第一話 世捨て人
第一話 世捨て人
世の中には、世捨て人は五万と、嫌、五万何処ではないだろう。
生まれたての頃は、親を頼り、兄、姉、弟、妹を頼り、友達や先生も頼って生きて来た。しかし、
長く生きると、それが幻想であった事に気づく。
死ぬ時も今もたったひとりだ。
そんな毎日を過ごす人達の話。
主人公の名前は山谷一生、いっちゃんと呼ばれていた。いっちゃんは、
中国人の女二人に山程たかられ、経営していたアパートも売り、そこそこの会社を勤めあげて貰った退職金もとっくに底をついていた。なので、つまらない毎日を過ごしていた。
死ぬほどの勇気もなく、仕方なく生きている。退職して失業保険の延長の為だけに学校に行っているが、あまりに勉強が難しくてついて行けていない。
しかし、向上心だけが、最後の望みだ。
子供の時から何故か向上心というやつがあったのだ。
なので、せめて今よりほんの少しでも上等の人間になって、人生を全うするつもりだ。
本日は思いっきりの土砂降りだった。
そんな中、キャバ嬢だけが、心の安らぎだ。ラインを毎日くれる。
彼女は流れもので、北海道からやって来たらしい。優しくて、美しい。
無理に店に来いとか言わない。
そんな事をしなくても、彼女は十分にナンバーワンだった。
さて、本日は、どう言うわけか、梅田で安酒を呑んだ帰りに、なけなしの金で、万枚出てしまった。20万弱だ。
そして、そのまま、彼女のお店に行っても良かったのだが、ラズベリーパイを買った。
スペックは最新だが、ミニPCには及ばない。なので、ミニPCも買った。
モニターは上等を持っていたので、これでやっとまともにプログラムが書ける。
と言っても、モニターを半分に割って、C言語のプログラムを写経しているだけだ。しかし、写経は少しは役にたつ。
プログラムの書き間違いくらいはわかる様になった。それも少しの向上心だ。それだけが、自分自身の誇れる武器であった。
でも、店の玄関の前に、やっぱり立っていたのだ。そして、そのままお店に入った。
「あれ?!来てくれたの?!お金無いとか言っていたのに」
「まあね、スロットで万枚でた、今日だけ贅沢するよ」と言うと、
「じゃあ、楽しんで行って」と彼女は横についてくれた」
「スロットって面白いの?!」
「どうかな?!ミリオンGODが出るまで待っていたけど、我慢出来なかったから入ったら大当たり、そんな事もあるさ」と言うと、彼女は笑っていた。
それから直ぐに指名が入り、彼女は呼ばれた。代わりの女の子も綺麗だったが、話が全く面白くなかった。昭和生まれは、会話も重要肢する。
そして、適当にあしらっていたが、また新しく女の子がやって来て、自分自身の話ばかりし出したので、とっとと帰る事にした。
それから、地元に帰って来て、寿司屋に行った。
「おう、いっちゃん、久しぶりやん」と大将に言われた。
「たまには、金使ってやるよ」と言うと、
「おう、特上一人前行くか?!」
「食わねえよ、飯は、とりあえず数の子、アテで」と言うと、横の社長が、
「作家先生、今日は機嫌がいいな、書いてんの?!」と言うので、
「もう、書いてねぇ〜よ、面白くなくなって、飽きてきたから」と言うと、
「まあ、スランプ時もあるさ」と言った。
「それより、あんた書いてんのかよ?!文学の先生」と言うと、
「忙しいんだよ」と言った。
彼は、所謂昔のインテリゲンチャだ。
寒い文学の国の大学を出ているらしい。
いつも話は面白かった。
そうこうしてるうちに、外が騒がしくなった。店の前でど付き合いの喧嘩が始まっていた。なんぼ尼崎と言っても最近では珍しい。最初は皆んな知らぬふりをしていたが、流石に大将が、外に出て
「ええ加減にせえよ」と言ったが、収まりそうになかったので、社長と一緒に自分も外に出て止めに入った。
よく見ると、二対一だ。
一方はめちゃくちゃ殴られていたので、流石に割って入った。
「もう、ええやん、辞めたれや」と三人で何とか納めると、
「ちっ、」と言って、二人は帰って言った。
「どうしたんや」と大将が言うと、
「何でもないです」と若いにーちゃんは言って、帰って言ったが、何故かお守りを落として行った。
それから、店に戻って、
「珍しいなぁ〜、お守りなんて」と三人で話して、いつもの様に馬鹿話に戻った。
続く




