっちゃんは、幽霊に首を絞められながら思ったのだった。笑笑
続く〜




