第4話 ダンジョン内で初の調理をするが、強そうなモンスターに横取りされる
消えたフレアスライムの代わりに出現したものは、オレンジ色のゼリーであった。
ダンジョンの新設心なのかどうかは不明だが、木の皿に乗った状態でドロップしたようだ。
「これはスライムゼリーだね! フレアスライムは確か、オレンジ味のスライムゼリーをドロップするんだった!」
探索者wikiで見た情報をディザに披露する。
スライムのドロップアイテムとして有名なのがスライムゼリーなのだが、ディザの反応は……
「いつもスライムをそのまま食ってたが、これはこれでいいな」
ディザはモンスターが消滅する前に胃の中に入れるタイプのようなので、今までドロップアイテムの存在を知らなかったのである。
「さて、食うか!」
「ちょっと待って!」
エミはポケットから、小ビンを取り出した。
これは一般的な家庭にある砂糖が入ったビンである。
「スライムゼリーは甘くないからね。今からこれを使って調理するから待ってて!」
「甘くない? 確かに……」
ディザは手の先にスライムゼリーを付けると、それを舐め、味を確認していた。
「ちなみに、その透明な入れ物の中には何が入っているんだ?」
「これは砂糖だよ!」
「砂糖!」
「腕によりをかけて調理するからね!」
エミは持って来たエプロン姿に着替える。
「調理といったらこれだよね!」
小学校の調理実習の際に学校で購入したもので、ディザに似ている真っ黒なドラゴンが描かれている。
そして……
「完成! スライムゼリーオレンジ味! エミスペシャル!」
スライムゼリーオレンジ味エミスペシャルとは、スライムゼリーに砂糖をふりかけ、それを混ぜ合わせて甘みをプラスした料理である。
「おお! 食っていいのか!?」
「うん!」
ディザは体が大きいので、スプーンをつまむようにして持つと、ゼリーを器用にすくって口に運ぶ。
「う、うまあああああああああああああああああああい!」
ディザはかなり舌に合う味だったのか、叫んだ。
「全部食っていいか!?」
「またドロップするだろうし、いいよ!」
「ありがとな!」
と、ディザが残りを全て食べようとした時、エミの表情がシリアスに変わる。
「え!?」
「どうした?」
「た、大変だよ! このダンジョンにS級モンスターが出たって……」
モンスターの強さはランク付けされており、SからEまで存在する。
その中でもトップクラスのモンスターが、S級モンスターだ。
そんなモンスターがこのダンジョンに出現したらしい。
そのモンスターの名は「ヴァンパイアワイバーン」。
あらゆる人間やモンスターの血を吸う、恐ろしいモンスターだ。
敵味方関係なく襲うその姿は、時として悪魔と呼ばれる。
「どうしよう!?」
エミが焦っていると、事件は起こった。
「あ! おい! ふざけんな!」
ディザが怒りの声をあげていた。
「俺のゼリーを食いやがって! 許さねぇ!」
スライムゼリーはなくなっており、あれからディザが食べた様子もない。
ということは、誰かに食べられたようだ。
「あ、あのモンスターは! ディザさん! 逃げて!」
エミの叫びが聴こえていないのか、ディザは砂糖のビンを飛行しているモンスターに向けて思い切り投げつけた。
「っらぁ!!」
「ギョアッ!?」
砂糖のビンがモンスターにヒットする。
あまりの威力にビンが粉々になり、モンスターに砂糖がふりかけられる。
「許さねぇ!!」
ディザは飛行すると、思い切りモンスターを右拳でぶん殴り、壁にめり込ませた。
「オラオラオラオラオラ!!」
めり込んだモンスターに向けて、思い切り殴り続ける。
食べ物の恨みは恐ろしい。
やがてモンスターは光の粒子になって消滅した。
「ゼリー……もっと食べたかったなぁ……」
100分の1に能力が下がっているにも関わらず、ディザはモンスターを討伐してみせた。
しかし、その声はどこか寂しそうだった。
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