第3話 ユニークスキルを使い、火属性魔法をカードに封印する
「そういえば、どうしてディザさんだけ外に出られたんだろう?」
他のカードはダンジョンの外へ持ち出すことはできなかった。
なぜか、ディザのカードのみ持ち出せたのだ。
『俺が聞きたいわ! それにしても、ここがお前ら人間が住んでいる世界か! 広くていい世界だな!』
「ディザさんがいた所に比べれば、かなり広いよね!」
ディザが住んでいたダンジョンは洞窟タイプのダンジョンだ。
もっとも、ほとんどが洞窟タイプのダンジョンなのだが、そうでないダンジョンもある。
『後はこのカードから出られたら最高なんだけどな』
「そんなことしたら大騒ぎになるでしょ!」
エミはパスケースにディザのカードを入れ、そのまま外へ出かける。
本日も夏休みなので、ダンジョンへと向かうのだ。
エミは昨日行く予定だったダンジョンへと向かった。
下町の駄菓子屋にダンジョンゲートが設置されている。
『おいおい! 俺がいたダンジョンとは大違いだな!』
ディザはカードの中からダンジョン内の様子を見ているようで、驚きの声をあげた。
「人の手が加えられているからね!」
今でこそダンジョンは子供から大人まで楽しんでいるが、本来は普通に危険な空間である。
未知なことが多過ぎて、何が起こるか分からない。
そこで事故を防ぐ為にも多くのダンジョンは、人間が管理するようになった。
それによって、安全なダンジョン探索ができるという訳である。
逆に人の手で管理のされていないダンジョンは危険だ。
いきなりそういったダンジョンへ入り、10層まで足を進めたエミの行動は、多くの人間が自殺だと捉えるだろう。
「登録が完了しました! ダンジョンパスをどうぞ!」
「ありがとうございます!」
1層の受付で、エミは受付の人間から1枚のカードを受け取る。
これはエミのスキルとは無関係で、免許証のようなものだ。
「では、今回のコースは初心者コースでよろしいですね?」
「はい!」
このダンジョンの初心者コースは、1層のスライムとフレアスライムしか出ないエリアを探索するコースだ。
監視役の【ダンジョン管理運営者】達も徘徊しており、何かあってもすぐに駆け付けて助けてくれるといった感じだ。
「よしっ! 【カードバトラー】の効果をおさらいしながら戦おう!」
カードバトラーとは、エミ専用スキルだ。
今できるのはディザの召喚のみであるが、魔法などを封印すればそれを使うこともできる。
しかし、今は他に戦う手段を持たないので、ディザに戦って貰うしかない。
「ディザさん! 出番だよ!」
『ちょっと待て!』
ディザが慌てて、エミを止める。
「どうして? 出たくないの? スライムなんて楽勝でしょ?」
『いや、確かに暴れたいが、コストを忘れたのか?』
「コスト……?」
カードバトラースキルを発動するのにはBPといった、専用ポイントをコストとして支払うことになる。
ダンジョンに入った時点で8000のポイントが与えられ、カードバトラースキルを使用するたびに減る。
強いモンスターであればある程、消費が激しい……とされているような気がする。
というのも、今の所ディザしか封印していないから、誰にも詳細が不明なのだ。
そしてディザの消費コストは、なんと8000。
恐ろしい程の燃費の悪さである。
ディザを召喚してしまえば、ダンジョンに入り直さない限り、何もできなくなる。
「なんでそんなに減るの?」
『強いからじゃねーの?』
「自分で強いとか言っちゃう?」
ちょっとツッコミを入れる感じでディザに言うエミだが、これは本格的に困った状況だ。
「私武器持ってないんだけど、これでどうやって戦えばいいんだ!?」
『落ち着け! 代替え処置ががある!』
「代替え処置ってどういう意味?」
『他の方法ってことだ! 俺のテキストをよく見るんだな!』
「テキストって何?」
『カードの下の方に書いてあるだろ! 俺の説明とかが!』
「そうだったんだ!」
以下がディザのテキストである。
~~~~~
このカードはコストを半分にして召喚することもできる。
その時、このモンスターの能力は100分の1になる。
~~~~~
「つまり、コスト4000で召喚できるってことだね!」
『そういうことだ! さぁ呼べ!』
エミはディザのカードを右手で持ち、それをかざしながら叫ぶ。
「ディザさん召喚!」
すると、ディザが召喚される。
能力が下がっているというが、外見的には代わりなしだ。
「やっぱり外の世界は最高だぜ!」
「本当に能力下がってるの?」
「ああ! だが、問題はねぇ!」
その時、オレンジ色の見た目をしたフレアスライムが彼女達に迫っていた。
「スラーッ!」
エミは火球を飛ばして来たフレアスライムの方へと、白いカードを向ける。
すると火球はカードへと吸い込まれ、白かったカードにイラストやテキストなどが追加された。
「魔法の封印完了! コスト10を支払って魔法【ファイアボール】を発動!」
カードをかざすと、火球がフレアスライムへ向かって飛んで行き、その衝撃で敵はそのまま吹き飛ぶ。
が、倒しきれず起き上がって再び彼女達を襲う。
「よし! もう一度ファイアボールだ!」
一度封印した魔法は、コストを支払えば何度でも使用が可能だ。
「折角だ! 暴れさせろ!」
再びファイアボールを使おうとしたエミだったが、ディザが我慢できなくなったのか、フレアスライムをぶん殴った。
「っらぁ!!」
「スラーッ!?」
その後吹き飛んだフレアスライムは死んでしまったのか、光の粒子になって消滅した。
「消えた!?」
「え?」
驚くディザに驚くエミ。
ダンジョンのモンスターと言えば、死んだら自然消滅するというのが常識なのだが……。
「知らなかったの?」
「大体いつも食ってたからな」
いつもモンスターが消える前に胃に入れていたので、気が付かなかったらしい。
ちなみにダンジョン内では何も食べずとも人間は生きていられる。
モンスターはどうかしらないが。
「おい! なんか落ちてるぞ!」
「ドロップアイテムだね!」
モンスターは倒れた時、ドロップアイテムを落とす場合がある。
その辺りは大体ゲームと同じである。
「そうなのか!? で、これは一体なんだ?」
「これはね!」
果たして、初のドロップアイテムは!?
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