第十五話 マルカリ
第十五話 マルカリ
駅の南出口から、『飛魚』に向かう。
飛魚に行くと、丸男と早苗ちゃんが呑んでいた。そして、同時にかずみちゃんも入って来た。丸男が、かずみちゃんに
「こいつら付き合ってるらしいで」と言うと、
「知ってるわ、玉焼き食べさせられてヤラレたんでしょ」笑笑 とか言ってた。丸男が、
「大将、卵焼き〜」
「あいよ〜」
「ここはそういうシステムなの?!こはいわ〜」と、かずみちゃんは言って笑っていた。
「まあ、いいぢゃん、大人同士のする事なんやから、俺は早苗ちゃんと一緒にいると楽しいよ」と言うと、
「そうね、私も楽しいわ、いっちゃん、ど変態だから」笑笑 と早苗ちゃんが言うと、大将も笑っていた。
「今度皆んなで旅行に行こうや?!」と丸男が言い出した。
「良いねぇ〜 でも何処に行く」
「外国に行きたいわ」と早苗ちゃんが言った。
「お父さんに会いに?!」とすかさずいっちゃんが言うと、
「それほどこだわっていないわよ、父を訪ねて三千里ぢゃあるまいし、ただ、海外は行ってみたいわね。ツアーでしか行った事ないし、女の子だけで行くの怖いわよ」
「そうね」とかずみちゃん。
「海外の怖さ知ってんねんなぁ〜 知らん人結構多いけどなぁ〜」と、丸男が言うと、
「最近YouTubeとかで良く言ってるし」と早苗ちゃんが言っていた。
そんな会話をしていると、
「大将、例のやつ貰いに来たよ」
「おう」と大将が居酒屋のマスターに巨大な“寿司桶”を渡していた。
「いっちゃん、やっぱもう、十二月一杯で店を閉める事にしたわ」
「えっ」
皆んな一瞬呆気に取られていたが、
今回の、“しんちゃんの嫁事件”で、
更に色々と嫌気がさしたらしい。
「そうや、皆んな少しずつ店の物を持って行って良いよ、どうせ店閉めるんやから」と言うと、店の常連客は、
「湯呑みが欲しい」と言っていた。家族でお寿司屋さんごっこ気分を味合うらしい。
「残りは、いっちゃん、マルカリで売ってくんね?!」と大将が言った。
丸男は、iPad Proをバージョンアップするたびに、買い換えるので、自分がマルカリで売っていたのだ。丁寧に丸男は使っているので、毎回高額で売れた。
「良いよ、出してみようか?!」と言う事で、早速、店に飾ってある“絵が二枚”と、職人の魂の“包丁セット三本”をマルカリに乗っけた。
「わかる人が見たら売れるよ」と大将は言う。
「でも、これ売ったら、買い戻すの大変やで」と言うと
「イイよ、もうやんないから」
「なんか寂しいなぁ〜」
「新しい人生を歩き始めはんねん」と、丸男が口出して来た。
「大将ご苦労様でした」とか、女の子達は言っている。
「自分ら来てなかったやん」と丸男が言うと、
「これから常連になったのに〜」と残念がっていた。
マルカリの閲覧数を見ると、包丁は、結構増えていた。
最初の提示額はわざと高めに設定している。売れたら直ぐに発送しなければならないからだ。今呑んでるし、ぼちぼちで良かろう。
変に、いつも二十四時間以内発送をやっているのも考えもんだが、信用は絶対大事だ。売れ行きに関わる。
でも、来ないだ嫌な取り引きがあったのだ。その商品は、iPad Proだが、到着してからの値引きを要求されたのだ。
「思ったより、側面が少し曲がっているので値引きしてもらえませんか?!」だった。
送る時に丸男と二人で確認したのでそういう事は無いはずだが。
しかし、送った写真をよく見ると、確かに、少し曲がっているように見えるのである。曲がって見えるのは、許容範囲と言う発表がアップルからされていたのだが、向こうが送って来たのは、送った写真とは、反対側の側面の写真だったのだ。
なので、最初は、「配送業者に電話してくれ」と言ったのだが、結局、誰が悪いのかわからないので、「五千円引いてくれ」と向こうは言って来たのだ。
最初、徹底的にやり合うつもりだったが、丸男が
「もう、ええやん」と言い出したので五千円引きにしたのだ。
iPad Proを最初公開した時にも、秒で交渉して来て、しつこく値下げを言って来たので辞めとけば良かったのだが、そこで五千円引いて、皿に最後の最後に五千円引かされたのだ。
こう言うタイプの人とは二度関わりたくなかった。
大体、百件のうち、一件くらいの割合でこう言う人に当たるのだ。
「まあ、ええやん、そう言う事もあるさ」と丸男は言っていたが、
「おまえのせいやろ」と言うと丸男は爆笑していた。笑笑
続く〜




