第十二話 タコ
第十二話 タコ
立ち飲みに行くと、王道を行く店だった。初めて入ったが、女将さんともすぐに仲良くなれた。
「おでん、美味しいわねぇ〜」
「うん、タコが美味しいだろ?!」
「そうね、そんなに浸かってないけど、味美味しい」
「これは上等の良いタコを使ってるなぁ〜単価たぶん高いよ」
「そうなの、美味しい」
「昔さあ、今はもう無いけど、地元の立ち飲みで、おでんのタコばっかり食べていたら怒られた事あるよ」
「えっ、そうなの」笑
「せっかくイカリで買って来たのに、毎回毎回、あんたが全部食べてしまうんやから、と、店のおばあちゃんに怒られた事あるよ」
「なんでもやり過ぎてしまうのね」笑笑
「そーなんよねぇ〜また他の立ち飲みでも、シメサバ何回もおかわりしてたら、常連客にも怒られたよ」と言うと、早苗ちゃんは爆笑していた。
「そのシメサバの立ち飲みのマスターとは、親友みたいに仲良くさせて貰っていたのよ、おいら専用の米酢があったし、俺だけね」
「へぇ〜 仲良かったんだ」
「うん、時々の生牡蠣がある時は、酢を器にドボドボ入れて、米酢ストレートで食べていて、もちろん薬味など無しやで」と言うと、
「変にマニアックなのねぇ〜」と、早苗ちゃんもタコを三本食べている。
「あんたも一緒やん」と言うと、
「うふふ」と笑っていた。
それから早苗ちゃんは、カラシをいっぱいつけて、鯨とか食べ出した。所謂“コロ”とか言うやつだ。
「あんたも、マニアックやん」と言うと、
「あたし達似てるかもね」とか笑っていた。
それから、豆腐や、ねぎまを食べて、
「次行こか?!」と自分が言って、そのお店を出た。
それから、ショットバーみたいな所も行ったが、少し腹減って来たし、
「十三はまだいっぱいお店があるから、今日はこれくらいにして、締めの卵行く?!」
「卵?!」
「うん、寿司屋のスウィート卵焼き、女の子大好きだよ」
「へー十三?!」
「地元だよ、近いし、電車ですぐだよ」
「ちゃんと帰れるようにしてね」
「わかっているよ、ああ、丸男とかと行ってる店だよ」
「飛魚?!」
「うん」
なんぼテンション上がったとはいえ、そんなに金もないので、最後は『飛魚』で締めようとおもっていた。ちょっとずつでもお金結構掛かるのだ。
『飛魚』は安いし、気に入ってくれるだろう。
阪急電車に乗って『飛魚』に着いた。
丸男がいた。
「おい、お前らもう付き合ってんのか?!」
「ちげえよ、十三巡りしてたんだよ」
「丸男さん、気が早いわねぇ〜 ご飯行っただけよ」と早苗ちゃんも言った。
「ちぃ〜流石いっちゃん手がはえなぁ〜」
「お前には負けるよ」
「で、卵焼き頼むんだろ?!」
「そう言う事です」と言うと、皆んな爆笑していた。
「大将例の」と言うと、
「わかっているよ、いっちゃん復活だな」と言って、作業に取り掛かった。
前出の様にここの甘い卵焼きは最高だった。おろしをつける場合とつけない場合がある。出来かた次第で変えるのだ。なので文句は言わない。最高の卵焼きが出来上がる。
「とりあえず、日本酒出して、常温で」と、丸男が言った。
丸男は冷酒だったり、常温だったり、その時々で変わるのだ。
「酒は俺が払ってやるよ」
「流石丸男さん、太っ腹」と言うと丸男は喜んでいた。
続く〜




